↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました ~異世界召喚失敗!? 少女の中に宿った勇者の冒険譚~  作者: うにかいな
第陸章 ~「アジャンレ村」の危機~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
132/175

第132話 「スレイナ」ノ正体

ルティーナに追い詰められたスレイナは、諦めの色を見せていた。

しかし、その裏では必死に逃走の手段を探っていたのだ。


ルティーナはスレイナを鋭く見据え、言い放つ。


「あなたには聞きたいことが山ほどあるわ!」

「その痣……ゲレンガとドグルスの仲間よね?」


「ちっ……(どこまで知ってやがる?)」


スレイナは小さく舌打ちし、言葉を選び始める。


「ますます、あんた達は危険な存在だね」

「(まずいね……シャルレシカは居ないようだが、このままだと私の記憶が……)」


「何をブツブツ言ってるのよ!」


ルティーナの声は揺るがない。


「(年貢の納め時かねぇ……)」

「(思念通信も、ナガアキ様からしか届かない……都合よくは来ないか)」


スレイナは一瞬の沈黙の後、覚悟を決めたように息を吐いた。


「(……なら逆だ。情報を引き出してやる!)」


死は覚悟した。

少しでも多くの情報をナガアキへ届ける――それだけが今の役目だった。



「ヘルセラさんに刺客を差し向けたのは、あなた達でしょ?」


「……そうか、お前達はジェイストに居たのか」


「やっぱり、あなた達の仕業だったのね!」


「(そうか、ノキアの奴……早速、暗殺を仕掛けていたのか……)」

「ああ、私の仕業さ」


スレイナは淡々と認めると、逆に視線を鋭くする。


「だがこっちも気づいちまったよ」


「……何よ」


「お前、さっき『お父さんの救援に』って言ってたよな? バルストの事だよな?」


「――っ!」


空気が一瞬で張り詰めた。

問い詰めていたはずのルティーナが、わずかに言葉を詰まらせる。


「(しまった……)」


「その驚きようは……当たりのようだねぇ」


スレイナは確信を深めるように笑う。


「ゲレンガが暗殺したはずのバルスト一家が、生きていたとはな」


ルティーナは動揺し、馬琴(まこと)の制止も聞かずに、バルストの暗殺の事を問い詰めてしまう。

「やっぱり、お父さんを殺そうとしたのは、あんた達なのね!」

「お父さんは水晶なんて持ってないのに!」


(ルナっ! やめろっ)


「(!)」


スレイナはうっすら口を開く。


「お前ら一家、勇者召喚の事をやっぱり知ってたんだな……」


ルティーナは目をしかめる。


「どういうことよっ!」


(そういうことか……)

(勇者召喚を知る者が狙われている……)


スレイナは機と判断し、さらに食いつく。


「それはドグルスの仕事さ。私は知らねぇよ」

「まさか、あんたの力は『サモナー・ストーン』の恩恵じゃないのかい?……じゃあ、お前も仲間じゃねぇか?」


「(さもなー……すとーん?)」


(仲間って? まさかもう一人の黒幕は勇者なのか?)


気づけば、ルティーナは呟いていた。


「勇者は魔物と相打ちしたはずじゃ……」


「そうか……お前らは知らねぇんだな」


スレイナはゆっくりと言葉を選ぶ。


「勇者が役目を果たした『その後』の話」


そして、語り始めた。


勇者は召喚され、

利用され、

役目が終われば処分される。


「(処分……って?)」


ナガアキから聞いた情報を、淡々と語る。


「そんな馬鹿な……」


ルティーナの顔から血の気が引いていく。


(役目を果たしても、自分の世界に帰れない?)

(なんでそんなことを知っている?)


疑念が一気に膨れ上がる。

ルティーナはスレイナが錯乱をさせようとしていると思わず声を荒らげた。


「嘘ばっかりいってるんじゃないわよっ!」


(いや、確かにハッタリの可能性もあるが……)


「(嘘じゃ……ないの?)」


スレイナはさらに踏み込もうとした。


しかし――。


「(――スレイナよ、喋りすぎだ)」


その声が響いた瞬間、スレイナの動きが止まる。


「(な、ナガアキ様……っ)」

「(いいところへ――)」


(!?)



