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見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました ~異世界召喚失敗!? 少女の中に宿った勇者の冒険譚~  作者: うにかいな
第漆章 ~無明長夜《むみょうちょうや》~

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第150話 親子喧嘩

ロザリナとエリアル

挿絵(By みてみん)

エリアル達がハーレイと共に地下三階へ向かっていた時、突然――。

三人を挟むように、左右の天井が崩れ始める。


「リーナっ、危ない!」


エリアルはロザリナを前に突き飛ばした。

しかし、眼前に瓦礫が迫る。


「し、しまった――」


ロザリナは間一髪、瓦礫の向こう側へ逃れ、幸い大事には至らなかった。


「え、エルっ! ハーレイさんっ!」


崩れた瓦礫に遮られ、向こうの様子はまったく見えない。

そんな中――エリアルの声が聞こえる。


「り、リーナ……無事ですか?」


「うん、エルのおかげ」


「良かった……僕達の事はいいから先に行ってください」


ロザリナも先へ進むべきだと理解していた。

それでも足は動かなかった。

エリアルの声はするがハーレイの声が聞こえないことに疑問を感じていた。


「もしかして、怪我してませんか?」


「……だ、大丈夫だから!」


「だって!」


ロザリナは二人が心配で先に進めない。


そんな中、ヘレンからねずみを経由して連絡が入る。


「お姉ちゃん! 聞こえる?」


「ど、どうしたのヘレン!」


「急いで! ルナリカの服が脱がされちゃう!」


その知らせを聞いた瞬間、ロザリナの中で怒りが爆発した。


「くそ、変態王めっ!」

「ごめん、エル! 私、行ってくる!」


「頼んだぞ……(ありがとう、ヘレン……)」


そしてロザリナはその場を後にし、地下三階への階段へ走り出す。




「くそっ、ロザリナは無事か……だが、ハーレイとエリアルは閉じ込めた」


爆破により天井を崩したのは、『ダーク・インビジブル』で姿を消していたフェンガだった。

ダブリスの命令を受けノキア王へ報告したが、予想外の展開に判断を迷っていた。



「――首尾はどうだ? フェンガ」


そこへ、ダブリスが姿を現した。


「いい所へ……ノキア王からは妨害を優先しろとの命令です」


フェンガは今の状況をダブリスに説明する。


「なら隠し通路から地下四階に直接降りて、三階から降りてくるロザリナを妨害する」


「わかりました」




一方、瓦礫に閉じ込められたエリアルとハーレイは――。


「――レイ様、ハーレイ様、大丈夫ですか!」

「僕を庇って……」


「き、気にすんな……嫁入り前に傷物にはできんだろ?」


エリアルは瓦礫の下敷きになる前に、ハーレイが覆いかぶさっていたのであった。


「そんな……」


「つか……『様』はやめてくれねぇか? 呼び捨てでいいっ」


「(なんだろ……ミヤと居るのと変わらない気分だ)」

「すみません」


「しっかし、誰だ……こんな事をしやがって!」

「(エリアルちゃんが言っていた闇魔法使いか……姿を隠す魔法でも使ったのか?)」



反対側の瓦礫の向こうからシーゲルが叫ぶ。


「ハーレイ様~っ」


「無事だ! 騒ぐなっ」


ハーレイはシーゲルへ状況を伝え、瓦礫除去を命じた。

だが、土魔法を使える隊員は爆発で負傷していた。


「そんな馬鹿なことがあるか!」

「(くそっ……してやられた)」


やむなく動ける者で瓦礫を除去するように指示を出し直す。



「すまねぇなエリアルちゃん……疑って――」


「いいんですよ、わかってもらえたら……」

「でも、土魔法ならハーレイさんが向こう側に穴をあければ?」


「いやぁ~、暗闇だと方向がわからねぇんだわ」


「……?」


エリアルは違和感を覚えた。

天井が崩れ灯りは失われていたが、この暗さなら方向くらいは判断できる。


「……見えないですか――こ、これは血?」


エリアルはハーレイの体に流れる生暖かい何かに気付く。


「怪我をしてるじゃないですか!」


「……バレちまったか」


ハーレイは爆発で飛散した瓦礫が頭部を直撃し、一時的に失明していた。



――その瞬間、エリアルの前に黒い空間が現れ、サーミャが飛び出してくるのであった。



「あっ? エルすま――」

「く、暗っ! 何処だよっ。状況はっ……」


「ん? そ、その声はバカ娘かっ!」


「えっ、まさかそこに居るのは……お、親父っ?」


