第185話 金色ノ魔女ノ誕生
ハウルセン王の護衛案件は、ブルデーノ王国へ無事に送り届けたことで幕を閉じた。
――そしてルティーナとエリアル、ヘイガルはハーレイの転移魔法で、ノモナーガの拠点で待つロザリナ達のもとへ転移した。
「着いたぜルナリカちゃ――てっ! なんでここにっ?」
そこに居たのはロザリナとヘルセラだけではなかった。
「なんでじゃねぇっ! どんだけ待たせんだよ、クソ親父っ」
ノモナーガ城のハーレイの部屋で、儀式により眠っていたはずのサーミャが居たのだ。
「ミヤ? 起きて大丈夫なの?」
「あぁこの通りさ」
「いやいや、あの儀式は……あと一、二日ぐらいは――」
「目が覚めちまったもんは、しょうがねぇだろっ? 馬鹿っ」
サーミャはその日の朝、突然目を覚ました。
自分が何をされていたかを思い出し、慌ててハーレイを探すが見当たらず部屋の外へ出る。
「部屋を出たら、なんか知らねぇけど大騒ぎしてるしよ」
「偶然、出会ったデーハイグさんに何があったか聞いたんだ」
そして、ロザリナ達が拠点に居ると聞き戻ってきたという。
「まさか、タイヘイが暴れてたのは意外だったぜ」
「つか、あたいの『ヒーリング・ストーン』返しやがれっ!」
「あ、すまねぇ」
「でも、これのおかげで命拾いできたんだ」
「ありがとなサーミャちゃん」
サーミャは照れくさそうに顔を伏せる。
「ふんっ……無事でよかったな」
「(儀式で騙された事、ぶん殴ってやろうかと思ったのに)」
「あ……あぁ(殺されるかと思ったぜ)」
「――って、あんな死にそうな思いさせやがってぇ! 儀式を始めてから説明すんじゃねぇっ!」
結局サーミャはハーレイを羽交い絞めにするのであった。
皆は二人の様子を見て、優しく微笑んでいた。
――そんな中、サーミャは異変に気付く。
「なぁルナ、それよりシャルはどこだ?」
「うーん……任務継続っていえばいいのかな?」
「?」
ハウルセン王の護衛が完了し、ルティーナ達が解散しようとした時にエリアルが提案をしていた。
「ハウルセン王、謀反者の取り調べの件、シャルレシカに協力してもらうのはいかがでしょう?」
「ほぅ?」
ハウルセン王はこれ以上ない申し出であり、そこまで甘えていいのかとルティーナに確認する。
ルティーナと馬琴は寝耳に水であり、エリアルの発言は何を意図しているのか全くわからず返答に詰まる。
「(ルナ、拠点に戻ったら理由は説明するから……許可してくれないか?)」
ルティーナはエリアルを信じて、シャルレシカはブルデーノに残る事になった。
「(ありがとぅ、エルぅ~)」
「(頑張ってね)」
「んじゃウエンディちゃん、すまねぇがこの石を充電してくれねぇか?」
「あと、シャルちゃんの手伝いが終わったら、ルナリカちゃんのところに連れて返って来てほしいんだが……」
「はーい。ハーレイ様の言うことなら、なんでも聞いちゃいます!」
シャルレシカはウェンディに興味を持ち始める。
「(何でしょうか? 親近感がぁ)」
(やっぱ、実際に二人が並ぶと姉妹じゃね?)
「(ぷっ)」
そしてハウルセン王は、改めてシャルレシカとウェンディに滞在を依頼する。
「よろしく頼むぞ」
「「はぁ~い」」
「「「「か、被ってる」」」」
(か、被ってる)
そして夜も遅くならないうちにルティーナ達は、ハウルセン王に別れの挨拶を行いその場を去ったのだった。
「なるほどな……」
「そういえばエル、シャルを残した理由って?」
――エリアルはヘルセラと目を合わせる。
「シャルレシカと街に出かけた時、偶然、鑑定士のファイデンさんと出会ったんです」
「話を聞いてみると、以前、落雷事故で助けてくれた人物を探しているとのことでした」
「そこでシャルレシカに調べてもらったところ、その人物がウェンディさんだと分かったんです」
「なるほど、だから二人を引き合わせる橋渡しをすることにしたのね」
「ごめんね。勝手な事をして」
(本当にそれだけなのかな?)
