第163話 今後ノ課題ト会遇
ルティーナは、ノキア王が朝時の支配から解放されたことで、父バルスト達にも危険がなくなったことを伝えたいと言い出した。
しかしサーミャは――。
「あー、すまねぇルナ、転移で送るのは構わねぇんだが……」
「何かあるの?」
サーミャはハーレイに言われた黒魔法習得の件を話した。
「そっか、城に残った理由はそれだったのね」
「闇魔法が使えるようになるなら、凄いじゃない!」
ルティーナもその意見には賛成だった。
「だけどよぉ、明日、城にいかねぇといけねぇんだ」
「そっかぁ、日帰りだね……でもいいよ。それでも」
「ごめんなルナ、それだけじゃなくて……」
サーミャは言葉に詰まる。
「最低でも二週間は、みんなと会えなくなっちまう……」
「「「!」」」
「そうなんだ……」
ルティーナには別の考えがあった。
その表情の変化を、サーミャは見逃さなかった。
「――ルナ、本当は向こうでバルストさん達に、ゆっくり甘えたかったんだろ?」
「ううん、お父さん達はもう隠れている必要もなくなったから……」
「もし、みんなが嫌でなければ、ここに一緒に住んでもらって管理人みたいな感じで……」
「いいじゃないですか! 掃除や料理もお願いできますね」
「僕は師匠に修行をつけてもらえますし、それに有名人ですから、この拠点にも依頼が増えそうですね」
「あたいもかまわないぜ……って、さては客間を八室作らせたのはそれが狙いだったなぁ?」
ルティーナは自分勝手な提案だと思っていた。
しかし、心置きなく提案を受け入れてくれる仲間が、これほどうれしいと実感し涙がこぼれた。
「はいはいルナ、泣かないで」
「まずは、昼ご飯たべて仮眠しなさい」
「そうですね」
「師匠にそんなやつれた顔で会うわけにはいかないでしょ」
「うんっ」
「さぁ、おまたせ! ロザリナスペシャルよ!」
「だれかシャルを――」
バタンッ
「「「「(ビクッ!)」」」」
「あははぁ~気持ちよすぎて寝ちゃいましたぁ~」
「いい匂いですぅ」
「「「「(ご飯の匂いで、自力で起きてきた……)」」」」
みんなに呆れ顔をされながらも、昼食を楽しく取るのであった。
そんな中、シャルレシカは自分のやるべき事の予知夢を見たと語るが、その内容は秘密だと言った。
「なによ、秘密なら言わなきゃいいじゃんっ!」
「相変わらず面白れぇなぁシャルは」
「なのでぇ、今回はぁ私がぁ留守番してますねぇ」
「「「「――って! その話を知ってるのぉ!(怖っ)」」」」
「たまにはぁリーナもお出かけして来てくださいぃ、アンナさんも会いたがってましたよぉ」
「うん、ありがとねシャル……でも今回は短時間みたいだから日を改めるわ」
「(でも、一番帰りたいのはシャルなのに)」
「私も新しい拠点でやりたいことがあるし」
「だったら、僕もリーナの護衛で残るよ」
「残念ですぅ!」
「そうだぁ、ルナの武器なくなっちゃんですよねぇ?」
「あ、う、うん……」
「そうそう、粉々にされて川に捨てられてたんだぜ……」
「シャルならルナを探せるかなと持って帰ってきちゃいるけど」
「それじゃぁ私がぁ、タリスさんのところに修理をお願いしてきますねぇ」
(なんだろ? シャルの様子が…・・・)
「(うん、さっき言ってた予知夢に関係あるのかしら? 気が利きすぎて怖いわね)」
昼食を終え、ルティーナとサーミャは夕方まで仮眠を取った。
他の三人は各々の時間を過ごす。
そして日が暮れ――。
「んじゃミヤ、行きましょうか?」
「なんだなんだ? その可愛い服装は? 結構似合ってるじゃねぇか」
「エル達とブクレインで買ったやつじゃないよな?」
「うん、これはね――――」
「――――そっか、そりゃサプライズすぎるな」
ルティーナとサーミャはバルストを目印に『ディメンジョン・テレポート――転移――』を行う。
一方、アジャンレ村で夕食後に一息をつくバルストとアンナの目の前に禍々しい空間が発生し、その中からルティーナとサーミャが現れる。
「お父さんっ」
「……う、うん……お帰り」
「やっぱり、この魔法は心臓に悪いぞ」
「事前に連絡してくれないと恐怖でしかない……それに、お前らが来たら部屋がめちゃくちゃだ」
バルストの言う通り部屋内に転移すると辺りにあった家具や机が吹き飛ばされ、いろいろなものが散乱していた。
「ご、ごめんね急に……」
すると、アンナがルティーナの服装に気付く。
「あなたっ、ルナの服……あれって……」
「っ!」
「に、似合うかな? お父さん」
「あぁ……あぁ……ううぅぅぅん、ちょ、超かわいいじゃないかっ」
ルティーナが来ていた服は、バルストが十八歳の誕生日にプレゼントした服であった。
――でも、ちょっとだけ待っててね!
