第146話 突入開始
ノモナーガ城へ突入することを決め、ルティーナ奪還とノキア王の悪事を暴く決意を固めたサーミャ達。
彼女達の決意をアンハルトはもう止める気はなかった。
「しかし、お前ら」
「俺達はこれ以上、手伝えないことだけは分かってくれ」
「何言ってんだ! 誰も、盲目のアンハルト様に付き合えなんていってねぇよ」
「うぐ……すまなかったな、まだ視力は回復してねぇよ」
「じゃなくって、相手が相手だ! 準備を怠るなってことだ!」
「ふふっ、わかってるよ」
それは単にアンハルトをからかったわけではない。
ルティーナの行方が見えず、闇の中を手探りしていた状況から抜け出せた。
だからこそ、こんな軽口を叩く余裕が戻ってきたのだ。
そこへシェシカが割り込む。
「ねぇ例の手練れって、きっと黒魔法使いよね?」
「!」
「だって、気配を消して行動しなければ誘拐なんて無理でしょ?」
シェシカはロザリナの肩を叩く。
「そんな奴らを相手にするなら、いい魔法があるわ!」
「ちょっと、一時間ほどロザリナを借りるわよ」
そしてヘレンも声を上げる。
「アンハルト……私はこのまま手伝っていいですか?」
「その一時間だけでいいんです」
ヘレンはサーミャから『エクソシズム・ケーン』を借り、ノモナーガ城のネズミを総動員して城のどこにルティーナが居るかを探すと提案した。
「そうだな、それだけでも突入の最短ルートが組める」
「そりゃ助かる。早速頼むぜ」
一方、サーミャ達が対策を練っている頃、ルティーナは意識を取り戻しはじめていた。
「うぅ~……あ、頭が――痛」
(し~っ! ルナ、喋らず目を閉じろっ)
「(え? 何よ?)」
「(……あっ、そっか私)」
(あぁ、誘拐されて捕まってるんだ)
「(マコトは……そっか、私が気を失ってても関係ないんだもんね)」
馬琴は既にダブリス達の会話から情報を整理しており、それをルティーナに簡潔に説明した。
そして、ゆっくり目を開き様子を見るように指示をする。
「(見えないじゃない!)」
目の前は白い布が広がっており、目隠しされていることを理解した。
「(でも、ジメジメしてる感覚があるわ……ここはどこかしら?)」
(……ここは多分、ノモナーガ城のどこかは間違いない)
(そして、首謀者は――ノキア王)
「(今回のリーナ誘拐を利用して、私を……)」
「(確かに私、可愛いけどさぁ~幼女趣味だったなん――)」
(なんでそうなる)
「(だってさ、それ以外に誘拐される理由が……)」
(――冗談はさて置いて)
「(ひ、酷ぉ~い)」
馬琴は、とりあえずルティーナが今どういう状態なのかを確認した。
「(頭がぼぉ~っとするだけで体は痛くないけど……何かに固定されてるみたい)」
「(全く身動きが取れないの)」
(あいつら、手のひらがどうとか言ってたが)
「(うん、手のひらが……手の甲同士がくっ付けられてるみたい?)」
「(背中側で縛られてる)」
(俺の能力を知った上での拘束か……)
(やはりノキア王にも、俺と同じ転移者がいる可能性が高くなったな)
「(つまり?)」
(王都爆破事件に巻き込まれた時に、ルナと俺の接触のように、ノキア王も水晶に触れたんだ)
「(……取り憑いてるの?)」
(と、憑くって……俺は呪いか何かかっ?)
(――いや、待てよ……ルナの言う通りかもしれない)
「(どういうこと?)」
(だって俺達と同じなら行動や判断するのはルナなんだぞ!)
「(!)」
(ノキア王は明らかに自分の意識で、いや、そいつの意思で動いているとしか……)
二人はしばらく状況を整理していた。
――その時、牢屋の入口の施錠ははずされ扉が開く。
ギギィーッ!
「(ん? 扉か何かが開いた?)」
(……誰だ?)
そこへ一人の男がルティーナへ近づいてくる。
「この瞬間がやっとやって来たなぁ……」
「誉美」
(! 今、こいつ誉美って)
「逢いたかった……」
「(――でもマコト、この声って? 聴いたことあるよね?)」
(あぁノキア王だ!)