「(えっ)」
(いや、シャルが秘密にしてる事に関係してる気がしてな)
「(シャルの事だから、見守ってあげるわ)」
「だから、尋問の手伝いをするって残ったのね」
そしてハーレイは顛末を聞き、深夜であったためヘイガルを連れ城に戻ることにした。
「そんじゃ俺らはおいとまするわ」
「部下も、そろそろ帰国している頃だろうしな」
「ハーレイ様、ヘイガル様、色々とありがとうございました」
「タイヘイの件は、また後日、伺います」
「そうだな、よろしく頼む」
「あとさ、サーミャちゃん……」
「大きな力を手に入れたからって無茶はすんなよっ」
「な、なんだよっ……親父もな」
二人が帰った後、サーミャは椅子に座り直しルティーナに笑いかける。
「待たせたなルナ!」
「!」
「居ない間、不便をかけたけど」
「もう『黄金の狂犬』とは言わせねぇ」
「これからは七属性の魔法使い『金色の魔女』――サーミャ様の復活だぜ」
「うんっ! 待ってたよ」
(心強いな)
そしてロザリナが、例の物を机に出す。
――イスガから持って帰ってきた魔法の書籍。
しかし、書籍の一部はサーミャが脱出の際につけてしまった血痕で文字が読めなくなっていたのだった。
「留守番している間、ヘルセラ様と一緒に読めなくなっていた部分を復元していたんですよ」
「ありがとね」
「ところでミヤ、詠唱できそう?」
「あぁ、二つだけな」
その魔法とは、『クロノ・モラトリス――時間停止――』と『サモン・オーバーコール――対人召喚――』であった。
「残りの一つは、肝心な部分が読めねぇ」
最後の一つは、『クロノ・テレポート――時間転移――』
「ダメじゃんっ」
(時間転移か――過去や未来に行けるってことか?)
「まぁまぁそう言うなって」
「早速、詠唱が判った魔法の実験をしたいんだ」
「明日の朝、付き合ってくれよ」
「「「うんっ」」」
――そして翌朝。
ルティーナとエリアルは武器屋に、以前、修理を依頼した武器を受け取りに行く。
その後、サーミャとロザリナが待つ近くにある平原へ向かった。
「さぁて、時間停止で試したいことが二つあるんだ」
複数の相手に通用するか?
飛んでくる物が防げるかどうか?
「まずは一斉に、あたいに飛び掛かってきてくれよ」
サーミャが詠唱をはじめ、三人は飛び掛かる。
詠唱を放った結果、エリアルとロザリナの攻撃を寸前で受けることになった。
「なんだ……全然使えねぇ――っん」
ルティーナだけ動きが止まっていた。
そして二秒ほど経過し、突然動き出したかと思った瞬間、足が絡まり転倒する。
「――え、何? 何かした?」
ルティーナは自分だけ状況がおかしいことに気づくのであった。
それから、ロザリナに『ヒーリング・ストーン』を充電してもらいながら繰り返し実験を続ける。
結果はサーミャが詠唱中に視線で一番最初に照準が合った者が対象になることがわかった。
「一人だけ止められるってこと?」
「でも、たったの二秒かよ……」
「なら――」
その後、四人はいろいろな実験をする。
「結局、複数の物が飛んできても、照準が合った一つにしか効果がないですね」
「う~ん……詠唱が短いのは使い勝手がいいんだけどな――」
「連続で時間を止められない制約が難点だな」
この魔法も転移魔法と同じく『ヒーリング・ストーン』で光魔法を代用する必要があった。
そのため、ルティーナの石を借りても、最大で二回しか使えない欠点は解消されていない。
「どっちにしてもさ、回数制限あるんだからさ」
サーミャは少し苦笑いをする。
そんなサーミャを見ながらエリアルはあることを思い出す。
「ハーレイ様が使った『ダーク・コフィン――拘束――』で長時間拘束した方が有利なのでは?」
「(あの時、親父の詠唱を聞いてたから――使えねぇことはねぇが)」
「ありゃ、だめだ……一度使うと魔力が空っぽになっちまう……」
そして、次の対人召喚の魔法を実験することになった。
「さぁ、今度はルナ……飛んで、見えない所に移動してくれよ」
「わかった」
ルティーナは背中に【翼】を描き、平原から飛び去って行く。
やがてルティーナの姿が見えなくなる。
「んじゃ、始めるぜ! 対象はルナっ、『サモン・オーバーコール』っ!」
その瞬間、サーミャの目の前に転移と同じ空間が発生する。
「――ひっ!」
空間の中からルティーナが飛び出して来たのだった。




