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見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました  作者: うにかいな
第弐章 ~魔法使イ~

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第18話 捜索願イ

アンハルト=オズール:金の剣士<『碧き閃光』のリーダー>

挿絵(By みてみん)


レミーナから「明日、改めて話の場を用意する」と告げられ、ルティーナたちは一度解散することになった。



そして――翌日。

ルティーナたちは、再びギルドの客室へと足を運んでいた。


扉を開けた瞬間。

部屋の空気が、明らかに違った。

思わず、息を呑む。


だが、ただ立っているだけだというのに、圧がある。


腰に下げられた武器。

無数の古傷。

自然体のまま周囲を警戒している鋭い視線。


(こいつら……ただ者じゃない!)


馬琴(まこと)、本能的に理解した。

昨日までギルドで見かけていた冒険者たちとは、明らかに『格』が違う。


「はじめまして」


中央に立つ青年が、静かに口を開く。

整った顔立ち。

だが、その瞳には数々の修羅場を潜り抜けてきた者だけが持つ鋭さが宿っている。


落ち着いた声で名乗る。


「僕は、この四人パーティ『碧き閃光』を率いるリーダー――アンハルト=オズール」

「金の剣士だ」


続いて、隣の大男が腕を組む。


「俺はグルバス=ブラウダ。金の武闘家だ」


まるで岩のような男だった。

全身から放たれる威圧感だけで、普通の相手なら足がすくむだろう。


「シェシカ=アーベンです。金の回復師をしています」


柔らかな雰囲気の女性。

だが、その所作には品があり、どこか高貴さすら感じられる。。


「ヘレン=レルナード。銀の魔法使いよ」


最後に、杖を持った女性が淡々と名乗った。

感情の読みにくい視線。


馬琴(まこと)は、その態度が妙に気になって仕方なかった。



全員――上位冒険者。

ギルドでも名の知られた実力者たちだった。


「君たちが、レミーナの言っていた子だね」


そう言われ、ルティーナは思わず背筋を伸ばす。


「は、はい、ル、ルナリカ=リターナです……」


そして、少し言いづらそうに続けた。


「職業は……その、ありません……」


一瞬。

部屋が静まり返る。


「……無職?」


四人の声が、綺麗に重なった。


(やっぱりそこ突っ込まれるよね!?)


ルティーナの胃が、きりきり痛み始めた。


「私はぁ~、シャルレシカ=ブルムダールですぅ~」

「職業は、銀の占い師ですぅ~」


シャルレシカが、ふわっと笑う。

そのおかげで、張り詰めていた空気が少しだけ和らいだ。


だが――。


「おい! レミーナ」


アンハルトが眉をひそめる。


「どういうことだ?」

「銀の占い師はともかく、『無職』の子がいるなんて聞いてないぞ!」


「ちょっと、あんた! 言い方!」


慌ててレミーナが割って入った。


「ご、ごめんねルナリカちゃん……こいつ、昔から無神経で……」


気まずそうに視線を逸らし、小さく付け加える。


「……私の兄なの」


「えっ、お兄さん!? アズール……そっか!」


思わず声が裏返る。


アンハルトは頭を掻きながら、小さくため息をついた。


「……今、『似てない』って思ったよな?」


「い、いえ! そんなことは!」


(めちゃくちゃ思ってたくせに)


「(言うなぁ!)」


少しだけ空気が和らぐ。

そのタイミングを見計らい、レミーナが本題へ入った。


「この子たち、実力はあるのに『職業なし』てだけで仕事が取れないのよ」

「だから――もしよかったら、あの依頼を受けさせてあげてくれないかな?」



アンハルトは静かに目を閉じる。

そして――ゆっくりと口を開いた。


「……もう、二年前の話だ」


低く落ち着いた声が、部屋に響く。

当時、パーティ『碧き閃光』は五人だった。


アンハルト。

グルバス。

シェシカ。


そして――。


金の剣士、ヴァイス=クレッサ。

金の魔法師、サーミャ=キャスティル。


王国でも名の知られた、全員が金の上位パーティ。


銀の依頼なら単独制圧。

金の任務ですら、幾度となく成功させてきた実力者たちだった。


事件は――盗賊団討伐任務から始まった。


アンハルトの表情が、わずかに曇る。


「その依頼は……奴らの罠だった」


盗賊団によって、ヴァイスが捕らえられてしまったのだ。

解放条件は一つ。


サーミャの持つ魔道具――

『エクソシズム・ケーン』を持って、シェシカ、一人で指定の場所へ来ること。


だが――。

サーミャは、誰にも相談せず一人で向かった。


理由は明白だった。

彼女とヴァイスは――婚約していたからだ。

愛するものを救うため、居ても立っても居られなかった。



そして。

アンハルトたちが駆けつけた時には――

すべてが終わっていた。


盗賊団の姿はない。

残されていたのは――


首を落とされたヴァイスの亡骸。


そして。

その傍で泣き崩れる、サーミャだけだった。


さらに――。

彼女の首には、『首輪』が付けられていた。

宝石の埋め込まれた、異様なほど美しい首輪。

彼女の瞳に宿っていたのは――深い絶望だけだった。



「そのまま、拠点へ連れ帰ったが……翌朝には、姿を消していた」


アンハルトが静かに締めくくる。


「……それ以来、行方不明だ」

「一年後にヘレンが加入して、今は四人で活動している」


部屋に沈黙が落ちた。


「……辛い話ですね」


ルティーナがぽつりと呟く。


「恋人だったんですよね……」


(……また首輪か)


 馬琴(まこと)が、小さく反応する。


(首を落とされた男……首輪を付けられた女……)

(嫌な一致だな)


その声音には、わずかな警戒が混じっていた。


ルティーナは静かに顔を上げる。


「つまり――」


真っ直ぐレミーナを見る。


「私達にサーミャさんを探してほしい……そういう依頼ですね?」


「話が早いわね」


レミーナは頷いた。


「今まで何人もの占い師にも頼んだわ」

「でも、手がかりは掴めなかった」


アンハルトが、一歩前へ出た。


「報酬は特別だ」


静かな声。


「君たちは、今後『碧き閃光』の名を使って依頼を受けてもいい」


ルティーナの目が、大きく見開かれた。

新人冒険者にとって、それは破格どころの話ではなかった。


上位パーティの後ろ盾。

それだけで、受けられる依頼の幅は一気に広がる。


(……来たな)


馬琴(まこと)が低く呟く。


(ここからが、本番だ)


ルティーナは、ゆっくりと笑った。


「……その依頼、受けます」


だが――。

この時のルティーナは、まだ知らなかった。


この依頼の裏に、『巨大な闇』が潜んでいることを。


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