第199話 迫ル脅威
ルティーナ達は失われたイスガ王国へ行くことで、ロザリナが誘拐されている場所を調べようとしていた。
しかしサーミャだけは諦めムードになっていた。
「マコトがそれはないってさ、ミヤ」
「なんでそう思うんだい?」
イスガを封印した時に砂漠は大地となってしまった。
だが、馬琴はイスガ王国の城や街はそのままで、空を覆っていた砂漠の砂だけが固まっているのではないかという。
「あぁ確かにイスガの城の外で、砂が空を渦巻くように舞ってたな……」
「そもそもイスガ王は、あの砂の下に王国ごと襲ってきた魔物を封じ込めるつもりだったんだ」
するとエリアルは気づく。
「そっか、あそこには封印すべきものも眠っているんですよ!」
「! そうか、カクヘイキってやつを見つけたって言ってたな」
馬琴は完全に城が埋まり押しつぶされてしまうと、核兵器が大爆発を起こしてしまい封印の意味をなさないという。
「なるほどな、それって周りの大陸を滅ぼしたって爆弾なんだよな?」
「……そんな物が爆発したら」
サーミャは理解したが、まだ腑に落ちないことがあった。
「だけどよぉ、ナガアキの居場所となんの関係があるんだい?」
「あの時、私とリーナが飛ばされたじゃない?」
「この世界の地図が……なんていうかなぁ~大きなガラスが目の前にあって、そこに地図が映ってるっていうか――」
「!」
「つまり、そこなら孤島の場所がわかるってことか?」
「なら、あたいもやりたいことができたぜ!」
「?」
エリアルは、今の時間帯ならミレイユは院長室に一人でいると伝える。
「ちょうどいいかもね」
「ミヤ、シェシカさんにも一緒にきてもらうように相談してもらっていい?」
サーミャは少し笑う。
「あ、そうだな……」
ルティーナ達は早速、バルステン王国のミレイユの元へ転移する。
――ブォーーンッ!
「!」
ミレイユは突然現れた空間に腰を抜かす。
空間からまずエリアルが先に飛び出し、続いてルティーナ達が順番に姿を現す。
「ミレイユ、突然すみません!」
「え、エリアル? こ、これは?」
「――それにサーミャさん? お亡くなりになったのでは?」
「あ……」
ミレイユは突然のエリアル達の訪問に困惑するも、事情を聴き状況を理解する。
「つまり、サーミャさんはさっきの魔法のおかげで、ご無事だったんですね」
「良かった……それだけが心残りで」
「すみませんミレイユ。ノモナーガに戻ってから色々な事件に巻き込まれていたので連絡できず」
「いいのよ」
「で、お父様の顔が知りたいんですか?」
ルティーナは頷き、イスガ王の顔を思い浮かべてもらうように伝える。
そしてシャルレシカはミレイユに頭に触れ、水晶に記憶を映し出した。
「これが、イスガ王か……覚えたぜ」
しかし、何も聞かされないまま連れて来られたシェシカは呆然としていた。
「ねぇ私までここに連れて来られた理由って? まさか……」
「よくわかってんじゃねぇか? シェシカ」
状況を理解したシェシカはあきれ顔でサーミャを見つめる。
「……わかったわよ、さっき使った『ヒーリング・ストーン』を貸しなさい」
「私はロザリナじゃないから充電に十分ぐらいかかっちゃうわ」
シェシカはエリアルを優しく見つめる。
「待ってる間、ミレイユさんとお話しでもしてたら?」
「ありがとうございます。シェシカさん」
『ヒーリング・ストーン』の充電が完了した後、ルティーナ達はシェシカを残しイスガに向かって転移を試みるのであった。
そして、たどり着いた先は――。
「げっ、真っ暗じゃねぇか? ……でも、本当に土の中ではないようだが……」
「しかし、酷い腐敗臭ですねっ」
ルティーナは早速、地面に手をつき【灯】と【風】を描いた。
すると、辺りは明るく照らされ、風によって淀んだ空気も循環していく。
「ふぅ、やっと息ができるぜ」
そこには広い部屋があり、床は荒れ果てていた。
――エリアルは当時を思い出す。
「そうだね、間違いない! 僕とシャルが訪れた、大量の遺体が安置されていた場所だね……」「この下に王様の遺骨があるはず……」
「あの時、シャルに土魔法を使ってもらって土葬したんだ」
