第15話 武器作リ
ギルドを出た二人が向かう先――武器屋である。
(その前に聞くけど、この街に武器屋あるよな?)
ルティーナは即答する。
「(あるわよ。お父さんの特注の剣を作ったって店が、この街にあるはず)」
一拍。
「(……場所は、知らないけど)」
(……)
「(しょうがないじゃない! 十五年前の記憶よ)」
言い合いになりかけた、その時――。
「ねぇ、ルナぁ~」
シャルレシカが、すっと指を差した。
「あそこじゃないですかぁ~?」
視線の先――
確かに、それらしき店がある。
「(……え?)」
(この会話、聞こえてないよな?)
「(まさか……)」
ルティーナは、ぞくりと背筋が震えた。
(この子……たまに怖いな)
二人はそのまま店へ入る。
中には、無骨な男が一人。
「いらっしゃい。何か用か?」
「すみません」
「『しゅりけん』って武器、置いてますか?」
「……はぁ?」
店主の動きが止まる。
「しゅり……なんだぁ? そんな剣、聞いたことねぇぞ」
「そこの姉ちゃん、この子の保護者だろ? 「ここは遊び場じゃな――」
(……あ、それダメなやつ)
「お・じ・さ・ん」
ルティーナが、にこりと笑う。
「シャルは、私より年下なんですけどぉ」
「それと――私は『武器』が有無を質問しているんですがぁ?」
「……」
店主、完全に沈黙。
ルティーナは紙を取り出し、馬琴の指示通りの絵を描く。
手裏剣。
クナイ。
「こういう形をした武器なんですけど」
「……見たことねぇな」
だが、少し考え込んだ後。
「鍛冶屋なら作れるかもしれん」
「タリスのとこ行ってみな」
紹介された鍛冶屋へ向かう道すがら。
「(で、これが『しゅりけん』と『くない』?)」
(ああ、ちゃんとした武器だよ)
(前に木の板に文字書いて投げてただろ? あれの進化版だ)
「(……ああ、あれね)」
「(投げにくかったわ、確かに)」)
(これは軽いし、投げやすい)
(飛距離も出るし、そのまま刃物んとして殺傷力になる)
「(なるほど……)」
(ルナの体格と俺の『力』まら、この武器が一番いいと思ったわけ)
「あのぉ~ルナぁ?」
シャルが顔を覗き込む。
「さっきから、ぼ~っとしてませんかぁ?」
「あ、あはは……ごめん」
「(げっ、マコトと会話していると、外からは変に見えちゃうんだ……気を付けないと)」
「それより――あれじゃないですかぁ? 鍛冶屋さん」
(この子……地図をまだ見せてないよな?)
(天然なのか有能なのか分からん……)
店に入った瞬間。
鍛冶屋の店主――タリスは、絵を見て目を細めた。
「……面白いじゃねぇか」
口元が吊り上がる。
「試しに作ってやるよ」
馬琴の指示でサイズを注文する。
手裏剣――全長約十センチ。
クナイも――同じく手に収まるサイズ。
「試作なら二時間ってとこだな」
「見てくかい?」
「ぜひ」
炉の火が上がる。
鉄が赤く染まり、打たれるたびに理想の形へ変わっていく。
「(すご……)」
(絵と説明だけで、ここまで再現できるのか……)
そして――二時間後。
「できたぞ」
差し出されたそれは――ほぼ理想通り。
「……すごい」
思わず漏れる本音。
「で、こんなのどうやって使うんだ?」
タリスが興味津々で聞いてきた。
「試せる場所は、ありますか?」
「裏に広場があるぜ」
広場。
そこにある木株を的に、ルティーナは構える。
(投げ方は――)
「えいっ」
――ヒュンッ!
手裏剣が空気を裂く。
綺麗な回転をしながら飛び――
ドスッ!
見事に命中。
続けてクナイ。
一直線に飛び、同じく突き刺さる。
「手裏剣は回転して切り裂く武器です」
「クナイは狙い重視――それに、こう持てば短剣にもなります」
「……お嬢ちゃん、天才か?」
タリスの目が完全に変わった。
「これ、売れるぞ」
「商品化しねぇか?」
「えっ?」
突然の話に戸惑うルティーナ。
(ここは乗っとけ)
(そうだな、利益の一割を、著作権で要求しよう)
「(……え、商売?)」
「じゃ、じゃあ……売上の一割をもらえますか?」
「それでいいのかい? 文句なしだ!」
即決だった。
こうして、思わぬ形で契約が成立する。
――この時はまだ、誰も知らない。
数ヶ月後、この武器が爆発的に広まることを。
話はさらに契約の話は進む。
製造と販売はギルド経由でと契約。
ルティーナには『著作権料』として売上の一割が入る――という条件で書類が作成された。
細かい手続きはタリスに一任された。。
手付金として金貨五枚。
さらに二日後には――
完成した『手裏剣』と『クナイ』各二十本を無償提供。
「ルナリカ、あとは任せときな」
「はい、タリスさん。よろしくお願いします」
店を出た瞬間。
ルティーナは、ぐっと拳を握った。
「(……やった)」
「(武器も、お金も手に入った……!)」
ついさっきまで、ギルドで落ち込んでいたのが嘘だったかのように。
(こういう交渉は任せなさい……ってね)
「(ねぇ……シャル、ちょっと様子がおかしくない?)」
ふと見ると。
シャルレシカが、ふらりと揺れる。
「シャル、ごめんね。付き合ってもらってばかりで……疲れちゃ――」
「お腹が……ペコペコでぇ……でも……眠くてぇ……」
「(どっちなのよ!)」
(どっちだよ!)
「と、とにかくカルラちゃんのところに行くわよ!」
やがて見えてきた宿。
すると――
「ルナお姉ちゃーーん!」
カルラが全力で手を振っていた。
その声に反応して、両親も飛び出してくる。
「本日は娘の命を助けていただいき……感謝しきれません――」
なぜかシャルレシカの手を握って、深々と頭を下げる両親。
「あ、あのぉ……」
「違うよ! お父さんっ! 助けてくれたのは、こっち!」
「ルナお姉ちゃんなのぉ!」
あわてふためく両親――。
「えっ!? そ、そうでしたか! ごめんなさい! 大変失礼しました……」
何度も何度も、深々と頭を下げられ、ルティーナは少し照れながらも口を開いた。
「えっと……突然で大変申し訳ないんですが」
「しばらく泊めてもらえたり……」
「もちろんです!」
即答。
「むしろ、好きなだけ泊まって、いや、住んでください!」
「宿代も食事代も要りません!」
「い、いえいえ! それは……」
さすがに、それは断れと馬琴に諭される。
最終的に――
格安料金+食事付き。
これで拠点を確保することに成功した。
全てが順調に物事が進む。
だが――。
『職業無し』
その現実は、確実にルティーナの足をひくことになる。




