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見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました ~異世界召喚失敗!? 少女の中に宿った勇者の冒険譚~  作者: うにかいな
第弐章 ~魔法使イ~

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第21話 呪縛解ク

サーミャ=キャスティル:攻撃5属性が使える 元 金の魔法使い

挿絵(By みてみん)

サーミャ=キャスティル:攻撃5属性が使える 元 金の魔法使い

<i1151119/46764>




『碧き閃光』は、ミヤシャン共和国の峠に潜伏する盗賊団の討伐依頼を受けていた。


その話は、アンハルトからある程度聞かされていた内容でもある。

だが――本当に何が起こったのか。


それを知るのは、当事者であるサーミャだけだった。


薄暗い宿部屋の中。

サーミャは俯いたまま、苦しそうに呟く。



「ヴァイスが捕まったのも……」

「シェシカが危険になることも……」


「全部、防げたんだ……」


重い沈黙が落ちる。

ルティーナ達は口を挟まず、静かに彼女の言葉を待った。


話は――。

アンハルト達の元へ、脅迫状が届いた時まで遡る。


当時、サーミャはその場に居なかった。

任務失敗の責任。

ヴァイスが罠に嵌められた事実。

その精神的な衝撃で、彼女は部屋に籠もっていたのだ。


だが――。

偶然、聞いてしまった。


『(あたいのせいで――)』


『(この杖だけは……私の手で取り戻す)』


誰にも告げず。

サーミャは、一人で盗賊団のアジトへ向かった。

シェシカの法衣を身に纏い。

回復師を装って。



「でも……失敗した」


サーミャの声が震える。


「盗賊達は、最初こそ油断してた」

「だけど、あたいが魔法を使おうとした瞬間――」

「発動しなかった」


ルティーナが目を細める。


「……魔法封じ?」


「あぁ」


サーミャは小さく頷いた。


「あいつらのアジトは、方法はわからねぇが……魔法そのものが封じられてた」



そして、そのまま拘束された。


『こいつ、回復師じゃねぇぞ!』


『おやおや、ご本人が来るとはなぁ』


盗賊達が下卑た笑い声を上げる中――。

頭領だけは、愉快そうに目を細めていた。


『残念だったな』


そして――。

奥から連れて来られたヴァイス。


目隠しをされ。

酷く殴られ。

満身創痍だった。


その首には――宝石付きの首輪。


「ヴァイス……っ!」


「さ、サーミャ……なのか……?」


震える声。

それでも、彼は彼女を気遣うように笑おうとしていた。


だが。

盗賊達は、その滑稽な姿をあざ笑う。


『杖をそこに置け』

『こいつと交換だ』


サーミャは従った。

ヴァイスを助けるために。

ただ、それだけのために。


そして――。

二人は必死に、その場から逃げ出した。


サーミャの声が掠れる。


「助かったって……一瞬だけ、そう思ってしまったんだ」


だからこそ――。

絶望は、あまりにも深かった。


「今なら、魔法が使えるって……」

「盗賊達を倒せるって……」


彼女は振り返り、詠唱を始めた。


『アース・シェイク――地震――』


その瞬間だった。


「えっ……?」


ヴァイスの首が――飛んだ。

鮮血が宙を舞う。


「……あ」


理解が追いつかない。

詠唱は途切れ――魔法は破綻する。


全てを理解した瞬間――。

サーミャは、その場へ崩れ落ちた。


盗賊達の哄笑が、近づく。


『ぶははははっ!』

『やっぱり魔女だったなぁ!』

『あの首輪は呪いの首輪だ!』

『お前が魔法を使ったら発動する』

『条件を満たしたら、首が飛ぶ!』


そして――。


愛する者を失い、絶望したサーミャへ。

今度は、その首輪が嵌められた。


『簡単だろ?』

『恋人に会いたけりゃ、詠唱しな』





(胸糞悪すぎるだろ……)


馬琴(まこと)が吐き捨てる。


ルティーナも、唇を噛み締めていた。


サーミャは、力なく天井を見上げる。


「何度も死のうと思った」

「だけど……悔しくて……復讐したくて」

「でも、魔法は使えない……」


彼女は、自嘲するように笑った。


「この首輪だけは、どうにもならないんだ」


その姿は、あまりにも痛々しかった。

だが――。


(……なるほど)


馬琴(まこと)は、首輪の謎を確信する。


(条件だ)

(発動条件さえ満たさなければ、首輪は反応しない)


――まだ、間に合う。



ルティーナが前へ出た。


「外せばいいんでしょ?」


「はぁ?」


サーミャの感情が爆発する。


「出来ねぇから……っ!」

「こうなってんだろうが!!」

「勝手に同情して、綺麗事ばっか言ってんじゃねぇぞ!」


「うるさいわね!」

「だったら、足掻きなさいよ!」

「まだ生きてるじゃない!」

「――私なら、諦めないわ!」


真っ直ぐだった。

眩しいほどに。


そして、馬琴(まこと)は考える。


以前、シャルレシカを縮小した時。

服まで一緒に縮んでいた。


つまり――装備品も効果対象になる。


なら。


(もっと小さく描ければ……)


通常サイズは、手のひらほど。


だが。

もっと小さく。

もっと精密に。


首輪だけへ作用させられれば――。


その時。


馬琴(まこと)の中で、一つの閃きが走った。


(――指だ)


ルティーナは両手の人差し指へ、小さな文字を描く。


【溶(とける)】


わずか一センチほどの極小文字。


(いける……!)


ルティーナは叫んだ。


「もう一度――人を信じなさいっ!」


サーミャが目を見開く。

ルティーナの人差し指は、首輪の左右を触れる。


(……転写、確認)

(起動っ)


じゅわり――。


首輪の一部が、音を立てて溶ける。


パキンッ――。


乾いた音と共に。

呪いの首輪が、床へ落ちた。


「……え」


サーミャは震える手で、自分の首へ触れた。


「外れ……た……?」


震える指で首元を何度も確かめる。


ぽろり、と。

サーミャの瞳から涙が零れ落ちた。


「あ、ありがとう……」

「本当に……ありがとう……!」


二年間。

押し殺していた感情が、一気に溢れ出す。


サーミャはルティーナへ抱きつき、子供のように泣きじゃくった。


(……やっぱ、お前)

(抱きつかれ体質なんだな?)


(今それ言う時!?)


だが。

ルティーナは、優しく笑った。


「……よかったね」


心の底から。

本当に、そう思えた。




しばらくして。

三人は、今後について話し合った。


サーミャの願いは二つ。


ヴァイスとの思い出の品――

『エクソシズム・ケーン』を取り戻すこと。


それは、彼から贈られた特別な杖。

『魔法使い』でなくても、知識があれば魔法が使える魔道具。

さらに本人が扱えば、威力は五倍に跳ね上がるという。


そして――。

盗賊団への復讐。



「それが終わるまでは……」

「アンハルト達には、まだ会えない」


サーミャは静かに言った。

ルティーナは頷いた。



彼女達の戦いは、まだ終わっていない。

奪われた物を取り戻すための戦いが、これから始まるのだから。


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