第212話 島ノ捜索
ルティーナ達は海上で魔物の襲撃を受ける。
最初は劣勢であったが、馬琴の機雷作戦で水中から炙り出すことに成功する。
――そして反撃が始まる。
「(ミヤ達の方は盛り上がってるね)」
(あの魔法があれば、苦戦しないだろう)
馬琴の機転で一度は姿を見せたデルーエホであったが、再び潜航されてしまい姿を見失う。
ルティーナはやむなくシャルレシカを呼び、位置と深度を確認することにした。
「さっきの沈んだ場所のぉ……二十メートルぐらいの深さのところで止まってますよぉ?」
(体当たりでは壊せないことは理解しているはず)
「(でもさ、毒を海面にバラまいちゃったから……しばらくは海面にも出てこないんじゃない?)」
(時間を稼げればそれでいいんだ)
「(?)」
するとサーミャとエリアルが駆けつける。
「こっちは終わったぜ!」
(予定どおり楽勝か……なら、次の手だ)
馬琴はルティーナに伝える。
サーミャに『スプラッシュ・バイパー――水蛇奔流――』を操らせ、シャルレシカの指定した位置にいるデルーエホを海上へ吊り上げるよう指示した。
「あっちですぅ」
「任せな! いくぜぇ――」
そしてルティーナは、手裏剣に四メートルほどの【爆】を描き、『デストラクション・シューター』を構えて待機する。
ザッパーンッ――!
サーミャは水蛇にデルーエホを捕縛させ、そのまま空高く舞い上げる。
(これなら潮吹きで妨害できない! ガラ空きのどてっぱらにぶち込んでやれルナっ)
「くらぇ! 『デストラクション・シューター』――ッ」
落下を始めたデルーエホの腹部深くに手裏剣は突き刺さる。
貫通する前に馬琴は【爆】を起動する。
デルーエホは内部から爆散し、撃破に成功した。
「ごめんねミヤ。結局、頼っちゃった」
「しかたねぇさ……これぐらいの魔力消費なんて気にすんな」
サーミャは平然とした顔を装いながら、航海を再開することにした。
しかし――。
「あれ? 舵が動かねぇぞ……」
「クジラ野郎の体当たりで、どこか壊れちまったのか?」
(あ……)
馬琴は、動かない理由をすぐに理解した。
船を守るために【硬】で全体を硬化させていたのだ。
「――おっ、動いた……ビビらせやがって」
(船を防御したまま移動は無理か……しかたないな)
ルティーナ達はとりあえず初戦を乗り越え、航海を再開するのであった。
「そろそろ、リーナが居る場所をどうやって特定するのか教えろよ」
「そうだったね」
「実は、誘拐される前からリーナに頼まれてたのよ」
「あの時――そういえばリーナ、鞄の中身を気にしてなかったか?」
「うん。私のクナイに毎日欠かさず魔力を込めて、リーナが持ち歩きたいって」
ロザリナは、ルティーナから【透】を描きこみ透明にしたクナイを受け取っていた。
「だけどよぉ、身に着けてても……」
「リーナの魔力は結界で遮断されてるから、シャルでも――」
ルティーナは首を振る。
ロザリナが万が一誘拐された場合は、敵のアジトに着いたらそのクナイを捨てるように指示していた。
「リーナがクナイを捨てた場所が、『マジックシール・ストーン』の結界内なら元も子もないんだけどね」
(だから、保証はないとリーナにも伝えてはおいたが……)
「(きっと、信じて待ってるよ)」
(あぁ早く迎えに行こう!)
