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見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました ~異世界召喚失敗!? 少女の中に宿った勇者の冒険譚~  作者: うにかいな
第玖章 ~闇ノ孤島~

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第188話 嵐ノ前兆

ルティーナ達は、長明(ながあき)の事を知るグラデスに会うことにした。


「ところで、母さん、リーナ」

「洗脳を解呪する光魔法ってあるの?」


「そんな魔法、初めて聞いたわ……」


「そうですね、シェシカさんからは彼女が知る限りの魔法を全部教えてもらいましたけど」


(誰も知らない……そして、老婆か)


「とりあえず、皆は留守番しておいてくれ」

「ルティーナ行くぞ」


「んじゃあたいはエリアルに、状況を伝えておくぜ」


そしてルティーナはバルストに連れられて、グラデスの家へと向かう。


「(ねぇマコト、そのグラデスさん……信用できるのかな?)」


(もし敵になら、とっくにバルストさん達を襲ってるさ)



「ルティーナ、あの家だ」


バルストは一軒家を指さす。

その家の暗がりの窓から、恐る恐る外を伺う男の姿が見えた。


「お父さん、あの人?」


「グラデスさんっ、ワシだっ! 安心してくれっ」


すると、グラデスは玄関を警戒するようにゆっくり開ける。


「ば、バルストさんっ」

「申し訳ございません……こんな夜遅くに」


「構わんさ」

「この前、話していた冒険者の娘、ルティ…….ルナリカも一緒だ」

「こいつらなら、お前の力になってくれると思う」


「(この娘が……冒険者?)」


「家に入れて話をしてくれないか?」


家の中に案内されたルティーナ達。

そして、グラデスから長明(ながあき)との関係を聞かされるのであった。



――グラデスは、大陸の最北に位置するエウィータ王国で、炭鉱作業をしていた一般人であった。


十年前のある日、働いている炭鉱でデルグーイの群れの襲撃に遭う。


「そして俺は、仲間達十数人と共に拘束されたまま、海を越え島に連れて行かれたんだ」


(島? リーナを誘拐したやつらが目指した場所か?)


グラデス達は、島の荒れ果てた大地の上に野放しにされた。

そこには、死んだような目をした男が立ち、彼らに言い放つ。



『殺し合いをしろ! 生き残ったやつ……一人だけ助けてやる』



「皆、恐怖で混乱していた」

「当然、助かりたかった――」


その場は混乱しつつも、結局、全員で殺し合いが始まる。


「その時は、俺に潜在魔力があったことを知らなかったんだ」


グラデスが殺されそうになった時、魔法が開花した。

次に気付いた瞬間、自分の周りには仲間だった炭鉱員達の躯が転がっていた。


「そして生き残った俺は、ナガアキと名乗る男の元へ連れていかれたんだ」


(やつはスレイナ達のような、幹部候補をこうやって作っていたのか?)


「ナガアキと名乗る男は、黒い布で覆われ椅子に座っていた」

「そして、俺に問いかけたんだ」



『お前、仲間を虐殺したんだって? どんな気分だった?』



その言葉に後悔の念が湧き上がり闇に染まる瞬間、洗脳魔法がかけられていた。


「俺は、心が癒されるかのような気分になった……」

「そして再び気を失った」


次に気づいた時には、全く知らない森に放置されていたのであった。

そのまま森をさまよっていると、頭の中に声がこだまする。



『お目覚めかな? グラデス』



長明(ながあき)の声に恐怖で冷静さを失い気が狂いそうになったが、言うことさえ聞いていれば死ぬ事はないと告げられる。


それからというもの、操り人形の様に指示に従い、『光魔法』の使い手の情報を得るべく各国を点々とする。


「そして三年前、調査していた森で偶然男女の老人に声をかけられたんだ」


(男女の老人?)


「老婆は光魔法を使い、ナガアキにかけた洗脳魔法を解呪すると言い出したんです」


(ナガアキを知っている? それって……まさか)


グラデスは解呪された後、もう一人の老爺に頭を触れられた。

その後、なぜかアジャンレ村に迷い込んだのだと。


「――そうだったんですね」

「どこで、老人達にお会いに?」


「その場所が思い出せないんだ……」


(どういうことだ? 操られたのか?)


