第194話 辿ル老人
ルティーナとシャルレシカはアジャンレ村で発見した爆弾の処理を終え安堵する。
――だが、安心も束の間、ルティーナはグラデスの死体を草むらで発見してしまう。
「グラデスさんっ! そんな……」
(ナガアキが情報漏洩防止に始末したのか?)
「(そっか、呪縛から解かれてるから爆死させることができなくて、直接……)」
「ルナぁ、グラデスさんと知り合いだったんですかぁ?」
ルティーナはシャルレシカがブルデーノで単独行動をしている間、アジャンレ村での出来事を話す。
「グラデスさん……そうだったんですねぇ」
「でもぉ、死んでから時間が経っていないならぁ――」
「シャル、お願い出来る?」
「はぁ~い」
シャルレシカは、死体に質問をして記憶を呼び起こさせることはできないが、なにかしらの記憶を読み取ることは出来た。
「何について調べますかぁ? 死体だとぉ記憶がどんどん消えていくんでぇ、見つかるかわかりませんがぁ」
「……マコトぉ」
(あー時間が無いか、とにかく二つだけでも――)
馬琴はシャルレシカに探らせることを急いで決めた。
洗脳される前に連れて行かれた孤島。
洗脳を解呪した老人。
「わかりましたぁ、がんばりますぅ」
「シャル、お願い!」
そして、シャルレシカはグラデスの死体の頭に触れ、彼の記憶が消滅するまでに断片を必死に探るのであった。
直近の記憶であれば時間はかからないものの、孤島の件は十年前の情報であったため、苦戦していた。
――そしてそのまま日が暮れていく。
その頃、ルティーナの目の前に、サーミャが約束通り、『碧き閃光』の全員と救援物資を連れて転移してくるのであった。
「ルナっ、待たせたね!」
「――って、グラデスさん? し、死んでいるのか?」
「今、シャルが必死に記憶を辿ってるの」
ルティーナはサーミャとアンハルト達に今の現状を説明した。
「サーミャから聞いてはいたが、なんか凄い事になってるな……」
「事情が事情だ、俺達に手伝えることがあれば協力させてもらう」
「ヘレン、薬草をもって、シェシカと一緒に怪我人の治療を頼む」
「わかりました」
「孤児院に行けば、ルナちゃんのお母さんが居るのよね?」
「はい、アンナといいます」
「グルバス、ブライアン、俺達は壊れた民家の復旧を手伝うぞ」
「「おう」」
「よろしくお願いします」
アンハルト達はそれぞれ指示された場所へ向かった。
残ったルティーナとサーミャは、そのままシャルレシカを見守ることにした。
そして数分後、シャルレシカは突然、我に返る。
「ぷはーーっ!」
「――っミヤ?」
サーミャは軽く手を上げる。
「よぉ、お帰り」
「そ、そうだルナぁ……もう記憶が見えなくなっちゃったんですがぁ――」
シャルレシカは、断片的に探った記憶から必要な情報をまとめた。
グラデスが連れて行かれたのは、大陸から離れた海の先にある孤島であること。
「それはグラデスさんから聞いてる」
そこへは、モルデリドの刻印がされた船で移動していたことがわかった。
「デルグーイ――鷹の魔物――で運んだんじゃないんだ……」
(グラデスさんだけでなく、同僚の炭鉱員も全員運んだんだから効率的だな)
「でもよぉ、船なんて簡単に用意できねぇだろ?」
(やっぱり……モルデリドが絡んでいる)
(孤島はモルデリドから行ける場所にあるのか?)
「さすがにぃ、十年前の記憶から読み取れたのはそれぐらいでしたぁ」
「そっかぁ、でもマコトがありがとうってさ」
「えへへ」
「そうだぁ、解除した老婆の顔がわかりましたよぉ」
「!」
(それは大きいぞ!)
