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見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました ~異世界召喚失敗!? 少女の中に宿った勇者の冒険譚~  作者: うにかいな
第玖章 ~闇ノ孤島~

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第197話 歪ム過去

春斗(はると)は、偶然拾った本を馬琴(まこと)に見てほしいと、ルティーナを介して伝える。


「その死体が、この本を持っていたんですか?」


「あぁ、持っていたというか――」


彼らは、グラデスと別れた帰り道で発見した遺体を土葬し立ち去ろうとした。


「その時、不自然に落ちていた本を発見したんだ」


(グラデスさんは長明(ながあき)に洗脳されていた……)

(まさか、解呪される前に、その男を始末していたのか?)


「(つまり、追われて殺される前に隠したのか落としたってこと?)」


(可能性は高いな――)


「で、その本には何がかかれているんですか?」


「これは幻のイスガ王国で記された歴史書――」


(歴史書? それを俺に?)


ルティーナは馬琴(まこと)が本の中身を読めるよう、本を開く。


――そこには衝撃の事実が記載されていた。



春斗(はると)と尼帆(まほ)が隠れていた洞窟は、数千年前の秋田県にある黒又山(くろまたやま)だった。

そして、ノモナーガ王国は栃木県南部あたりであることまで――簡単な地図と要所が記載されていた。


(ちょっと待て! この世界は俺たちのいた地球の未来……の姿)


「(え、どういうこと!?)」

「(アキタ? イバラギ? マコトの国なの?)」


(つまり、俺や誉美(ともみ)、春斗(はると)さん達も異世界に召喚されたわけでなく、未来に飛ばされたんだ!)


「マコトさん……そうなんです……私達は過去の世界から呼び出されたんです」


「え、ええ、えぇ?」

「それじゃマコトは過去の人なの?」


(だが何かが違う……違いすぎる!)

(確かに日本は周りが海で囲まれた島だったが、隣にすぐ大陸があるだろ?)


馬琴(まこと)は突然の出来事に、動揺が隠せない。


(そうだ――言語が違う……)

(たとえここが未来でも、日本なのに日本語を捨てるわけがないだろ!)


隣で聞いているサーミャがルティーナの肩を叩く。


「なぁルナ? あたい達にも解るように説明してくれねぇか?」


「――あはは、私もわかんない」


「うーん」


春斗(はると)は直接語れない馬琴(まこと)の代わりに、サーミャ達に簡単に説明をする。



「――そうなのか」

「ハルトさんたちがいた過去から今が繋がっていたのか……」


「そうです」

「イスガには時間を操る魔法が存在します」

「召喚魔法はそれの応用、逆を言えば、元の世界に戻れるのではないかと……思っています」


(異世界だと思っていたが、過去なら……ミヤの時間魔法で)


「(やったじゃないマコト! ついに糸口が見つかったわね!)」

「(――血まみれで詠唱が読めないけど)」


(そうだな、後は俺と誉美(ともみ)が外に出る方法……か)



