第147話 近衛師団
ルティーナがノキア王に迫られる中、サーミャ達は城の裏側に到着していた。
「シャル、こっちが手薄なんだな?」
「はぃ~」
シャルレシカに城内の人員配置を確認させた上で、城壁を土魔法で崩し無理やり潜入する。
「よし、地面に風穴を開けて地下へ続く穴を掘る」
「リーナとエルはそこから地下へ潜入しろ!」
「あたい達は王城の正式な地下入口を押さえる――」
そこへシャルレシカが慌てて割り込む。
「ねぇミヤぁ、こっちに向かってくる凄い力が2つぅ……ありますぅ~っ」
「ちっ、もう気付かれたか!」
「それって、この国に存在する剣士と魔法使いの白金級の師団長の2人ですよね?」
「剣士の方は、ヘイガル=マクウェイ」
「魔法使い野郎は、ハーレイ…………」
サーミャが言葉に詰まる。
「どうしたんですか? ミヤ……顔色が」
「……ハーレイ=キャスティル」
「ちょっと? キャスティル……ってまさか」
「あぁ、あたいのクソ親父さ」
サーミャは七歳の時に母を亡くし、ハーレイと親子二人で王宮で暮らしていた。
ハーレイは攻撃五属性に加え、闇魔法も使える白金の魔法師団長として活躍しており、サーミャの事をあまりかまってやることはできなかった。
そして月日は流れ、十七歳になるとアンハルト率いる『碧き閃光』へ修行に出された。
その後、活躍が評価され白金の冒険者になる代わりに魔導師団への入団を言われたが、性格上、肩っ苦しいのが嫌だったサーミャはその提案を蹴り、ハーレイと大喧嘩になり勘当されていたのであった。
「(あのクソ親父、あたいが行方不明になってた事すら知らねぇんだろうな……)」
「ま、まさかミヤ、謀反みたいな啖呵切ったのは――」
「イスガ王にもだが、クソ親父にもってところだな」
「そんなことどうでもいい!」
「ルナが危ねぇ! 作戦通り二手に分かれるよ」
「「「うん」」」
そして、エリアルとロザリナはヘレンから預かったネズミを案内にルティーナの元へ向かうため、サーミャが空けた穴から地下に潜入を開始する。
そしてサーミャはその穴を塞ぎ、王城の地下入り口へシャルレシカを連れ移動する。
数分後、地下入口にて――。
「さぁて、こっちに集めてやるぜ!」
サーミャは注意を引くため、わざと目立つように城壁に特大の火魔法の呪文を放つのであった。
その音に慌てながら数人の警備兵が飛び出してくるのであった。
「「「何事だぁっ! 敵襲かぁっ~」」」
「えっ女二人? あれは……確か」
「(そうだそうだ! どんどん仲間をつれて来いっ)」
しかし集まってくる護衛団の様子がおかしい。
「あ、あれは!」
「「「「「俺たちの憧れ、おっぱ……いや『恵の妖精シャルレシカ』様じゃないかぁ!」」」」」
「はいぃぃ? 恵の妖精ぃ?」
シャルレシカは武闘大会の活躍で城内の護衛団の大人気冒険者になっていた。
「と……誰だっけ!?」
「おいっ! あたいの扱い雑だな!」
「あ、あいつ、髪型が変わってますが『黄金の狂犬サーミャ』ですよ!」
「ミヤぁ私ぃ~おっぱ――」
「シャルはいいだろ! あたいは、狂犬なんだぞ?」
サーミャは違う怒りでいっぱいになる。
「手加減してる暇はねぇ!」
「……制圧してやるつもりだったが屍にしてやるっ」
「『フィルス・フリーズ・ラ――』」
シャルレシカは怒るサーミャを制止し、自分の怒りをぶつける。
「どいてくださいぃ! 私を胸で覚えないでくださいぃっ~」
「すっ『ストーム・サイクロン』」
「まだですぅ!『ストーム・サイクロン』」
「もう一発ぅ!『ストーム・サイクロン』」
「「「「ぎゃぁ~っ!」」」」
シャルレシカは二十人近くの兵士を吹き飛ばし、息を荒くしていた。
「シャ……シャルさん?」
「はいぃ? 私、怒ってますよ」
「わ、わかってる」
逆に、サーミャの方が冷静になってしまう。
「ミヤぁ、こっちに一つの大きな力と二十人ほど強力な力が集まってますぅ」
「来たな、クソ親父!」
「さぁて、お膳立てはここまでだな、城を守る魔法使いの実力ってやつを見せてもら――?」
