第159話 勇者召喚
朝時が最後の逆転手段として乗っ取ったフェンガは、彼の自決によって完全に失敗に終わった。
そんなフェンガの遺体を見つめ、考えさせられるルティーナ達。
「(ねぇマコト、タイヘイも道連れにされて死んだってこと?)」
(フェンガの躯の中に閉じ込められてるんだからな……そうなるんだろな)
ノキア王はダブリスにフェンガの遺体を氷葬し地下十階にある特設墓地へ運ぶように指示する。
そこへサーミャが名乗りを上げる。
「なぁ、あんた氷魔法は苦手なんだろ?」
「よく知ってるな……そうかハーレイ様から聞いたのか? 闇魔法使いの適任者の特性を」
「氷葬をあたいにさせてくれよ……せめて、それぐらいでもさせてくれねぇか?」
「ありがとう」
そしてサーミャが魔法を使う中、ノキア王は朝時が集めた水晶全てを宝物庫にしまうようにダブリスに追加で指示をするのだった。
「(これがあれば、勇者マコトが再び世に出る繋がりになるかもしれぬからな)」
「さぁ、みんな移動しようか?」
エリアルとロザリナはノキア王、サーミャはハーレイにそれぞれ肩を貸しながら、ルティーナと共に、地下二階で待機していた魔法師団と合流し、そのまま地上へ向かった。
一方、地上にいる近衛師団達は、消えたサーミャを探し大騒ぎをしていた。
ドゴーンッ!
「「「「「!」」」」」
塞いでいた地下入口の扉が壊され、中からノキア王と全員が顔を出す。
「! ノ、ノキア王っ、何故ここにっ!」
「さ、サーミャ! なぜ中からっ!」
ヘイガルは魔法師団も一緒にいる状況を理解し、近衛兵を黙らせる。
「落ち着けっ! もう事は終わったんだっ」
「「「「「……」」」」」
「よっ、ヘイガル様」
「よっ、おっちゃん」
ヘイガルは頭を掻きながら答える。
「ハーレイ……それにサーミャ、仲直りは出来たみてぇだな?」
「(まったく、世話を焼かせやがって)」
「そうなんだよヘイ――」
「――違げぇよ! 目が見えねぇっつうから! そんなじゃ……」
ヘイガルは笑いだす。
「っつうか、ハーレイ? おめぇ目見えてんだろ?」
「サーミャ、俺との闘いで何も学んでなかったのか?」
「――あ、その……ヘイガルてめぇ余計な事をっ」
サーミャの顔色が変わる。
「あん? 見えてるだとぉ?」
そんな中、ノキア王は渇を入れる。
「気持ちは分かるが茶番劇はあとにしろ、ハーレイ、ヘイガルっ!」
「「ちゃ、茶番って……」」
ノキア王は、その場で直々に事の顛末を全員に説明を始めるのであった。
しかし、語られる内容に全員想像が追いつかずに、困惑していた。
ヘイガルは一連の『零の運命』が起こした騒動を理解した。
「――本当だったんだな」
「それでサーミャ達は謀反を承知で突入して来たってことか」
「そうじゃ、こうして『零の運命』達が大騒ぎを起こしてくれなかったら、余は一生、悪しき物に操られ皆に迷惑をかけつづけたであろう」
そしてノキア王は、ルティーナ達を見つめ頭を深々と下げた。
「今回の活躍、本当にありがとう」
ルティーナは恥ずかしそうに、ノキア王に頭を上げるように声をかけた。
「ありがとうございます」
「それよりシャル――レシカを解放してもらってもよろしいですか?」
ヘイガルは近衛兵に指示しシャルレシカの拘束を解かせる。
「はっ」
そして、屈託のない笑顔で寝ていたシャルレシカは目を覚ました。
「むにゅ? あぁルナぁ~っ! 無事だったんですねぇ」
「うん」
「シャルもがんばったんだね。ありがとう」
そんな様子を微笑ましく見つめるノキア王だった。
「ところでルナリカや、お前たちに話しておきたい事がある――」
(あの話か?)
