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見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました ~異世界召喚失敗!? 少女の中に宿った勇者の冒険譚~  作者: うにかいな
第捌章 ~過去ト現在ト未来~

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第160話 過去ノ勇者ノ隠蔽

王室には静かな空気が流れていた。


朝時との死闘を終え、ようやく訪れた束の間の安堵。

しかし、目の前にいるノキア王の表情は、その安堵とは裏腹にどこか重々しかった。


八年前の真相が語られ、点在していた謎は一本の線となって繋がった。

だが、それは全ての始まりに過ぎない。


ノキア王は静かに息を整えると、さらに遠い過去――約八十年前の出来事を語り始めた。


「当時、勇者召喚された三人は、男二人、女一人だったと聞いている」


(今回の俺達が召喚された構成と同じか……)


男の一人は闇魔法の使い手の重剣士。

もう一人は内容は分からないが『刻印魔法』という魔法を使う剣士。

そして、女性は膨大な魔力量をもつ光魔法の使い手だったという。


(謎の刻印魔法か?)

(刻印……俺の能力――漢字を転写する? ことを言っているのかな)


「(そうなのかな?)」


(その力をふるう剣士か……まるで、俺とルナだな)


「(本当だ……)」



彼らは一年後に訪れる厄災に立ち向かうことを使命とされ、その厄災を討伐し世界を救ったと。


「しかし、彼らは戦いの後に全員、息を引き取ったという」


(……この話はヘルセラさんが言っていた通りか)


「あの……ノキア王」

「その表現だと一度、討伐し終えて戻って来てから亡くなったように聞こえるんですが」


「そうだな……これ以上はわからぬのだ」

「父が亡くなる前に、そう聞かされただけなのだ」


ルティーナは小さく頷いた。


「いえいえ」

「でもヘルアドさんの予言で、厄災の封印が解ける今回の『勇者召喚』を切り出したんですよね?」


「ああ、そこまで知っていたのか」


「はい、妹さんのヘルセラさんから伺いました」


「そうか、妹の話は初めて聞いたが……また機会があったらお会いしたいものだ」

「話がそれてしまったが、余は『討伐された』と思っていた厄災は、実際には封印されていただけだったと聞かされたのだ」


しかし、なぜ討伐でなく封印だったのか?

だが、勇者を召喚すれば前回のように厄災の魔の手から世界が守れることは間違いがないとノキア王は決断に至ったという。


「「「「「「「……」」」」」」」


しばらく、王室は沈黙が続く。

そんな中、ロザリナはルティーナに目で合図を送り口を開く。


「ノキア王、私……その過去に召喚された勇者の男女から生まれた娘の子供らしいんです」

「そして勇者という組織の影に、その男性が関わっているようなんです」


「な、なんだって!」

「いや待て! それだと討伐後に死んだ話と矛盾するではないか!」


馬琴(まこと)は、召喚から討伐まで1年もなかったことから考えて困惑していた。


出産の事を考えると、召喚された直後に関係を持ち、討伐直前に出産することになる。

そうなれば、討伐時には女性は身ごもっていたことになり、戦える状態ではない。

だが、討伐に参加していないことはあり得ない。


ヘイガルは眉をひそめる。


「じゃ、討伐し終わった後、女性は生き延びて出産したとしか考えられないじゃないか!」


しかし、暗殺部隊が生き延びた彼らを見落とすわけがない。


ロザリナは複雑な顔をする。


「つまり、暗殺の任務を失敗している可能性もある……のかしら?」


ルティーナも言葉を詰まらせる。


「こればっかりは、想像の域を超えちゃうね……」


(しかし、やつはリーナを血を使って、何かをしようとしていたんだろう?)


その話を聞いたノキア王は動揺が隠せない。

祖父と名乗る勇者が存在していることに、自分の聞いていた話の根底が崩れてしまうのであった。


だが、ヘイガルは納得できなかった。


「……そんな偉業で世界を救った出来事、後世に残りそうじゃないですか?」


馬琴(まこと)は気づく――。


「そうか! その事実を隠すために暗殺部隊が結成された……」


ルティーナは、馬琴(まこと)の声がそのまま口に出てしまう。


「!」


それを聞いたノキア王は、暗殺部隊が結成された時期も重なることと、昨今の隣国との戦力情勢を考えると勇者が生きていたら都合が悪かった可能性を示唆した。


(もしかしたら勇者は抹殺された……)


「(そんな! でも、生き延びていたからリーナを」


(生き延びて復讐をしようとしているための組織なのか?)