「(え、顔がわかったって……探せない――あっ)」
「シャル、お婆さんの顔を水晶に写せる?」
「はぁーい」
シャルレシカは水晶を取り出し、記憶でみた老婆の顔を映し出す。
「このお婆さんが……でも、ローブを被ってるのね……はっきり見えてないかぁ」
「あたいが転移で飛ぶには、知ってるやつならいいけどさ……」
「さすがに知らない奴は、はっきり顔がわからねぇと無理だぜ」
だが、シャルレシカはブルデーノで見せた能力を使えば大丈夫だと言い出す。
「そっか、その人物の気配を追えるんだっけ?」
シャルレシカは小さくうなづき、おおよその場所なら索敵できると言う。
「ミヤはこの場に残って、皆に指示を出しておいてくれるかな?」
「何か考えがあるんだな? わかったぜ」
「あと、通信用の小鳥をもう一回準備してくれない?」
「用事が済んだら連絡するから、私達を『サモン・オーバーコール』で呼び戻して」
「準備が出来たら、行くわよシャル」
「はいですぅ」
「気配の方角を索敵しますのでぇ~少し時間をくださいぃ」
そして、サーミャは通信用の小鳥をルティーナに渡し、アンハルト達のもとへ去っていく。
しばらくしてシャルレシカは何かを掴んだ顔をする。
「ルナぁ~、これから案内しますからぁ、私を連れて飛んでくださいぃ」
「わ……わかったわ」
ルティーナは、いつものようにシャルレシカを小さくし懐に入れて飛翔し、アジャンレ村を後した。
ルティーナはシャルレシカの言う方向へひたすら進む。
しばらくして、シャルレシカは気配が消えたと慌て始める。
「気配が消えたの?」
「うーん、消えたというか弱っているから見失ったというべきでしょうかぁ?」
再度、索敵をしたいと言われたルティーナは安全そうな場所に着陸する。
「ここなら……シャル、お願いね」
そしてシャルレシカは再び沈黙する。
(ルナ、今のうちに休んでおけ)
(長丁場になるかもしれない)
「シャル、気配が見えたら起こしてね」
ルティーナは仮眠することにした。
陽が昇る――辺りが白く染まる。
「ん、ん……もう朝か――って、仮眠どころか爆睡しちゃったわ」
「シャルっ!」
すると、シャルレシカも倒れた様に爆睡していた。
「あ……魔力を使い切っちゃったんだ」
(そういえば、戻ってきてからずーっと魔法を使ってたもんな)
「今までより長持ちしてて、気にならなかったわ」
(ブルデーノで何があったんだろうね? シャルは格段に能力が上がってるし)
「そうだね、じぃじっぽい鑑定もできるようになってるし」
(時間は惜しいが、シャルが目覚めるまでそっとしておこう)
ルティーナは、シャルレシカが起きるまで少し辺りを見回すことにした。
「シャルの言うがままに、夜に飛翔してたからあまり気にしてなかったけど……」
「ここはどのあたりなんだろ? 山ばっかり……」
するとルティーナは、違和感のある山を見つける。
「ねぇマコト、あの山、なんか尖ってない?」
(どこを見てる――あ、あれか?)
(ん、なんだろう? あの山……本当だ、まるでピラミッド――みたいだな)
「ぴらみ? もう、マコトの世界の話はいいよぉ」
「でも、変な山もあるんだね」
すると、地上からシャルレシカの叫び声が聞こえる。
「――ルナ―っ! わかりましたよぉ! 二人の居場所がぁ」
「!」
(!)
シャルレシカは予知夢を見て目覚めたのであった。
「シャル、案内して!」
そして再び二人は羽ばたき、シャルレシカの指示する場所へ近づいていく。
「これって、さっきの『ぴらみ』なんたらだよね?」
(日本にもあったな、こんな山――)
「道もなにも無いわね……木々だらけ」
「……近くにぃは魔物の気配はありません」
そしてルティーナは山のふもとへ着陸し、シャルレシカは広域索敵を始める。
すると、その奥に今にも消えそうな気配を二つ見つけるのであった。
「あそこに洞窟の入り口らしいものがあるね」
(なぁ、あそこにある岩についているのは『バリア・ストーン――魔物よけの石――』じゃないか?)
「(あ、ほんとうだ……なんでこんなところに?)」
「ルナぁ? 行きますよぉ」
ルティーナは、シャルレシカの案内に従い洞窟へ潜入を始めるのだった。




