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見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました  作者: うにかいな
第弐章 ~仕事探シ~

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第14話 無能扱イ

レミーナ=オズール:ギルド受付嬢

挿絵(By みてみん)

カルラ=フレンス:ノスガルドの宿屋の娘

挿絵(By みてみん)

老人――オリハーデは、シャルレシカの資質を一目で見抜いていた。


後に知ることになるが、この男、オリハーデ=メルトラッハはギルド専属の鑑定士。

冒険者の適性判定のみならず、持ち込まれた品の価値や呪いの有無まで見抜く存在。


大陸でも数えるほどしかいない――希少な人材である。


知識があるものならば、すべてを見抜く。

そんな異能を持つ老人だった。


「さて……次はルナリカ=リターナちゃんじゃな」


「(『ちゃん』って……やっぱり舐められてる)」


(まぁいいじゃん。ちょっと楽しみじゃない?)


(当然よ。むしろ――)

(この水晶、爆発でもしたらウケるよね)


(やめろっ! トラブルな未来しか見えん)





ルティーナは軽く肩を回し、両手を水晶へと添えた。


――数秒。


左の水晶が、じわりと緑に染まる。


(お、来た……?)


だが。

その色は、すぐに薄れていった。

――それ以上、濃くなることもなく。


そして右の水晶は――


無反応。




「…………」


(……え?)



室内に、静寂が落ちた。

オリハーデは一瞬だけ目を細め、言葉を選ぶ。


そして。


「……正直に言おう」


ゆっくりと、告げた。


「君には資質がない……」


「――は?」


「その緑色はな、かろうじて『剣』への適性の兆しじゃが……」

「あまりにも薄い。実戦で通用するレベルではない」

「さらに魔力は……一切、感じられん」


淡々とした宣告。


「これでは、『職業登録』は難しいのう――」



「……はっ?」


一拍。

そして――


「はぁぁぁぁぁぁっ!?」


爆発した。


「ちょっと待てぇぇぇぇ!! くそじじぃ!!」

「ヤブか!? ヤブ鑑定士なのか!?」

「私の実力も知らないで、何言ってんのよぉ!!」


「……く、くそじじぃとはまた……」


(あーぁ、言っちゃった)


馬琴は天井を仰いだ。


「ルナぁ~落ち着いてくださいぃ~!」

「おじいさん、本当に何もないんですかぁ~? ルナは凄く強いんですよぉ~!」


「じゃがな、ワシの鑑定に誤りはない」


オリハーデはきっぱりと言い切る。


「何が凄いのか……ワシには、まったく分からんよ」


「うるさい! うるさいっ! もう一回だ!」

「今度は爆発させてやるから!」


バン、と机を叩く音が響いた。


「しつこいっ!! 爆発なんて物騒な!」

「今の状況で何度やっても、結果は同じじゃ!」

「これ以上騒ぐなら、『冒険者』の登録そのものを取り消すぞ!」


「……っ」


その一言で、ルティーナは凍りついた。




(……落ち着け、ルナ)


馬琴の声は、やけに冷静だった。


(俺の『力』って、単純に『鑑定できない』だけなんじゃないか?)


「(……え?)」


(そもそも、この世界には存在しないんだろ? こんな『力』)

(だから判断できない。それだけの話だ)


「(た……確かに)」

「(魔法でもないし、説明もつかないし……)」


(それに)

(あの爺さん、『冒険者になれない』とは言ってないんだぞ)


「(……あ)」


(『職業登録ができない』と言っているんだ)


「(つまり――)」


(冒険者には、なれる)




ルティーナははっと顔を上げた。

そして、深く頭を下げる。


「本当に……ごめんなさい」

「話を理解せず、失礼なこと言いました」


先ほどまでとは別人のような態度だった。

オリハーデは一瞬驚いたあと、ふっと目を細めた。


「……よいよい。気持ちは分かるさね」


書類を手に取り、手続きを始める。


「ただし、覚えておきなさい」

「職業が無いということは――依頼の選考で不利になる」

「依頼主は『分かりやすい強さ』を好むからの」


「……はい」


「まぁ、困ったことがあれば、いつでも来なさい」


その目は、まるで孫を見るように優しかった。



こうして鑑定は終わり、二人は部屋を後にする。


その背中を見送りながら、オリハーデはぽつりと呟いた。


「……あの若さで、なぜ冒険者に……」



――数時間後。


レミーナから、『十九歳』だと聞かされた彼は、軽く寿命を縮めることになる。





受付へ戻ると、書類を確認した受付嬢が固まった。


「(え……職業、なし……?)」

「(あの怪力少女が?――オリハーデさんに確認しなきゃ……)」


「……あの、お姉さん……どうかしました?」


「え? 何でもないないですよぉ~」


「『職業なし』ってとか思ってたでしょ?」


「え、いや、その……」

「(この子、鋭い……)」

「す、すぐ証明書を発行するから、少し待ってね!」



「(これで私も冒険者かぁ~)」


(よかったな)


「(……でさ~登録終わったら、さっきの『肉団子』をもう一度シメない?)」


(『肉の塊』でしょ? さっきのオリハーデさんの件もあるけど……)

(お嬢様は、まずは人として成長しましょうか?)


「(うっ……そこでお嬢様と言わないで)」」





ギルドにおける冒険者には、明確な階級がある。


 最下位は白――新人。


 そこから銅、銀へと昇格していく。

 銀ともなれば一人前。

 

 さらに上が金。

 単独で任務をこなす実力者であり、王国に引き抜かれることもある

 ――バルストがいた領域だ。


 そして、その上。

 白金。

 大陸にわずか七人しか存在しない、別格の存在である。


 依頼の受注には条件がついている。

 「銀以上が一人以上」「魔法使いは必須」など。

 単独で満たせれば受注できる。

 満たしていなくてもパーティを組み、誰かが満たしていれば受注できる。




「……」


「どぉしたんですかぁ~? ルナぁ~」


隣でシャルが首をかしげる。


「……シャルはいいわよね」


ルティーナは自分の証を睨む。


「いきなり『銀の冒険者』様なんだから」


ルティーナは、自分の冒険者証を睨みつけた。


「私は白よ、白! 純白っ!」

「しかも職業……『なし』っ!」


(まぁまぁ……)


だが、その苛立ちは簡単には収まらない。


そんな中。


(なぁルナ、ちょっといいか?)


馬琴(まこと)が切り出した。


(この『力』――ちゃんと攻撃に使える『武器』を用意しないか?)


「(武器?)」



それは――

馬琴(まこと)が前回のデフルウ戦をふまえ、考えた戦い方。

ルティーナの為の『切り札』だった。


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