第178話 復讐ノ終焉ト真実
ロザリナの魔法、『シャイン・キャンセラー――魔法遮断――』の有効時間は後二分。
それまでに『水晶――サモナー・ストーン――』の破片を探さないと、再び、朝時によるブランデァからの洗脳が再開されてしまう。
(くそっ! 時間がない!)
(ルナっ、ミヤの部屋へ――いや、間に合わないっ)
「(?)」
「(それより、どこに捨てたのよ! タイヘイっ――)」
全員が諦めムードになる中、ヘルセラが応接間に乱入してくる。
「お主らっ!」
ヘルセラはサーミャの部屋でルティーナ達の様子を索敵していた。
戦闘している様子はない。
さらには、感じていた禍々しい気配は完全に沈黙していた。
ルティーナ達の動きを見る限り何かを探していると判断したのだ。
(さすが! ヘルセラさん)
「(それを言おうとしたのね)」
ルティーナはヘルセラに詳しい状況を伝えた。
そして、硬化しているブランデァへ触れさせ、残留する朝時の魔力を辿らせる。
――数秒後、彼女は部屋中を探った末、置物と床の隙間を指さした。
「ここですな!」
一番近くにいたデーハイグは、置物をずらし水晶を発見する。
「急けっ、ルナリカちゃんっ」
デーハイグは布を取り出しルティーナに渡そうとする。
「包まなくても大丈夫です! 私の中には入れないんで!」
「?」
そしてルティーナは、水晶を拾いブランデァに直接触れさせる。
(なっ、俺の意識がぁ――)
すると水晶の中に朝時の姿が宿る。
「残念だったわね」
「私にはマコトがいるから、乗り移れないんでしょ?」
『(くそったれがぁぁ~っ! 俺しかわからないとこに投げたのに!)』
『なぜ、場所が……』
「こやつが、禍々しい輩かい? 騒がしい奴らだねぇ」
『(だ、誰だ、このババァ!)』
『(こうなったらロザリナの魔法切れを待つしかねぇ――)』
ロザリナはルティーナにこっそり耳打ちする。
「ルナ、もうすぐ切れるわ――もう一度、切れているのを悟らせないように再詠唱を……」
「リーナ、大丈夫よ! もう必要ないわ」
「切れても、何もできないから」
「でも……」
「仮に、別の洗脳した人間がいたとしても、ここに呼ぶ時間はないわ」
「それに――」
馬琴は朝時を超える手段を考えていた。
ルティーナはダブリスに耳打ちをする。
「もちろんそれも保管している!」
「五分だけ時間をくれ」
ダブリスはその場から消える。
『(! こいつら何をする気だ)』
『(もうそろそろ、洗脳魔法を再開できるだろう……)』
しかし、朝時は水晶の中からブランデァを見つめる。
洗脳すれば意識を操り、催眠状態から覚醒させることはできる。
しかし、硬化された体はどうすることもできなかった。
『くそっ! 里見』
『貴様、どこまでも俺の人生をぉ――』
ルティーナは馬琴が考えるより先に言葉が出る。
「はぁ? あんた何様!」
「そんなんだから、トモミさんが振り向いてくれないのよっ!」
「マコトはスケベでおっさんみたいなとこもあるけど……」
「あなたなんかより、何億倍も素敵よっ!」
(……一言余計だよ)
(でも、ありがとうなルナ)
朝時はルティーナの叱責に言葉を失い、沈黙が続く。
――そこへ、ダブリスがルティーナに頼まれたものを持参する。
「さぁてタイヘイっ」
「聞こえてると思うけど、あなたの処遇はマコトが決めてくれたわ」
『なにっ! 俺を殺すとでもいうのか!』
『(今は我慢だ……俺には洗脳を仕込んだ駒は他にもいる――そいつで再び)』
ダブリスは箱の中から石の着いた首飾りを取り出した。
『おい! それは、ルナリカを拘束していたときにつけさせていた――』
ノキア王は朝時に言われた言葉をそのまま返す。
「すまんなタイヘイよ。余はなんでも取っておくのが癖なのだよ」
ダブリスが手にしているのは『マジックシール・ストーン』。
そう魔法を遮断する石である。
『それも、保管してやがったのか!』
『しかし、それでも一時的だぞ――』
