↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました ~異世界召喚失敗!? 少女の中に宿った勇者の冒険譚~  作者: うにかいな
第捌章 ~過去ト現在ト未来~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
186/238

第186話 過去ノ栄光ト裏切

ルティーナ達は、全属性の魔法が使えるようになったサーミャの新魔法の評価を進めていた。


「すごーい、私、遠くまで移動してたわよ!」


(理屈は転移の逆か……想像した人のところへ飛ぶか、呼ぶかの違い)


「しかし、この魔法は使えるのか?」


サーミャは頭を掻く。


「マコトがさ、誰かが襲われそうになったときに、呼び寄せたら救出ができるって」


「それもありますが、用事がある人物を呼び寄せたりできそうですね」


「なるほどな、そりゃ面白れぇ! 転移みたいに複数人呼べるかとか試してみようぜ!」

「ルナ、今度はリーナとエルとくっ付いてくれ!」


(勇者召喚――時空を繋げて対人召喚とするものと考えれば……)




ルティーナ達が魔法の実験に夢中になる一方――。


大海の先にある孤島の洞窟では、一人の老人が思いを巡らせていた。


「六か月後の満月の日にヤツの封印が解ける……」

「――それまでに、ロザリナを手に入れなければ」


封印が解ける満月を除けば、『儀式』ができるチャンスはあと五回……。


「まともに動けない俺には、時間がない――」

「残る手駒はもう二人だけ……しかしグラデスは、もう三年近く存在を感じられぬ――」

「まさか『フィルス・ダーク・マニュピュレート――強制洗脳――』を自ら解除したとでもいうのか?」



――彼の名は鴨井(かもい) 長明(ながあき)。


千九百六十九年生まれ。


十七歳だった彼は、この世界の召喚師――ヘルアドとヘルセラの父親によって『勇者召喚』されていた。


同時に召喚されたのは、為永(ためなが) 春斗(はると)と、四条(しじょう) 尼帆(まほ)。二人も長明と同い年だった。


三人が召喚された理由は、三年後にノモナーガ王国を滅ぼすと予言された厄災を倒すため――。


異世界から召喚された人間は強大な力を持つ。

ただ、それだけの理由で三人は、この世界へ呼び寄せられたのである。


突然、見知らぬ異世界へ連れてこられた三人は混乱していた。


「俺達には利益がないのに、なぜ厄災と戦わなければならないんだ!」


長明(ながあき)は訴える。

だが、厄災を倒さなければ元の世界へ戻すことができないと説得される。


ほぼ強制された状況ではあったが、絶対に元の世界へ戻ると誓う。

三人は悩みながらも、黙々と力を磨いていくしかなかった。


ただ、長明(ながあき)だけは少し事情が違っていた。


元の世界での高校生活に満足していなかった。

見知らぬ異世界で勇者としてもてはやされる日々は、今までにない高揚感を与えていた。



――そして三年の月日は流れ、対決の日を迎える。

結果的に厄災を倒すことこそできなかったものの、朝時(あさとき)の闇魔法によって封印することに成功し、三人は勝利したのである。


だが――。

厄災を封印した直後、不運にも火山が爆発する。


大地が崩壊し、三人の足場も地割れによって分断されていく。

「春斗(はると)っ!」

「尼帆(まほ)っ!」

三人は互いの名前を叫び続けた。

しかし、やがて火山灰と溶岩に巻き込まれ、その姿は見えなくなっていった。



それから、何日が過ぎたのかも分からない。

長明(ながあき)は、近くの海岸の波打ち際で倒れていた。


「……うっ」


目を覚ますと、思うように動かない身体を引きずりながら、必死に二人を探した。


しかし――。

自分以外の誰も見つけることはできなかった。


「尼帆(まほ)……春斗(はると)……どこだ」


その事実に落胆しつつも、ひとまず重傷を負った身体を休めることに専念した。



そして翌朝、日が昇る頃。

一人の男が、こちらへ近づいてくる姿を目にする。


「た……助けが来てくれたのか?」


安堵して声をかけようとした。

しかし、その男は気配を放っていなかった。


勇者として培った、闇魔法を超越した感覚。

そこから伝わってくるものは――。



――紛れもない、秘めた殺意。