ノキア王は近衛師団と魔法師団に城内の片付けをまかせ、『零の運命』の面々とハーレイとヘイガルを連れ、王室へ移動を始めた。
その移動中――。
ヘイガルはサーミャに問う。
「それよりサーミャ、あれは闇魔法を使ったフリ……でも姿を消したよな?」
ハーレイも食い付くように話に割り込む。
「まさかそれと俺の前に突然、姿を現したことと関係があるのか?」
サーミャは慌てふためく。
「げっ! てめぇ、治療してやったことでチャラにしろっつっただろ!」
「(ルナどうしよ)」
「そ、そうだねぇ……」
(年貢の納め時かな……この二人なら話してもいいかもな)
そして王室に到着し、早速、ノキア王から『勇者召喚』の話を聞かされることになる。
ノキア王は深々と椅子に腰をかけ、大きく深呼吸をする。
「余が知っている、タイヘイから流れ込んだ記憶と知っている過去の話をさせてもらおう」
「……まずは八年前に何があったかから話したほうがよさそうだな」
ノキア王は、八年前に秘密裏に『勇者召喚』を行っていた理由、そして、当日の謎の爆破により妨害され、自分を除いて全員が死亡してしまったことを説明した。
「その時にタイヘイに体を……完全に奪われてしまったようなのだ」
ルティーナは不思議そうに朝時が誉美の存在を知っていたかを問う。
「『サモナー・ストーン――召喚水晶――』に男と女の姿が映っていた……そしてぼんやりともう1人いるかどうか確認しようとした瞬間、爆発に飲み込まれたんだ」
そして乗っ取られた後、朝時が自分の記憶の中から、その水晶に一瞬だけ映った男性は本人であり、女性が誉美だったことに興奮していたのを覚えているという。
「ちらばった水晶の回収とこのことを知る人間の隠蔽の為に、暗殺部隊へ様々な指示を出していたのだ」
「全てはトモミという女性を手に入れる為だけに……」
エリアルは自分の中に意識のないトモミが居ることに複雑な気分になった。
「ところで、なんで爆破事件が起こったんでしょう?」
「タイヘイは、犯人は調べなかったのでしょうか?」
「そうだな結局、タイヘイが調査を放棄してしまったからな」
「結局、わからずじまいだが、奴は感謝していたことを覚えておる」
「そうなんですね」
ルティーナも質問を始める。
「そういえば、その隠蔽にはドグルスも関わっていましたよね?」
「ドグルスの事を知っているのか?」
「私たちと戦って、自分の罠にかかり死にました」
「国を裏切り、他の組織に属していたようですが」
ダブリスは答える。
「そうです」
「やつは我々が知らないうちに『勇者』と名乗る組織に肩入れし、たまに情報を持ち帰ってきていました」
「うむ、タイヘイもそやつから色々と召喚水晶について情報を持ち帰っておった」
「それで、水晶の破片を集めることになったのですか?」
「そうだな……それがないとトモミは救えないと判断したようだ」
「それだけではない!」
「?」
水晶探しとは別に、誉美が誰かに自分みたいに取り付いている可能性を示唆し、二年前から『武闘会』を開催したのだと。
「おいおい、あたいらまんまと引っかかっちまったってことか?」
(いやいや、拠点欲しさに俺達を巻き込んだのはサーミャだよね?)
一番、目を伏せていたのはエリアルだった。
「僕は……引っかかったってことになるのかなぁ? しかも二年連続で……」
「「あっ……」」
(たしかに大会で、あれだけ漢字を披露してしまったから、そりゃ間違うか……)
「それで、私にトモミさんが乗り移っていると勘違いして……リーナの誘拐騒ぎに便乗したってことなのね」
(あの食事会の時、ルナに目を向けるあまり、エリアルの魔剣が誉美の力だと気づけなかったんだな……)
「なぁ、ハーレイ……タイヘイがどうとか勇者がどうとか? 俺、全くついていけないんだが……」
「「「「「あ」」」」」
ルティーナ達はヘイガルにことの発端からかいつまんで要所だけを説明し半ば強引に納得させた。
「あ、ありがとう……なんとなくわかったような……」
「(しかし、一体こいつらなんなんだ?)」
話がいったん落ち着いたところで、ノキア王は、自分が先代の王からおとぎ話のように聞かされていた話と、実際ヘルアドからも聞いた話を織り交ぜて整理した内容を語ることにした。
約八十年前、この世界を滅ぼす厄災が現れると言われた一年前の話。
当時のノモナーガ国王が三人の勇者を召喚したことから始まる。
その三人は――。
(第漆章 「無明長夜」編 完)




