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見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました ~異世界召喚失敗!? 少女の中に宿った勇者の冒険譚~  作者: うにかいな
第玖章 ~闇ノ孤島~

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第210話 海ノ魔物

ルティーナ達はついに、モルデリド港から長明(ながあき)が構える八丈島へ向けて出発した。それから二時間程、月の光に照らされながら船は順調に進んでいた。


「ミヤ、初めてにしては真っすぐ動いてるじゃない」


「あぁ……微量の風魔法で進路を維持してるんだ」

「これなら速度を上げるのも簡単だぜ」


サーミャは調子に乗り、魔力を上げる。


「みんなが船酔いしちゃうから、ほどほどの速度にしてよね」

「進行方向はちゃんと、星の位置を確認しながら進まないといけないんだから」


「わりぃわりぃ」


「方向さえ間違わなければ、リーナがきっと残してくれてる目印をシャルが探せるわ」


するとサーミャはルティーナに確認する。


「今さらだけどよ、そもそも目印って一体なんなん――」


その時、エリアルが前方に何か浮かんでいるのを見つけた。


「ねぇ皆、あれはなんだろう? 船かな?」


「シャル、索敵できる?」


「はぁーい」


シャルレシカは接近してくるものを確認する。

すると突然、複雑な顔つきに変わる。


「どうしたの?」


「あ、あれはアレクサですぅ……でもぉ」


「「「!」」」


その船は、アレクサが乗っていたモルデリドの船であった。


「くそ! あたいらの強襲がバレて迎撃に来やがったか?」


しかし、シャルレシカは必死に首を振る。


「し、死んでますぅ……アレクサは死んでいるんですぅ」

「他には誰も乗ってないんですぅ」


「どういうことだ!?」



――話は先日の昼に遡る。

ルティーナ達がモルデリド王を救出するために作戦を練っていた頃、ロザリナはアレクサに連れられ八丈島に到着していた。


ロザリナは『マジックシール・ストーン――魔法遮断――』の首飾りをつけられ、鎖で体を拘束されていた。

さらに目隠しと口封じまでされたうえ、積荷の箱に押し込められていた。


「おら、着いたぞ、さっさと立ち上がりやがれ」


「……」


アレクサは積荷の中からロザリナを解放し、彼女を連れて洞窟の中へ入っていく。

そして、そこに準備されていた椅子に座らせ、鎖を巻き直した。


「おいナガアキっ、ロザリナを指示どおりにそこに縛っておいたぞ! 約束は守れよ!」


「ご苦労アレクサ。君の協力に感謝するよ」

「君の娘さんと奥さんに向けた刺客は撤退させた」

「あと、私の洗脳も解除してやる」


そして長明(ながあき)はアレクサの頭に触れ、彼にかけていた強制洗脳を解除した。


「……(くそったれが! 人質さえなけりゃ……もう金輪際、かかわらねぇ!)」

「そうかい、じゃぁな」


アレクサはその場から去り、乗ってきた船でそのままモルデリド港に帰っていった。


「くくく、単細胞め……洗脳魔法は便利なものだ」


長明(ながあき)は、アレクサの意識に介入し家族を人質に取ったと嘘をついて脅していた。

そして目を閉じ、洗脳によって支配下に置いた魔物へ指示を出す。


「アレクサを殺せ……そして、その海域に近づくものは始末しろ」


数時間後、アレクサを乗せた船は海の魔物に襲撃された。

その襲撃によって舵を失った船は、一日もの間、大海をさまようことになる。


「これで普通に発見されても、アレクサが勝手に海に出て魔物に襲われ死んだことになる……」

「万が一、ロザリナを救出するためにルナリカ達が転移を使えば――」



「さて……そろそろモルデリドの戦況を確認するか――」




そんな出来事も知らずに、ルティーナは飛翔し、シャルレシカとともにアレクサの船へ乗り込み調査していた。


「本当だ……酷い……何かに縛り殺されたみたいじゃない」

「何の魔物にやられたのかしら?」


「そうですねぇ……死亡してからぁ時間が経ちすぎててぇ記憶は読めないですぅ」


(用が済んだから、始末したんだな)

(しかし、何故、ガレルのように爆散させずに、アレクサは……魔物に……いや――)


馬琴(まこと)は違和感に気付く。


(アレクサの遺体を残すことに意味があるんだ!)