「ミヤぁ~、あれって剣士とか兵士ですよねぇ?」
「げっヘイガルのおっちゃんじゃねぇかっ」
「ど~なってんだ? シャル?」
「魔法使いが攻めて来たら、魔法使いで応戦すんだろ? 普通ぅ~」
「だってぇ、ハーレイさんてぇ、会ったことないから判断できないですよぉ~」
サーミャのあては完全に外れた。
一方その頃、地下へ潜ったロザリナ達にも――大きな力と二十人近くが別ルートから追走している状況だった。
「(やべっ、なんで地下にいることが……)」
「(このままじゃリーナ達んところに……親父が?)」
「(ヘイガルのおっちゃんか……アンハルトと同じ、魔力で強化する剣士)」
「よぉハーレイんとこの娘じゃねぇかっ」
「相変わらず、似合わねぇ武将髭だな、おっちゃん」
「うるせぇ」
「それより、お前ら何やってんだ? ハーレイが泣くぞ」
「理由なら教えてやるよ!」
「あんたらの王様に、大事な仲間がいかがわしいことされそうになってんだ!」
「(王様? ノキア王の事か?)何言ってんだ? いかがわしい?」
「まぁいい、それなら俺を倒したら勝手にしな」
ヘイガルはサーミャは自分が相手をすると伝え、残りはシャルレシカを捕縛するように指示をした。
「お前ら? 殺すなよっ!」
「え、いいんですか? ヘイガル様!」
「? あぁ、まかせたぜ」
「「「「俺が捕まえるっ」」」」
近衛兵は目を輝かせ、競い合うようにシャルレシカへ飛びかかっていく。
それを遠い目で見つめるサーミャ。
「この城には変態しか居ねぇのかよ……」
「さぁ~てサーミャ、武闘会の時は自称大魔法使い様って啖呵きってたよな?」
「ちゃっかり負けやがって……観覧席でハーレイが腹抱えてたぞ」
「あの、クソ親父」
サーミャは会話の途中で、注意をそらしつつ『ライトニング・アロー――雷の矢――』を瞬時に放つ。
「なんだよ、やる気満々じゃねぇか」
ヘイガルも一瞬の出来事に反応できなかったが、そのまま雷撃の矢を鎧にくらいながらも剣を向けて突進してくるのであった。
「げっ、その鎧は雷をはじくのかよっ!」
サーミャは連続で『フレイム・インボルブ――火炎包囲――』を放ち、ヘイガルの周りを炎の玉で取り囲む。
「この程度――」
ヘイガルは全ての炎が攻撃態勢に入る前に、高速で剣を放ち正確に発生場所を破壊するのであった。
そしてその流れで、唖然とするサーミャに向かって剣が突きつけられる。
「甘いぜ、おっちゃん」
すると地面から、サーミャの足元から二人を遮るように土壁がせり上がる。
しかし一瞬の沈黙もつかの間――。
ヘイガルはいとも簡単に壁を剣の連続突きで破壊するのであった。
「残念だったな」
「しっかし、無詠唱魔法を平然な顔でやるなんて、めんどくせぇな」
「さすがハーレイの娘だ」
「あちゃ~(シャルを守ってやる余裕がねぇ)」
「やっぱ親子だな、同じで相手にとって不足はねぇな!」
「俺も出し惜しみはせずに一気に決めさせてもらおうか?」
「!」
「知ってんだろ? 俺の光速移動と剣! アンハルトとは一味ちげぇぞ!」
するとヘイガルは、サーミャの目の前から一瞬で姿を消し、次の瞬間、背後に立ち彼女の背中に剣を突き立てていた。
「ぐっ……『雷光のヘイガル』だったわね」
「まぁ安心しな。命はとらねぇよ」
「ハーレイに殺されちまうからな」
「(……正直舐めてた)」
このまま戦えば2人とも捕まるのが目に見えたサーミャはヘイガルの性格を見抜いて、賭けに出る。
「なぁおっちゃん、このまま戦ったら、あたいは単純に負けだ……認めるぜ」
ヘイガルの口元が少し開く。
「なんだよ、素直じゃねぇか」
「だが一つだけ頼みがある。あたいの最大級の技を受けてみねぇか?」
ヘイガルは武士道に忠実な男であり、サーミャはその精神を突いた。
「おっ、なんだなんだ?」
「出し惜しみがあるのかよ? 面白そうじゃねぇか!」
「いいぜ、そいつで俺を打ち負かせたら、勝ちをくれてやるよ」
「武士に二言はねよなぁ? おっちゃん」
サーミャの狙い通りになり、呪文の詠唱し始めた。




