表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました ~異世界召喚失敗!? 少女の中に宿った勇者の冒険譚~  作者: うにかいな
第弐章 ~魔法使イ~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
21/169

第21話 呪縛解ク

サーミャ=キャスティル:攻撃5属性が使える 元 金の魔法使い

挿絵(By みてみん)

『碧き閃光』は、ミヤシャン共和国の峠に潜伏する盗賊団の討伐依頼を受けていた。


その話は、アンハルトからある程度聞かされていた内容でもある。

だが――本当に何が起こったのか。


それを知るのは、当事者であるサーミャだけだった。


薄暗い宿部屋の中。

サーミャは俯いたまま、苦しそうに呟く。



「ヴァイスが捕まったのも……」

「シェシカが危険になることも……」


「全部、防げたんだ……」


重い沈黙が落ちる。

ルティーナ達は口を挟まず、静かに彼女の言葉を待った。


話は――。

アンハルト達の元へ、脅迫状が届いた時まで遡る。


当時、サーミャはその場に居なかった。

任務失敗の責任。

ヴァイスが罠に嵌められた事実。

その精神的な衝撃で、彼女は部屋に籠もっていたのだ。


だが――。

偶然、聞いてしまった。


『(あたいのせいで――)』


『(この杖だけは……私の手で取り戻す)』


誰にも告げず。

サーミャは、一人で盗賊団のアジトへ向かった。

シェシカの法衣を身に纏い。

回復師を装って。



「でも……失敗した」


サーミャの声が震える。


「盗賊達は、最初こそ油断してた」

「だけど、あたいが魔法を使おうとした瞬間――」

「発動しなかった」


ルティーナが目を細める。


「……魔法封じ?」


「あぁ」


サーミャは小さく頷いた。


「あいつらのアジトは、方法はわからねぇが……魔法そのものが封じられてた」



そして、そのまま拘束された。


『こいつ、回復師じゃねぇぞ!』


『おやおや、ご本人が来るとはなぁ』


盗賊達が下卑た笑い声を上げる中――。

頭領だけは、愉快そうに目を細めていた。


『残念だったな』


そして――。

奥から連れて来られたヴァイス。


目隠しをされ。

酷く殴られ。

満身創痍だった。


その首には――宝石付きの首輪。


「ヴァイス……っ!」


「さ、サーミャ……なのか……?」


震える声。

それでも、彼は彼女を気遣うように笑おうとしていた。


だが。

盗賊達は、その滑稽な姿をあざ笑う。


『杖をそこに置け』

『こいつと交換だ』


サーミャは従った。

ヴァイスを助けるために。

ただ、それだけのために。


そして――。

二人は必死に、その場から逃げ出した。


サーミャの声が掠れる。


「助かったって……一瞬だけ、そう思ってしまったんだ」


だからこそ――。

絶望は、あまりにも深かった。


「今なら、魔法が使えるって……」

「盗賊達を倒せるって……」


彼女は振り返り、詠唱を始めた。


『アース・クエイク――地震――』


その瞬間だった。


「えっ……?」


ヴァイスの首が――飛んだ。

鮮血が宙を舞う。


「……あ」


理解が追いつかない。

詠唱は途切れ――魔法は破綻する。


全てを理解した瞬間――。

サーミャは、その場へ崩れ落ちた。


盗賊達の哄笑が、近づく。


『ぶははははっ!』

『やっぱり魔女だったなぁ!』

『あの首輪は呪いの首輪だ!』

『お前が魔法を使ったら発動する』

『条件を満たしたら、首が飛ぶ!』


そして――。


愛する者を失い、絶望したサーミャへ。

今度は、その首輪が嵌められた。


『簡単だろ?』

『恋人に会いたけりゃ、詠唱しな』





(胸糞悪すぎるだろ……)


馬琴(まこと)が吐き捨てる。


ルティーナも、唇を噛み締めていた。


サーミャは、力なく天井を見上げる。


「何度も死のうと思った」

「だけど……悔しくて……復讐したくて」

「でも、魔法は使えない……」


彼女は、自嘲するように笑った。


「この首輪だけは、どうにもならないんだ」


その姿は、あまりにも痛々しかった。

だが――。


(……なるほど)


馬琴(まこと)は、首輪の謎を確信する。


(条件だ)

(発動条件さえ満たさなければ、首輪は反応しない)


――まだ、間に合う。



ルティーナが前へ出た。


「外せばいいんでしょ?」


「はぁ?」


サーミャの感情が爆発する。


「出来ねぇから……っ!」

「こうなってんだろうが!!」

「勝手に同情して、綺麗事ばっか言ってんじゃねぇぞ!」


「うるさいわね!」

「だったら、足掻きなさいよ!」

「まだ生きてるじゃない!」

「――私なら、諦めないわ!」


真っ直ぐだった。

眩しいほどに。


そして、馬琴(まこと)は考える。


以前、シャルレシカを縮小した時。

服まで一緒に縮んでいた。


つまり――装備品も効果対象になる。


なら。


(もっと小さく描ければ……)


通常サイズは、手のひらほど。


だが。

もっと小さく。

もっと精密に。


首輪だけへ作用させられれば――。


その時。


馬琴(まこと)の中で、一つの閃きが走った。


(――指だ)


ルティーナは両手の人差し指へ、小さな文字を描く。


(とける)


わずか一センチほどの極小文字。


(いける……!)


ルティーナは叫んだ。


「もう一度――人を信じなさいっ!」


サーミャが目を見開く。

ルティーナの人差し指は、首輪の左右を触れる。


(……転写、確認)

(起動っ)


じゅわり――。


首輪の一部が、音を立てて溶ける。


パキンッ――。


乾いた音と共に。

呪いの首輪が、床へ落ちた。


「……え」


サーミャは震える手で、自分の首へ触れた。


「外れ……た……?」


震える指で首元を何度も確かめる。


ぽろり、と。

サーミャの瞳から涙が零れ落ちた。


「あ、ありがとう……」

「本当に……ありがとう……!」


二年間。

押し殺していた感情が、一気に溢れ出す。


サーミャはルティーナへ抱きつき、子供のように泣きじゃくった。


(……やっぱ、お前)

(抱きつかれ体質なんだな?)


(今それ言う時!?)


だが。

ルティーナは、優しく笑った。


「……よかったね」


心の底から。

本当に、そう思えた。




しばらくして。

三人は、今後について話し合った。


サーミャの願いは二つ。


ヴァイスとの思い出の品――

『エクソシズム・ケーン』を取り戻すこと。


それは、彼から贈られた特別な杖。

『魔法使い』でなくても、知識があれば魔法が使える魔道具。

さらに本人が扱えば、威力は五倍に跳ね上がるという。


そして――。

盗賊団への復讐。



「それが終わるまでは……」

「アンハルト達には、まだ会えない」


サーミャは静かに言った。

ルティーナは頷いた。



彼女達の戦いは、まだ終わっていない。

奪われた物を取り戻すための戦いが、これから始まるのだから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