これを全部着こなせるようになったら、一番にお父さんに見せてあげるからね!――
「覚えててくれたのか……」
「もちろんだよ」
「以前、実家を捜索しに行ったじゃない? その時にもって帰ってたんだ」
着れなかったはずの服は、以前バルステンで皆でショッピングをしていた時、シャルレシカの服を加工した方法を応用して仕立て直していた。
大きな部分を漢字の能力で補正し、馬琴の感覚でルティーナの体に合うサイズへ調整した。
「(そうか、ルナはこれを見せたかったんだな)」
「(うちのクソ親父は、こんな風には出来ねぇんだろうな……)」
バルストはそんなルティーナを見て、何かを察する。
「もしかして?」
「うん! ついに黒幕を暴いたの!」
ルティーナは、『王宮爆破事件』でノキア王が体を乗っ取られて別人になっていたことが原因で、その事件を知る者の命が狙われたことを二人に説明した。
ただしノキア王との約束もあり、たとえ親でも肝心なところはぼかしつつ、その陰謀を粉砕し、もう命を狙われる心配はないことだけを、かいつまんで話したのだった。
(『勇者召喚』の件や、俺の話は伏せておこう)
「(なんで?)」
(勇者の黒幕の件がはっきりするまでは二人を巻き込みたくない)
「(……うん、ありがとうマコト)」
バルストは納得しつつも、少し複雑な心境だった。
「そうか、あの時の光るものはその召喚の時の水晶の破片だったんだな……そして、それを知るものを始末か――じゃぁ、連絡がつかなくなったあいつも……」
「つまり、ルナ達がノキア王を水晶の呪縛から解放したってことなの?」
「そうだよ」
「だから、もう死んでたことにしなくていいの!」
「「!」」
「でね、お父さんお母さん……もう安全だから、もし良かったらノスガルドの私たちの拠点で一緒に暮らさないかなって?」
「「……」」
「駄目かなぁ?」
ルティーナから、自由に生活できることを聞かされたが、バルスト夫婦は悩んでいた。
一度は諦めていたが家族、三人で一緒に暮らせるようになることに喜びを感じながらも……。
しかし、悩む二人を見たサーミャが問いかけた。
「バルストさん、せっかく大好きなルナと一緒に暮らせるようになるんだぜ? 嬉しくないのかい?」
「あたいたちは大歓迎だぜ」
サーミャの温かい言葉に涙目になるバルストであったが、アンナが自分から皆に話すと切り出す。
「実はね、ルナが以前に訪問してきた時、事件解決までもう少しって言ってたでしょ?」
「う、うん」
「あの事件で帰ってから、二人でこれからの事を話し合ったの」
この村での生活が気に入ってしまった。
それ以上にこの村の人たちに必要とされてしまっていることに気付いてしまった。
――そして一番はこの孤児院の将来だという。
親が居ない子供たち。
寝たきりになってしまった院長。
自分たちが居なくなれば、この孤児院を支える者が居なくなる。
「そっか、そうだよね……この村には必要な人になっちゃったんだもんね」
「せっかく誘ってくれたのに……すまんなルティーナ」
サーミャはそんな親子を優しく見つめる。
「まぁ、今生の別れじゃねぇんだ! いつでもあたいが連れてきてやるよ」
「うん」
そんな中、アンナは頬に手を当てながら微笑む。
「そういえばルナ、この前の魔物襲撃の一件の後――」
「?」
「エリアルさんとお父さんはこの村を魔物から救った英雄として、崇められているのよ」
「え、そんなことになってるの?」
「そっか、そういうことならお父さんは居ないと駄目だね……」
そんな中、孤児院の扉が叩かれる。
コンコンッ
「あら、誰かしら? こんな時間に」