ロザリナは誘拐された時、その男には直接は会ったわけでない。

洗脳された男の声から間接的に声をかけられただけ――つまり、本人かどうかまでは自信がないと曇らせた。


ハーレイは考え込むように呟いた。


「だが、生存していたとしても百歳前後ってことになるぞ……」


さすがに百歳を超えて生きているとは考えにくい。

ならば、勇者を名乗る別の存在なのかもしれない。


「とはいえ、ロザリナちゃんが勇者の血を引いていることまで疑う必要はねぇ」

「その魔力量、そして高度な光魔法が使えるのが納得できたぜ」


サーミャはふとハーレイに問う。


「なぁ親父、『ダーク・マニピュレート――洗脳――』ってさ、操った人間を爆破ってできるのか?」


「はぁサーミャちゃん、怖いこと言うなよ……そんな事できるわけねぇだろ?」


(スレイナやリーナのお父さんは爆死させられたんだよね?)

(洗脳とはまた違う魔法を使っていたのか?)


ハーレイは腕を組む。


「やはり、ただの人間がそんな魔法は使えない……俺の知らない未知の魔法か」

「そうなると、闇魔法使いの重剣士が一番怪しくなってくるねぇ」


そんな中、窓から日差しが差し込んで来る。


「おぉ、もう朝か……これ以上の情報はないが重要な情報交換の場だった」

「ありがとうルナリカ」

「後日、ダブリスにも他国にある過去の記録を調べさせよう」


(それが本来の暗殺部隊の使いかただったんだ……太平(たいへい)


ノキア王はふと思い出したようにつぶやく。


「結局、タイヘイが探していた、もう一人の勇者……トモミという女性はどこにいるのだろうか?」


(ルナ、この期に言っておくべきだな……)


ルティーナは一度エリアルへ視線を向ける。


「この場だけの話にしてください……エルの中にそれぞれ存在しています」

「そして、魔法の剣の力になっているんです」


「「「!」」」


それを聞いたハーレイは、ルティーナが朝時(あさとき)の水晶を必死に触れさせないようにしていた理由が理解できた。


「私の場合は、マコトという召喚された人が意識の中にいて、私に能力を与えてくれてます」


ハーレイは静かに息を漏らす。


「それが、勇者の力……分類できない職業の正体か」

「――と言うことは、エリアルちゃんには?」


「そうです」

「トモミさんは最初は剣に乗り移っていたようなんですが、今は僕の中に居るようなのです」

「しかし、意識はないようなのですが、剣に魔法を……たぶん、ルナと同じ能力を展開してくれるんです」


その話を聞いたノキア王は、ルティーナを誘拐した理由に納得がいった。

そして、朝時(あさとき)とは違い、馬琴(まこと)誉美(ともみ)が協力的な勇者であったことに安心をするのであった。


「勇者達よ、聞こえていると思うが、これからも彼女達を見守ってくれ」


(もちろんだ)


「とりあえず、『碧き閃光』の皆さんも何かしら気付いていらっしゃるので、ちゃんと説明させていただきます」


「そうか、あいつらか」

「いろいろ言い訳が大変だろうから、極秘ということで、正直に皆に伝えることを許可する」

「あと、今後、この件を話が広がるような事態が発生した場合は、私に相談してくれると助かる」


そう聞いたルティーナは、ノキア王に頭を下げる。


「わかりました」

「そう言ってもらえると助かります」



「それではまた一週間後、この場に集まり、それぞれ調べたことを報告し合おうではないか」


「「「「「わかりました」」」」」




会議が終わり王城を後にする頃には、皆の眠気が吹き飛ぶ程の青空が広がる清々しい朝になっていた。

ルティーナ達はとりあえずアンハルト達に今回、世話になったお礼と、今朝の王との会話の内容、そして自分たちの秘密を説明するために『碧き閃光』へ向かおうとしていた。


しかし、サーミャだけは足を止めた。


「ルナ、先に行っといてくれないか?」


「?」


(親子で話したいんじゃないかな?)


「んじゃ、あとでね」

「今回は助けてくれて『ありがとう』」


「気にすんな……」

「(違う……これからだ。おまえの役に立てるのは……)」


サーミャはハーレイの元へ走る。


「おや、サーミャちゃん? みんなと帰らないのかい?」

「さては、お父様が恋しく――」


「んな訳ねぇ~よっ」

「例の話だ!」

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