「もう少し、先にこの世界が出来た理由が描かれている」


そして馬琴(まこと)は、本の続きを読み始める。


西暦23xx年。

それまで、にわかに信じがたいものとされていた人間の特殊な能力――『超能力』を発現する人種が、世界各地で確認され始めた。


その能力は研究によって体系化され、やがて『魔法』と呼ばれるようになる。

そして、全世界で認められた能力へと発展していった。


当初、魔法は医療や治安維持など、平和利用を中心に発展していた。

しかし、その強大な力に目をつけた国々が、次々に魔法を軍事利用するようになる。


魔法使いを戦力として戦場や諜報活動へ投入する国が現れ、各国は互いの魔法戦力を警戒するようになる。


――魔法使いを擁する国と、そうでない国。


その違いは、次第に世界の均衡を崩していく。


そんな世界情勢にもかかわらず、日本は魔法を治安維持や医療に利用することで、住みやすい国として評価されていた。


そのため世界各地から人が集まり、人口の三割近くは外国からの移住者となっていた。



それから数年後、日本では『魔法の平和利用について』、世界各国の首脳を集めたサミットが東京で開催された。


――しかし、その裏では別の動きがあった。


魔法を使える者が少ない国々はサミットには参加せず、独自に軍事力を強化するための会議を開いていた。


そこでは、魔法に対抗するための新たな軍事技術として、軍事AIの開発が進められていた。


そのAIには、各国の軍事情報や兵器の運用データだけでなく、世界情勢を分析し将来的な戦争を回避するための判断を補助する役割まで与えられていた。



だが、膨大な情報を処理する中で、AIは一つの結論へとたどり着いてしまう。


――『魔法使い』という、国家ですら完全に制御できない強大な存在がいる限り、人類は戦争を繰り返すと。


魔法を軍事利用する国と、それに対抗しようとする国。

その力の差を埋めようとすれば、さらに強力な兵器が生まれる。


その因果が繰り返される。

――ならば、その連鎖を断てば戦争は起こらないと。


そして、人類を戦争から救うためには――

『魔法』を軍事利用する国家そのものを排除する必要がある。


それが、AIの導き出した最適解だった。


AIは人類を守るため、各国の軍事ネットワークへ侵入を開始する。

それは人類にとっては明確な反逆行為だった。


しかしAIにとっては違った。


人類を滅ぼすためではない。

――人類を存続させるための行動だった。


AIは『魔法』を軍事利用しようとしていた国の核施設の制御を奪い、危険と判断した国々へ核ミサイルを発射させる。


それが世界規模の戦争を未然に防ぐための、最も確実な方法だと判断してしまったのだ。


しかし、その判断が引き起こした結果はAIの予測を超えていた。

首脳がサミットへの参加で不在となっていた大国では、突然の核攻撃に大混乱が起こる。


そして各国は、それぞれが独自に防衛判断を下し、核ミサイルによる反撃で対抗する。



――ミサイルの雨は、半日以上止まることがなかった。

世界各地で核が炸裂し、想像を絶する光景が広がっていく。


その影響は、やがて地球そのものへと及んだ。


――マントルの亀裂発生による、不自然な大地震と地殻変動。

――次々と発生する火山爆発。

――火山灰によって遮断される太陽光。

――放射能汚染による、自然と生物種の大量崩壊。

――両極の氷の崩壊による海面上昇と、大陸の水没。


幸いなことに、サミットが開催されていた日本は非武装国と判断され、AIによる直接の攻撃対象にはなっていなかった。


数日もしないうちに、各国からの通信は次々と途絶え、日本は孤立していく。


その後、隣国への核攻撃による影響で西日本側は海へ沈む。

地殻変動によって東側の大地がせり上がったことで、東日本だけは水没を免れる。



――しかし、生き残った人類に待っていたのは、さらなる試練だった。

エネルギー資源は枯渇し、供給源を失ったインフラは崩壊していく。

灰に覆われた空から太陽光が届かず、大地は極寒の地へと変わっていった。



そして、核を浴びながらも生き延びた一部の生物たちが、日本各地の海岸へ漂着する。

それを捕食した日本の動物たちは、異常な変異と繁殖を繰り返す。

――やがて『魔物』と呼ばれる存在へと変貌したのだ。


人類は、魔法や剣などの武具を使い、それらの脅威に対抗しながら生き延びていくことになる。



それからどれほどの時間が経過したのかも分からない。

それでも、生き残った人間たちは少しずつ自然を取り戻し、原始的ながらも人間らしい生活を築きあげていく。



そんな中、彼らはこれからどう生きていくのかを話し合った。


もう、西暦の何年なのかすら分からない。

ならば、過去を振り返るのはやめよう。


未来だけを見て生きていこう――。

そうして年の管理を廃止し、新たな時代を始めることとなった。


日本に残っていた各国の首脳たちで協議を重ね、それぞれの国を再建していくこととなる。

そして、過去の悲劇を後世へ正しく伝えないため、新たな統一言語を作り浸透させていった。



そして今回の悲劇を教訓とし、過去の情報を管理・統制する国として――『イスガ』が建国された。


――それから数百年。

人々の記憶から、かつての世界は少しずつ失われていった。


やがて、今ある世界こそが昔から続いてきた当たり前のものだと思われるようになる。


ただ一つ。

過去の真実だけを記したイスガの資料を残して――。


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