「それでこの前の襲撃事件で、自分が狙われていると……俺に?」


コクリっ


「(本当に狙われたのは、私たちだったのにね)」


(怪我の功名だな、こんなところで情報が拾えるとはね……)


「ところでグラデスさん、ドグルスって男を知っていますか?」


グラデスは、ドグルスと冒険者以外で光魔法が使える者について、情報交換をしていたという。

馬琴(まこと)は、その頃からロザリナの存在を探していたことを理解する。


(ここまで状況が合致すると、グラデスさんの情報は真実の可能性が高いな)


「(シャルが戻ってきたら、グラデスさんの記憶を探れるわね)」

「ねぇお父さん、グラデスさんを保護するためにノモナーガ王国に連れて行こうと思うんだけど」


「ノキア王に保護を頼むのかい?」


今まさに過去の勇者の情報を集めていることもあり、ルティーナの要望も通りやすいという。

それに加えサーミャの魔法で転移すれば組織に気付かれず、安全に移動できる可能性もある。


「確かに、それは得策だな」

「どうする? グラデス」


「情報協力することで守ってくれるなら、是非お願いしたいが……俺は、殺人を犯しているんだ――」


「それは魔法に覚醒した暴走が原因だろ? 全てはナガアキってやつに仕組まれた事故さ」


「……」




グラデスは下を向いたまま、ルティーナとバルストに連れられ、みんなの待つ孤児院へと戻る。


「ルナっ!」


孤児院の扉を開けた瞬間、サーミャが慌てた顔で駆け寄る。


「ちょっと、どうしたのよ」

「丁度よかったわ、ミヤに――」


「そうじゃねぇ!」


「?」


「あたいらの拠点に親父がやって来て――」


「なら、やっぱり丁度いいじゃい! シャルを連れてきてくれたなら――」


サーミャは少し怒り気味に言う。


「だから、最後まで話を聞けって!」


「どうしたのよ? ミヤらしくない」


「すまねぇ! 今、ブルデーノが大変な事になっているらしいんだ!」


「ミヤ、ハーレイ様と話せる?」


サーミャはルティーナに通信用の小鳥を渡した。




――ルティーナ達が異変に気付いた頃、シャルレシカはウェンディに看病されながらブルデーノ王宮の寝室で死んだように眠っていた。


ウェンディはシャルレシカの頭を撫でながら呟く。


「シャルレシカちゃん……あれから目を覚ましてくれない」

「傷は完全に治っているはずなのに」

「(それより――この国から出られなくなってしまった……)」


そこへ、近衛兵が寝室へ駆け込んで来る。


「――ウェンディ殿」


「あれから何か動きがありましたか?」


「城門前では、硬直状態が続いております」

「……今晩はなんとかなりそうですが、明日はどうなるか」


ウェンディはハウルセン王に謁見を求める。


「(まさか、このタイミングで魔法が使えないなんて……)」


ブルデーノ王国は、城の前で暴動が起こり城門の前で交戦が続いていた。

それだけではない――。

時を同じくして、魔法使いが全員、魔法を使えなくなってしまったのだ。


「ハウルセン王っ」


「おぉ、来てくれたか」

「巻き込んでしまって……本当に申し訳ない」


「お気になさらず」

「(シャルレシカちゃんがあの様子だと連れて帰れなかったし)」

「私にも手伝えることはありませんか?」


「今はフェリクスが近衛兵団を従えて必死に鎮圧に動いておるが――」

「謀反者を捕まえれば終わると思っていたが、民衆暴動が始まるとは……」


ハウルセン王は頭を抱える。


「魔法まで封じる暴動なんて――ただの民間人に起こせるわけがありません」

「(一体……誰が)」

「モルディナとブルデーノが同盟を結ぶと、何か都合が悪いのでしょうか?」


そんな会話の最中、近衛兵から現状の状況報告が舞い込んで来る。


「指揮を執っている男は確認できました」

「しかし、暴動の九割近くは武装していない民間人」

「彼らに爆弾を持たせ無理やりに王城の門を爆破しようとしています」


「くそ、民間人に盾にする気か!」


ウェンディの眉間にしわが寄る。


「むやみに国民を斬りつけたりしたら、やつらの思うつぼという事ですね……」


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