「そうなんだ……外はどうなっているのかしら?」
シャルレシカは広域索敵で外の様子を探る。
「ねぇルナぁ……外では動く気配は感じますぅ」
それを聞いたルティーナは、少し複雑な顔になる。
「そっか、魔物化した人たちは……可哀想だけど、事実を知らずにさまよっているのね」
「つまり、空は砂だけが固形化したって言うマコトさんの想像は正しかったようだね」
「さぁみんな、こっちの通路だよ」
そしてエリアル達に案内され爆弾の格納されていた部屋へ進む。
「爆弾はマコトが凍らせて固めたままだね……」
(あぁ良かった)
「さぁ、ここからなら脱出に使った道に沿って戻れば、私とリーナが転移させられた扉まで行けるわ」
移動中、サーミャはルティーナに相談する。
「なぁ、その途中であたいだけ別行動してもいいか?」
「?」
途中の通路で、サーミャは天井が崩れた道を指さし、この先に書庫があると説明し二手に分かれて行動することを提案した。
(あの血塗られた詠唱の秘密がわかるかもしれないか……ミヤも考えてくれてるんだな)
「そっちは任せたわミヤ」
ルティーナはシャルレシカにサーミャと同行するように伝え、帰りは脱出した銅像のある部屋に連れてくるように指示する。
「私はエルと一緒に地図の部屋へ向かうわ」
そして二手に分かれ各々の目的地を目指す。
「しっかし、あたいと人形兵との闘いで通路がめちゃくちゃだな……」
「あの時に人形兵は壊してやったから、この通路の先には居ねぇはずだけど」
「さすがにぃ、私はぁ無機物の人形兵からはぁ悪意が感じ取れないんでぇ……わかりませぇん」
「まぁ杖は渡しておくぜ」
「何かあれば頼りにしてるぜシャル様っ」
サーミャは塞がった通路に向かって、弱めに『アース・クエイク――溶解――』を放ち地ならしを行い通路の瓦礫を排除しながら前に進んで行く。
しかし、瓦礫が取り除かれた通路の向こう側には人形兵がうごめき、サーミャと目が合うや否や襲い掛かって来た。
「げっ! こいつら、なんで動いてやが――」
「いや、あの時、倒した人形なのか?」
「ふえぇぇ~っ」
「シャルっ、水と雷で反撃しろっ」
二人は以前の人形兵の攻略の手順でなんとか退ける。
そして無事に書庫にたどり着くことができたのであった。
「まさか、復活しているとは思わなかったぜ」
「(それも別物だったのか? いやそれはねぇ……)」
サーミャは目を細めながら通路に転がる人形兵を見つめる。
「(時間が経って勝手に修復したってことなのか?)」
「ミヤぁ、ここはぁ私が見張っておきますからぁ~調べ物をやってくださぃ」
「お、おう」
サーミャはシャルレシカに『エクソシズム・ケーン』を手渡す。
「これで人形兵が動き出しても、なんとかなるだろ」
「(とは言うものの、部屋の中はさすがに滅茶苦茶だな……)」
そしてサーミャの目が、ある場所に留まった。
「あれは落盤した天井か……その下には大量の血が固まって――」
「(あたいは、あそこで下敷きになっていたのか)」
「じゃぁ、この辺りの本が魔法関係だな」
サーミャ達が人形兵と戦闘していた頃、ルティーナ達は転移の罠が施されている分岐の扉の前にいた――。
「確かこの左の扉を開けると、ルナとリーナが転移させられたんだよね」
「うん。同じように動作してくれるといいんだけど……」
「いくわよ、私につかまっててね、エル」
「一応、攻撃態勢にはしておくよ」
「?」
「ルナはあの時、僕達と合流するために壁に穴をあけて突き進んだんでしょ?」
「さっきもシャルが外には気配はあるって言ってたしさ」
「そっか、部屋にいる可能性もあるわね」
「一応、お願い」
――すると予想通り、二人は転移魔法をかけられ目的の部屋に辿り着くのであった。
そしてそこには予想していたイスガ人の魔物は存在せず、機械だけ静かに動いていた。
(良かった……無事で)
「ところで、この見たこともないごつごつした物が、ルナの言っていた――」
「うん」
「でも何が起こるかわからないから、さっさと目的を果たしましょ」
(ルナ、あのボタンだ)
「……たしかこれを押すんだよね?」