その様子を、ヘレンのネズミが目撃する。
「サーミャさん! 発見しました!」
「ルナリカとノ……ノキア王です!」
サーミャがヘレンに食いかかる。
「なっ! どんな状況だ!」
ヘレンは、耳を傾ける。
「地下四階の牢屋に閉じ込められているみたいですね」
「ルナリカには意識が無いような感じです、椅子に縛られています」
「もっと近づいて確認したいので、また、魔力妨害されると困るのでここまでですかね」
「それだけ分かれば充分だ、ありがとよ」
しかしヘレンにはノキア王の顔が見えていた。
「なんだか、ノキア王……喜んでいるような歪んだ顔をしています」
「くそっ! なんだよそれ!」
「まさかノキア王は幼女好きの変質者だったのかよ!」
「ルナの貞操がやべぇ!」
焦るサーミャであったが、そこへロザリナが何か自信に満ちた顔で戻ってくる。
「ミヤ、あれから何かわかったんですか?」
「あぁ、かなりやべぇ」
「変態だぞ! ノキア王は!」
「!?」
「時間がねぇ……そんなことより、シェシカと何をしてたんだ?」
ロザリナはシェシカから姿を消す闇魔法の対策として有効な光魔法のレクチャーを受けていた。
その魔法は『シャイン・キャンセラー――魔法遮断――』。
「なんだそりゃ? それじゃ、歩くシールストーンじゃねぇか!」
「なによサーミャ、酷い言われ方ね?」
「光魔法を馬鹿にしないで!」
その名の通り、自分を中心とした一定範囲内の魔法を無効化する魔法である。
「でも、ロザリナは魔法が使える優れものよ!」
「はい、身体強化で格闘戦に持ち込めば……」
ただし、その代償として発動中は魔力の大半を消費してしまう。
「そりゃいい、姿を消せなくなった奴らの慌てる顔が目に浮かぶぜ」
「ありがとうございます。シェシカさん」
そしてサーミャは仕切り直す。
「情報が集まった」
「時間がねぇ、今すぐ四人で城に突入する――」
サーミャは、ヘレンのネズミの案内で地下牢へ向かう作戦を立てる。
目的地は、ルティーナが囚われている地下牢。
そしてノモナーガ城突入後の役割を話し合うと、自然と二人ずつの組み合わせに分かれた。
「じゃ、シャルはこの杖もって、あたいと共闘だ!」
「はいぃです!」
サーミャとシャルレシカは魔法が自由に使える地上で地下入り口に踏み込ませない役を買って出る。
「では僕とリーナの『武闘組』は地下に潜入してルナの救出ですね」
「私の覚えた魔法とミヤじゃ相性が悪いものね……」
「ルナにも借りを返したいし、都合がいいわ」
サーミャは少し笑う。
「リーナ、それだけじゃねぇだろ?」
「……えぇ」
「変態が相手なら王様だろうがなんだろうが鉄拳制裁で再教育です!」
アンハルトは、女性陣が完全にノキア王を変質者扱いしている状況に戸惑いながらも、どうにか冷静さを保とうとしていた。
「ところでサーミャ」
「このデブラクはどうするんだ?」
「とりあえずこいつは、ルナを助けてからだ」
「勇者の件、こいつからいろいろ聞かせて――いや、シャルに覗かせてもらうさ」
「それまで、不気味かもしれねぇが確保しておいてくれ」
「あぁ分かった」
そして、サーミャ達は夜のノモナーガ城へ向かい走り出す。
一方、ルティーナとノキア王は――。
「誉美、目を覚ませ」
「……」
「くそ、ダブリスの奴、どれだけ睡眠薬を盛りやがった!」
「ふざけやがって」
(こいつ、何を焦っているんだ?)
(そもそもルナのことを、あのときの会食で探っていたのは……俺でなく誉美が中に居ると思っていたからなのか?)
「(げぇ、それって何よ? 馬琴が居るってバレたら、ただじゃ済まないじゃない……私)」
そして、ノキア王は思い出したかのようにフェンガを呼ぶ。
「はっノキア王、お呼びで」
「宝物庫に行き、例の集めた水晶を持ってこい!」
「わ、わかりました」
そしてフェンガは急ぎ足でその場を去る。
「もうちょっとだけ待っててくれよ」
「『外』に出してやるからな」
(外に出すだと? 何を言っているんだ?)
「(そうよ! 私をここに閉じ込めてるくせに!)」