突然、スレイナの表情が凍り付き、ルティーナは警戒する。


「(ほぉ、面白い情報だな)」


淡々とした声がスレイナの頭の中に響く。


「(お前のおかげで、こちらも確保ができた)」


「(それはよかった……!)」

「(なら、あとはルナリカを仲間に――)」


「(その必要はない)」


「(え……?)」


次の瞬間、スレイナの体が苦悶に震えた。

口は顎が外れそうなほど開き、両目はあらぬ方向を見るように動き回る。


「なによ! こいつ急にっ」


そして、体が膨張し――

一瞬で爆ぜた。


バフンッ!


ルティーナは思わず一歩後ずさる。


そこには血だまりだけが広がり、

スレイナの姿は跡形もなく消えていた。


「ひっ……!」


ルティーナは口を塞ぎ、目を閉じてしまう。



――静寂が落ちる。


「……自爆したの?」

「でも、ヘルセラさんを襲った奴らとは違う……」


(そう、逃げようとしていた……それなら最初から)


「じゃあ……何が起きたの?」


(わからない……)


しばらく沈黙が続く。


「そ、それより、お父さんが心配だわ!」


(あぁ戻ろう!)


馬琴(まこと)は、スレイナの残した言葉が頭から離れなかった。





その頃――。

サーミャとエリアルは、数の差をものともせず戦っていた。


「こっちは片付いたぜエルっ! そっちはどうだ?」


「これで――最後っ!」


エリアルは、最後の一匹を二本の剣で細切れにする。


「……すげぇな」

「それが修行の成果かよ――真っ二つ……いや、真っ四つだな」


全て倒したと思った……その時だった。

サーミャの背後に影が忍び寄る――。


「ミヤ、油断しすぎよ!」


「ん?」


その瞬間、木影からデフルウがサーミャの寸前まで近づいていた。


「ちっ、詠唱が間に合わ――」


エリアルはすぐさま、風の剣を振りかざしデフルウの首を撥ねた。


「……助かったぜ、エル」


「それより――」


そこには、血まみれでバルストが倒れていた。


「師匠っ! しっかりしてください!」



サーミャとエリアルが駆けつけた時――。

バルストはすでに地面へ倒れていた。


その周囲には、鎌や斧が散乱していた。


彼は剣とは勝手の違う武器をだましだまし使い、たった一人でデフルウの群れを食い止めていたのだ。



だが、意識は朦朧としていた。

まだ――生きている。


「だめだ! あたいがリーナを連れて戻ってくる!」


「ミヤ、落ち着いて!」


エリアルは冷静だった。


サーミャの転移魔法は無制限ではない。

『ヒーリング・ストーン』一つにつき、一度だけ。


ジェイスト村への転移ですでに一つを消費し、残りはあと一回。


「それじゃ、往復できない!」


ロザリナの元へ飛べば、そこで魔力を補充しなければならない。

つまり、すぐにここへ戻って来られない。


「アンナさんが近くにいる」

「転移はそっちに使って、すぐに連れて来てくれるかい?」


サーミャは意味を理解した。


「『ディメンジョン・テレポート』っ――」




――数分もしないうち。

サーミャに連れられ、アンナが悲壮な顔で駆けつける。


「あ、あなた――っ」

「『ハイ・キュア・ヒール――上級治療――』っ」


アンナは必死だった。

もう二度とバルストを死なせたくないと――。

もう二度とルティーナを泣かせたくないと――。


そして、その願いは届く。

バルストの出血は止まり、傷こそ残っているものの、その表情は少しずつ穏やかになっていく。


「アンナさん……」


「ありがとう……あなた達が来てくれなかったら――」

「この人は……」


アンナはバルストを抱きしめながら涙する。



そこへ、ルティーナが飛翔し駆けつける。


「みんなーーっ! 大丈夫――!?」


ルティーナの目の色が変わり、急降下する。


「お、お父さんっ!」


(シャルの言った通りか……)


「ルナ、大丈夫だ! 安心しなっ!」


サーミャが大声で安否を説明する。


その声に、バルストは意識を取り戻す。


「そ、そうか……お前ら」


バルストは、ようやく事態が収まったのだと悟る。


「そうか……よかった」


しかし、バルストの表情は晴れなかった。

守れなかった命への悔いと、それでも守れたという現実に苛まれていたのだ。


そんな中、エリアルは誇らしげに語った。


「ルナ、師匠はまともな武器もなしで、最前線を守られていたんだよ!」


「うん! 私の自慢のお父さんだもの!」


その言葉を聞き、少し罪悪感から解放されたバルストだった。



――その時。

誰も気づかなかった。


勝利を確信する彼女達の知らぬところで。

すでに一つの駒が、敵の手に落ちていたことを――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。