動揺して不意に物音を立ててしまった。

それに気付いた男は、剣を抜き襲い掛かってくる。


長明(ながあき)は応戦する。

死闘の末にその男を瀕死まで追い込み、『フィルス・ダーク・マニュピュレート』によって男を強制的に洗脳し、その意識へ潜り込んだ。


襲ってきた理由を探るためだった。

そこで驚愕の事実を知ることになる。



数日前。

当時のノモナーガ王国のヘラルド王は、厄災の件を各国へ向けて説明していた。


――厄災は、勇敢なる三人の勇者の命懸けの戦いによって討伐された。

――世界に平和が戻った。



だが、それは真実ではなかった。

実際には、厄災は倒されていない。

それに、三人の勇者も生きている。



それにもかかわらず、ヘラルド王は、この恐ろしい歴史を後世に残さないよう各国へ強要していた。

厄災の存在そのものを、なかったことにしようとしていたのである。


さらに魔導師団から闇魔法を使える者を選抜し、その中でも格闘に秀でた者たちを集め、王直属の極秘任務を担う暗殺部隊まで創設していた。



その任務は――勇者の捜索と抹殺。



そして襲った男も、その暗殺部隊の一人だった。


――男は、長明(ながあき)との戦いで負った傷が致命傷となり、そのまま息を引き取った。



そのことで、自分の存在が王国に知られてしまったことを悟った。


「……ここにいたら、殺される」


とにかくその場を離れ、全く違う場所へ向かって逃げ続けた。

二週間ほど必死に逃げ回ったが、それでも暗殺部隊に発見されてしまう。


必死に逃げるも、崖に追い詰められる。

そして眼下に広がるのは、荒れ狂う海――。


「……ここから飛び込めば、死んだと思わせられる」


長明(ながあき)は、迷いなく海へ身を投じる。

目論みは成功し、暗殺部隊からの追跡を免れることができた。


だが、自身も浜辺まで戻る体力を失い、そのまま意識を失う。

再び、波に流されるまま漂流することになった。


どれほど海を漂ったのか――やがて、波間で意識を取り戻す。


「……俺は、こんな目に遭っても死ねないのか……」


悔しさを滲ませながら遠くを見渡す。

すると――。


「……島?」


遠くに孤島が見えた。

そこへ、魔物デクーシャ――鮫の魔物――が襲い掛かろうとしていた。


「……お前を利用させてもらう」


闇魔法で洗脳したデクーシャにしがみつき、島へたどり着く。


しかし――。

安堵したのも束の間。


そこは、人間の姿など一切ない、魔物だけしか存在しない恐ろしい場所だった。


だが、相手が魔物だったことは長明にとって幸運だった。


「こいつらなら、簡単な闇魔法で洗脳できる」


その後、魔物を操り大陸から人間を島へ拉致しては強制洗脳を繰り返す。


有能な駒を作り上げること。

大陸での情報を手に入れること。


そして――。

恋人だった尼帆(まほ)の行方を探すこと。


月日は過ぎ、探し求めていた情報を掴んだ。

尼帆(まほ)は、暗殺部隊に殺されてしまっていたのだ。


――長明(ながあき)の顔が歪む。

怒りに任せ、島にいる魔物を虐殺し続けた。


その後の情報で、尼帆(まほ)の娘が生きていることを知る。

それを知ると、魔物への虐殺をやめた。


そして調査を進め、孫の存在へと辿り着く。


――ロザリナ。


しかし――もう孫なんてどうでもよかった。

その頃にはすでに、自分の身体を全盛期に戻すことができる儀式魔法をイスガ人から入手していた。


勇者の血を引くロザリナが持つ光に特化した内蔵魔力。

その新鮮な大量の血。

そして『満月』の月光。


それらを揃えるための準備も、整えていた。


「一度は、あのルティーナという娘に阻止されたが、未だチャンスはある」


それと並行し、長明(ながあき)は自ら行った厄災の永久封印を、二十年という歳月をかけて少しずつ弱体化させていたのだ。


「――そして最後は、若返った自分の手で操りこの世界を滅ぼしてやるさ!」



かつては世界を救おうとした勇者。

だが今の長明(ながあき)に、その頃の面影はない。


「くくく……」

「俺をこんな目に遭わせた、この世界に未来などないっ!」



(第捌章 「過去ト現在ト未来」編 完)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。