第181話 駆除ト本来ノ目的
ブクレイン王国の謀反者を炙り出すため、シャルレシカの危険を察知する能力を活用した。
結果的に、その場にいた約三十人――。
その中から、貴族五人、王の側近三人、そして近衛兵二人を拘束することができたのであった。
「まさか、俺の部下にも……不甲斐ない」
「しかも闇魔法が使えたとは――確かに、レゲスとキアリーは殺気を悟られずに敵を仕留めることに長けていた……」
フェリクスは頭を抱えながら顔を歪めていた。
そこへヘイガルが声をかける。
「……なんとも、複雑だよなフェリクス」
「しかし、こんなに謀反をもくろんでいる者が居ようとは……同情するぜ」
エリアルも目を伏せる。
「この人達が、モルディナとの交渉を邪魔し、増援の手配を遅らせた原因ってわけですね」
一旦、拘束したトレイユ伯爵とバレンツ侯爵以外の八人をフェリクスと近衛兵団に預ける。
続けて、ヘイガル達は城外にいる謀反者を炙り出す行動に移る。
「フェリクス、馬と馬車、それと四、五人ほど近衛兵を貸してもらうぞ」
「あぁヘイガル、構わんぞ」
「何から何まで迷惑をかけてすまねぇな」
ベイメールはヘイガル達の手際に感心する。
「なるほど、領主を謀反者扱いで捕らえたと振りまけば、シャルレシカ嬢の能力でネズミ算式に――というわけですな」
「(まぁ、結局はルナリカの受け売りだけどな)」
ヘイガルは一人で馬車に乗り、その荷台には檻に入れられたトレイユ伯爵とバレンツ侯爵が乗せられていた。
エリアルはシャルレシカを後ろにしがみつかせ、二人乗りで馬に騎乗する。
そして近衛兵たちと、まずはトレイユ伯爵領の館へ移動を始めた。
「ぐ、うぐぐっ」
目隠しと口をふさがれ拘束され、もがくトレイユ達。
「お前はとことん利用させてもらうぜ」
「悪行の分、たっぷりとな――」
そんな移動中、シャルレシカは過敏に反応する。
「エルぅ、あそこぉ!」
すると、護送される光景に群がる民衆の中から、刃物を持った男がシャルレシカに向かって飛びかかってきた。
すかさずエリアルは手綱を手放し、小剣に風を纏わせ男を吹き飛ばす。
「捕らえろっ!」
その男は近衛兵に拘束され、トレイユの入っている檻に一緒に放りこまれるのであった。
「おいおい……」
「(街中の一般人にも――謀反者が居んのかよ?)」
「(いや、館を調べられる前に消しに来たと考えるべきか?)」
そんな状況にもかかわらず、シャルレシカの視線は不自然だった。
「シャル? どうかしましたか?」
「(鑑定士さんの店を探してる事は秘密ですぅ……)」
「う、ううん、エルがぁ守ってくれるからぁ~心配してませんよぉ」
「?」
そして、トレイユ伯爵領の前に到着する。
――見守る人々の目には、異様な緊張感が漂っていた。
すると館から執事が飛び出してくる。
「な、何事ですか!」
「――トレイユ様っ!」
「おっと、近寄らないでくれるかな?」
「こいつは謀反者として拘束させてもらった――これから館内を全員、ここに連れてきてくれるかい?」
ヘイガル達は、城内での炙り出し作戦と同様に館内でも、トレイユがハウルセン王暗殺の首謀者だと触れ回った。
それに反応した人物をシャルレシカが次々に暴く強硬策をとった。
そして二時間――。
「なんなんだ……この国は」
ヘイガルは呆れていた。
トレイユ伯爵領の主要人物のほとんどが関与していたのだ。
「ヘイガル殿、このあと近衛兵を増員し、ここへ向かわせます」
「よろしく頼む」
「次はバレンツ侯爵領だな――」
その後も、シャルレシカの活躍により関与している人物は拘束されていく。
そして最終的には、二人の館は封鎖されるのであった。
「お前らよく頑張ったな」
「疲れましたぁ~」
「今日は、シャル大活躍でしたからね? もう眠たいでしょ」
大役を終えた三人がくつろぐ中、ベイメールが声をかける。
「あの、ヘイガル様」
「どうしたんですか? ベイメールさん」
「今宵は、城内に宿泊部屋をご用意させていただきました」
「おぉ、それは助かる」
「ここだけの話だが、ここの大使館は設備が悪くてな」
すると、エリアルの目が輝く。