ルティーナは目を閉じながら笑う。
「――いえ、未来永劫よ」
『!』
そしてルティーナは、朝時の入っている『サモナー・ストーン』と『マジックシール・ストーン』をくっつけ、二つを包み込むように【混《まぜる》】を描く。
『混ぜるだと? ――まさかっ!』
さらには布を巻きその上から【硬】を描いた。
『くそっ! クソッタレがぁ~』
「これで、ただのしゃべる塊になったわね」
朝時の水晶は――。
誰にも移魂できず。
洗脳魔法も使えず。
さらには破壊することもできない。
完全な封印状態にされたのであった。
(……)
「(マコト……これでよかったの?)」
――しかし、馬琴は朝時を、人として助けてやりたいとも思っていた。
彼のやりすぎた行為を許すことはできなかった。
何もわからず、この世界へ連れてこられた――
自分も状況が違ったらと考えてしまう。
ゆえに見殺しにすることもできなかった。
(俺は甘いな……)
そして、無事に現世に戻る方法が見つかる時まで反省させ、その時は一緒に連れて帰ってやろうと思っていたのであった。
「(マコトは、やっぱり優しいね)」
「ダブリスさん、これを誰にも手が振れらないところに保管してもらっていいですか?」
「そうですね、もう私一人しかいませんが暗殺部隊の部屋にしまっておきます」
「そこなら、誰も行けませんね」
「……私も行けますよ?」
「で、デーハイグさん?」
「そうじゃ、お主、ワシを欺いておったな?」
「ヘルセラさん? そういえば……」
「デーハイグさん――あなたは一体」
デーハイグが自分がここに居る理由をルティーナ達に説明した。
(も、元暗殺部隊で二代目の隊長?)
(それだけでなく……あのドグルスの父親だったなんて――)
「(ここにミヤが居なくてよかった……わね)」
そこへノキア王は再びルティーナに謝罪と感謝の念を伝える。
「ルナリカよ、また救われたな……」
「まさか、お前たちをこの国から引き離す様に仕組んでおったとはな……」
「しかし、戻ってこれたのだな? やはりハーレイか?」
ハーレイは頭を掻きながら苦笑いをする。
「まぁ、偶然っちゃ偶然ですけどね」
そしてその経緯をノキア王に説明する。
「そうか、そうであったか」
「お二人共、ノキア王をご心配されておられました」
「ハウルセン王とモルディナ王には、後日、私の方から謝罪しておく」
するとロザリナは床を見つめながら声をかける。
「――あのぉ~お取込み中すみません」
「ブランデァさんはどうします?」
「おぉそうであった」
馬琴はブランデァに仕掛けている漢字をすべて解除した。
そして、ブランデァにも簡単な事の顛末と朝時と勇者召喚に関わる事を説明するのであった。
「そんな事が……わかりましたっ」
「この件は私も、伏せさせていただきますっ」
「よろしく頼む。ルナリカの事も内密にな」
「さて、デーハイグ……本題に入ろうか?」
ノキア王は、デーハイグが知っている事をこの場で話す様に指示を出す。
そして八年前に起こった、王都爆破事件の頃の話を始めた。
「私は、王都爆破事件の二日前――」
「ドグルスから、自分でなければできない要件があると依頼され、国外へ出ていたんです」
「それであの時、サデッサしかいなかったのか――」
デーハイグは事件を暗殺部隊にも悟られないように数日間、調査していた。
「私を城から遠ざけているうちに、何者かの指示で王宮に爆弾をしかけていた可能性があるのです」
「つまり、ドグルスが『勇者召喚の儀』を妨害した主犯だったのか?」
確信は持てないと言いながらも、当時から奇妙な単独行動が多く不審に思っていたことは認めるのであった。
「私は、ドグルスは実行犯……首謀者は別にいると調べようとした矢先――」
怪我から復帰したノキア王が『召喚の隠蔽』行為。
暗殺部隊を私物化していたこと。
デーハイグは、そのふるまいの変化に懸念を抱きつつも、その件も並行に調べることにした。