これは、ロザリナの魔力がこもったクナイをシャルレシカに索敵させ、囚われている場所をできるだけ確実に探すための作戦であった。
「なら出来るだけ島に近づいて、シャルに楽させてやらなきゃな」
サーミャは舵を取り、八丈島へ向け船を走らせる。
しかし、島にたどり着くまでに何度かサメの魔物――デクーシャ――の群れによる船への特攻攻撃を受ける。
だが、四人は力を合わせてその場をしのぎ切り突き進む。
次々と襲い掛かる海の洗礼。
目的地に近づくにつれ、魔物の出現は増え、戦いも次第に厳しくなっていく。
「月の位置からして、もう、五、六時間経ったのかしら?」
サーミャは少し顔をしかめる。
「(まじいな、魔力を半分ぐらい使っちまったぜ)」
ルティーナはサーミャの異変に気付く。
「ミヤ、魔力は大丈夫?」
「あ…あぁ、まだまだ全然残ってるぜ! 気にすんな」
サーミャは、つい強がりを言ってしまう。
(よかった……)
(こっちは手裏剣やクナイの残りも心許ない……このままじゃ消耗戦だな)
「僕が出来るだけ前に出るから、皆は控え目にしてくれ」
「しっかし、どうしてあたいらの船に群がってくるんだ?」
馬琴は考えた。
そもそも魔物の洗脳は、魔力次第で大量に洗脳できるが、全てを意のままに操れるわけではない。
数匹だけであれば自由に操ったり、意識を共有したりできるが、複数となれば話は別だ。
共通の指示に従って動いているだけであった。
「この海域の魔物はナガアキに洗脳されているんじゃないかって、マコトが言ってる」
「アレクサの乗っていた船だけは攻撃しないように指示してるんだろうって」
「なるほどな、だからアレクサは安全に大陸と行き来できたってことか」
ルティーナはシャルレシカに定期的に魔物の索敵をさせ、安全なルートを見出そうとする。
しかし、魔物は自分達が真っすぐ進もうとしている方向に集中しているという。
エリアルは、顔をしかめながらルティーナの左肩を叩く。
「どうすんだい? 回避して大回りした方が……」
「マコトが、集中してるってことは、守ってるってことだって」
「つまり? この先が最短のナガアキへの道ってことかい?」
ルティーナは小さくうなづく。
だが、魔物の相手をするということは戦力を削るに等しい。
サーミャは、にやっと不穏な笑みを浮かべながらルティーナの右肩を叩く。
「遠回りしても、結果的にはあいつらに追われるだろ?」
「なら、ぶっちぎろうぜ!」
(そろそろ、月が沈みかけてる……もうすぐ八時間経つのか……)
馬琴の指示を受け、ルティーナはサーミャにシャルレシカへ『エクソシズム・ケーン』を渡すよう伝える。
「もしかしてぇ、リーナを索敵するんですかぁ?」
「うん、一度やってみて」
シャルレシカは、十キロの広域索敵で、ロザリナの魔力をこめたクナイを探そうとする。
――だが、現在の位置では見つけることができなかった。
(方向は間違っていないと思うが……地殻変動で場所が遠くなったのか?)
その代わりに、索敵で魔物の詳細位置を把握し、遭遇を最小限に抑えたルートで船を進める。
「ルナぁ、周りからぁ魔物が集まりはじめてますぅ」
サーミャはシャルレシカから杖を奪い取る。
「あたいが一発でかいのを目の前にぶち込んで、道を開くぜっ!」
ルティーナはサーミャの腕をつかみ制止する。
「だめだよミヤ!」
「そろそろ島が近いかもしれないんだから、ナガアキに接近を悟られてしまうわ」
サーミャは魔力を温存していたため、ストレスが溜まっていた。
だが、ルティーナに止められ少し冷静になる。
「とにかく、船の速度を上げて振り切りましょ!」
「ここまで来たら、方向は気にしなくてもいいはずよ……」
(せめて五キロまで近づけば、島は目視できる可能性がある)
それを二時間ほど繰り返し、魔物に遭遇しながらも着実に八丈島に近づいていた。
その頃には水平線が少し明るさを帯び始めていた。
すると定期的に索敵していたシャルレシカが笑顔でルティーナに抱き着く。
「見つけましたよぉ~リーナの魔力ですよぉ!」
「この先ぃ、南西方向に九キロですぅ」
そして、馬琴は行動に移す。
「ミヤ、ハーレイ様の元へ転移してくれる?」
「んっ、なんで親父なんだよ?」
ルティーナはサーミャの違和感に気付いていた。
「ハーレイ様から魔力をもらって来て欲しいのよ」
「私達に気を使って、強がり言ってたんじゃない? 船の操作……意外と魔力使ってたでしょ?」
図星を突かれたサーミャは頭を掻く。
「ばればれだったか……!」
「なるほどな、あの役立たずは魔力が有り余ってるもんな」
「「「(酷い、言われ方……)」」」
ルティーナは、ノモナーガに戻るついでに、自分の武器になりそうな物を調達してほしいとサーミャに伝える。
「わかった……木の板とかそんなのでいいのか?」
「そういうので十分よ」
「最初はそれで戦ってたしね」
そしてサーミャはハーレイの元へ転移するのであった。