「それはこっちの台詞だっ!」

「こっちは瓦礫で閉じ込められてるはずだぞっ! どっから湧いて出たっ?」


「(やべっ転移魔法が……こいつにだけは知られちゃいけねぇ)」

「あぁ~うるせぇうるせぇ! 人を虫みたいに言いやがって」

「エル、そいつ、ぶん殴って気絶させておいてく――」


そんな二人の会話に呆れるエリアルは、サーミャを叱る。


「ミヤっ、ハーレイさんは僕を庇って頭を強打しているんだ!」

「一刻も早く治療しないと」


サーミャは、小さな『フレイム・インボルブ――火炎包囲――』を放ち空間に灯りをともす。


「なっ……酷でぇじゃねぇか」


「だから、親子喧嘩してる場合じゃないんだっ」


「サーミャちゃん怒られてやんの」


「ハーレイさんっ!」

「あなた大怪我しているんすよ! 横になっててください」


「す、すまねぇ」


エリアルは二人を仲裁した上で、サーミャに今の現況を説明した。


「そうか、リーナは一人で向かったのか……」


「ミヤ、あの魔法の事、隠している場合じゃないです!」


「そうじゃねぇよエル」


しかしサーミャには懸念があった。

もともとロザリナでなくエリアルを転移先に選んだ理由――。



 私の覚えた魔法とミヤじゃ相性が悪いものね……



ロザリナは黒魔法使い対策で、『シャイン・キャンセラー』で魔法を打ち消している可能性があったからだ。



「(くそ……リーナでないとクソ親父の治療が――いや待てよ!)」


サーミャは、『ヒーリング・ストーン』をハーレイの治療の用途に使うことを決める。


「『キュア・ヒール』っ」


するとハーレイは光に包まれ、後頭部の出血が収まり痛みが消えていく。


「なっ、サーミャちゃんが……治癒魔法? お前」


「んなわけねぇだろ? 攻撃魔法しか才能がねぇって言ったのはあんただろ」

「これは治癒できる石さ」


「そ、そうなのか……ありがとう……」


「背中がかゆくなるからやめろよ」

「だから、どうやって、ここに来たかは詮索すんなよっ!」


ハーレイは何か言いたそうに口を開いた。


「治療はその代わりだ! いいな!」


「サーミャちゃんは昔っから照れ屋さんだなぁ……そう言うことにしといてやるよ」


「ぷっ」


エリアルは二人のぎこちない光景に笑いがこぼれる。


「なんだよっエルっ」


「いいや、親子だなぁと思ってね」


「うるせぇ、こんな奴でも放置して死なれたら後味が悪いだろ」


「そうですね」

「一緒に着いてきてもらって証人になってもらわないといけないですからね」


ハーレイは頭を掻きながら、二人に謝る。


「ぼやっと見えるようにはなってきたんだが、目がまだ前がはっきり見えない」


「使えねぇ親父だな」


通路の方向を確認し、『アース・エンベッド――融解――』で土砂を溶かそうとした。


「待て! サーミャちゃん!」


「? なんだよ、クソ親父」


そのまま使うと、この老城の城壁とさらに崩れそうな天井が危険だと指摘し、周りを氷魔法で固めながら行うことを指示した。


「……あんたのいう事にも一理あるな」


「ミヤ、意地張っていないで協力しましょう」


「……」


ハーレイはエリアルに肩を貸してもらい、『フリーズ・ゲージ――凍結――』を誘導してもらいながら放ち、天井と壁を凍らせる。

その隙にサーミャは瓦礫を溶かし、三人は無事に外に出ることができた。


「リーナに追いつくぞっ」


そしてサーミャは目線を逸らしながらハーレイの脇下から手を回し肩を貸す。


「まったく、しかたねぇな親子喧嘩はこの件が終わるまで――」


「まだ怒ってんのか? わかったよ一時休戦だな」


「(なんだかんだ、いい親子じゃないか)」



そして、三人はロザリナの後を追いかける。


その頃、ロザリナは地下四階の階段に差しかかろうとしていた。


「ヘレン、ネズミとの通信、あの魔法使うから切るわよ」


「うん……ルナリカが目を覚まして、服を脱がされるのを阻止したわ」


「それが聞けただけで安心したわ! ありがとね」


そしてロザリナは『シャイン・キャンセラー――魔法遮断――』の詠唱を始めた。


ロザリナは移動中、常に周囲の距離を感覚で測っていた。


そして魔法の効果範囲を設定する。


「私を中心に半径二十メートル、効果時間を三十分!」

「『シャイン・キャンセラー』っ」


すると魔法がロザリナを軸に展開された。


「思ったより魔力を持っていかれちゃったわね……」

「もう少しだけ待っててね、ルナ」



――ダブリス達がそこまで迫っていることも知らずに。


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