「――もちろん、お城ですから大浴場はありますよね?」
「は、はい……ございます」
「もちろん、ご利用ください」
「今夜はぁ~ぐっすり寝たいですぅ~」
「エルぅ、早くぅ早くぅお風呂に行きましょう」
「「どっちだよ……」」
「どちらですか……」
「後は、フェリクスに任せて……俺達は休ませてもらおう」
「「はーい」」
場所は変わり、城内の大浴場――。
エリアルとシャルレシカは、大使館にある大浴場で二人のんびり湯船に浸かり疲れを癒していた。
「うーんっ、三日ぶりのお風呂は最高ですねぇ」
「しかも、湯船が広い」
「ですねぇ~せっかくノスガルドにあこがれの拠点をもったのにぃ……」
「そうだねぇ、お風呂を使ったのは、まだ一回だけって切なくないよね……って、――シャル?」
――ブグブクブク。
「えっ、シャルっ!」
「本当にお風呂と睡眠を一緒にやらないでくださいっ!」
シャルレシカはお風呂の気持ちよさと昼間の索敵の疲れが相まって、睡魔に襲われる。
「ほら首に力を入れてっ!」
「ぎゃーっ、頭だけ沈んでるじゃないかぁっ!」
「(胸だけ浮くって……どんな体幹をしているんですかっ)」
「ぶはーッ!」
「エル、ごめんごめん……大丈夫」
「大丈――ブグブクブク」
「きゃーっ!」
結局、シャルレシカはお風呂で何度か寝落ちしながらも予知夢を見ていた。
「ぶはーッ!」
「シャルっ! 今度は何?」
「ルナ、ルナがぁーっ」
「――! ルナの身に何か起こったのかい?」
シャルレシカが見た予知夢は、本来なら合流するまで最低でも四日以上かかるはずのルティーナに、明日の昼に会えると言い出すのだ。
「そんなことが出来るなんて――」
「まさか、ミヤが合流したの?」
エリアルは、そんなことは転移魔法――つまりサーミャがいなければ無理なのではないかと問う。
しかしシャルレシカは、その光景にはサーミャの姿がなかったと言い出し、エリアルは混乱していた。
「――ブクブクブク」
「きゃ~、シャル~っ――」
結局、シャルレシカは再び目覚めることはなく爆睡状態に陥ってしまう。
エリアルはメイドを呼び、介護してもらいながら部屋へ運ばれる。
その後エリアルはヘイガルの部屋を尋ね、シャルレシカの予知夢の話を伝えた。
その話を聞いてヘイガルは笑いだす。
「そりゃ、ハーレイかもな」
「え、ハーレイ様が? 彼は光魔法は……」
「いいやこの前、サーミャから例の石を使って転移魔法で遊んでたぜ」
「?」
そして、翌朝――。
「な、な、なんでぇ、私ぃ半裸なんですかぁー?」
「エルぅ……私に――」
「違ーうっ! 僕にはそんな趣味はない!」
「シャルがお風呂場で――」
シャルレシカはエリアルから話を聞き、必死に謝罪した。
「それで……エルぅ……申し訳ないついでなのですがぁ」
「?」
シャルレシカは、午後にルティーナ達と合流する前に、街に出かけたいと相談する。
「出掛けると言っても、シャルもブルデーノの街は初めてじゃないのかい?」
「いいえぇ全然~初めてですよぉ」
「(えええ~)」
シャルレシカは悩むエリアルに、今回の護衛案件を受ける前に見た鑑定士になる予知夢のことを話し始める。
「それで、ギルドに行っていたんだね」
「うん、じぃじがファイデンさんのお店がここにあるって」
「でも、なんでルナにも秘密に……」
シャルレシカは秘密にしていた理由を説明する。
「(そうか、シャルはそこまで考えて……)」
そして、二人は兵士に鑑定士の店の場所を聞き出かけるのであった。
だが――。
「ねぇシャル? 昨日、悪目立ちしすぎちゃいましたね」
「皆が、僕達を警戒して距離を取っているように感じるんだが……」
「うーん……そうですねぇ」
「悪意はないんですがぁ不安そうな気配を感じ――ん?」
エリアルはその言葉にとっさに警戒心を高め周りを見渡す。
すると、人混みから若い男性が声をかけてくるのであった。
「やっぱり君達は……」
「昨日、街中で襲われていたお嬢さんと騎士の方ですよね?」
「はぁ~い、そうですよぉ~」
エリアルは小剣に手をかけ、居合の構えになる。
「――あっ剣士の方、構えなくていいですよ、怪しい者でないですよ」