「(どういうこと?)」


(やはりナガアキは、俺達がリーナを追って、アレクサを目印に転移してくることを想定していたんだ)


「(マコトの想像どおり罠を張ってたってわけね)」

「(転移したら海のど真ん中で沈みかけた船なんて……)」


(……ただ今回は偶然に遭遇してしまっただけだろうが)


ルティーナとシャルレシカが自分達の船へ戻ろうとした、その時――。


「ルナぁ! 魔物がすぐそこまで迫ってきてますぅ!」


(魔力温存が仇に……うかつだった、定期的に索敵させるべきだった)


シャルレシカは、無意識に索敵できる半径二十メートルの範囲内に魔物が入るまで、気づけなかったのだ。


(この船を襲った魔物が近くにいたのか?)


「この船は放置して、急いで私たちの船に戻るわよ!」



一方、船で待機していたサーミャとエリアルは――。


「結構、時間が経っているけど、何かあったのか?」


「どうでしょう……しかし、静かな海ですね――モルデリド王は海の魔物に注意しろって言われてましたが……」


――ドゴーンっ!


船底から凄まじい衝撃音が響き渡る。

そして船体も激しく揺れ、二人はその場に膝をついた。


「な、なんだっ!」

「船の底? 何か体当たりしやがったのか?」


「水中では戦えませんよ? 僕達――」


「あぁ、この辺を凍らせるっつっても、海なんて簡単に凍らねぇだろ?」


ドゴーンっ!


「くそっ! せっかちな野郎だな――」


二人は、水中から繰り返される謎の攻撃に、なすすべもなかった。


ドゴーンっ!


「み、ミャ……このままでは船が……」


バシャーンッ――!

バシャーンッ――!


そんな中、船の周囲の水中で爆発が起こり、水しぶきが上がる。


「なっ! クソっ何が起こってやがる!」



「ミヤーッ! エルーッ!」


「「!」」


そこへルティーナが帰還する。

ルティーナは海面へ向けて、『デストラクション・シューター』で【爆(ばく)】を描いた手裏剣を撃ち込んだ。


「(どこにいるかわからないのに……これでいいの?)」


(あぁ、これなら水中の深くで爆破が起こせる! それでいい)


腹の底に響く低音が、水を震わせながらゆっくり近づいてくる。


――ゴゴゴゴッ!


それは獣の咆哮というより、海そのものが唸っているようだった。

そしてついに、その姿を現した。


「「――!」」

「なんだ、このでけぇ魚は!」




(あれは……クジラ?)


「(くじら? マコトの世界にいるってやつ?)」


(だが、アレクサは……こいつに殺されたわけじゃなさそうだな)


「(他にもいるってこと?)」


(気を抜くなよ!)



ルティーナは船に着陸し、サーミャ達に指示を出す。


「想定外な敵だぞ……あたいも出るか? あいつの『時』を止めるぜ」


「ううん大丈夫よ」

「最初の予定通り、ミヤはシャルと一緒に魔力温存して!」


ルティーナは二人を制止しエリアルとともに前に出る。


「で、ルナ、どうするんだい?」

「対策を知っているのかい? マコトさんが?」


「うん」


(とにかく、再び潜水させるな! 地の利で優位をとられてしまう……)


「エル、あいつの気を引いて! 氷の剣から氷の刃を飛ばして、動きを制限するのよ!」


「任された!」


その隙に、ルティーナは『デストラクション・シューター』の【電(いなずま)】を描き直し、威嚇の時の四倍の威力へ引き上げる。


(ルナ、動きが鈍ったら、あいつのどてっ腹にぶち込んでやれ!)


「(うん!)」


そしてエリアルの氷攻撃で動きが鈍った瞬間――。


「くらえっ!」


しかし、クジラの魔物――デルーエホ――は噴気孔を船に向け、強烈な潮を吹き放つ。


(くそっ! 起動ーっ!)


予想外の反撃によって手裏剣の軌道を逸らされ、狙いとは関係のない場所で爆発を起こしてしまう。


そして警戒したデルーエホは潜水してしまう。


「ルナすまない、逃した――」


「シャルッ、ごめん索敵して、奴の位置を教えて!」


「はぁーい」


シャルレシカはすぐに索敵を開始し、デルーエホの位置を捉えようとした。

しかし、シャルレシカの顔色が変わる。


「――どうしたの?」


「あわわわぁ、水中にぉ他に一匹いますぅ」


「「「!」」」


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