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見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました ~異世界召喚失敗!? 少女の中に宿った勇者の冒険譚~  作者: うにかいな
第陸章 ~「アジャンレ村」の危機~

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第130話 「スレイナ」ノ殺意

デルグーイ――鷹の魔物――化したスレイナ。

今にも施設を攻撃しようとしていた。


「この炎で、動物は襲って来られなくなったが……」

「僕も動けなくなってしまった」


エリアルを残し、スレイナは孤児院へ羽ばたく。


「待て! スレイナっ」


エリアルは、ただ歯を食いしばり、その背を見送るしかなかった。


そこへ――。


「こらぁ! あなた達、散りなさいっ!」


勇敢にも、小動物相手に斧を振り回しながらアンナが走ってくる。


「あ、アンナさん! 危険です! 来ないでください!」


「これを使いなさいっ!」


アンナは炎の中にいるエリアルに向かって、斧を投げる。


エリアルはその斧を受け取る。


「エリアルなら、斧でも使えるでしょ!」


「はいっ! 離れてくださいっ!」

「『ソード・オブ』…………」


エリアルは自分の剣に氷、斧には雷を纏わせる。

両手の剣と斧を円を描くように振りかざし、華麗に舞った。


「氷雷乱舞っ!」


小動物たちは、炎の向こうから突如襲い来た氷と雷のうねりに対応できず、次々と巻き込まれていく。


「よし!」

「(ミヤのあの必殺技の応用ができた!)」


いままでは一本の剣でしか魔法を扱えなかった。

だが二本になれば、複数の属性を組み合わせられ、威力も飛躍的に向上する可能性がある。

――これこそが、魔法剣二刀流。


「アンナさんも、無茶しますねぇ」


「これでも元冒険者よ!」

「私は彼の所へ行くから、あなたは子供達をお願い」


エリアルは頷きながら、孤児院へ走る。




その頃、スレイナは孤児院の上空で構えていた。


「さぁて……静かだねぇ」

「(機をねらっているのか?)」


スレイナはこの数週間、あえて仕掛けなかった。

すべては――ルティーナ達の力と弱点を見極めるため。


「ルナリカとロザリナは空中戦が大の苦手」

「サーミャとエリアルは対応できる程度」


そこでスレイナが選んだ薬は「デルグーイ」。


「さぁて、さっきのガキ……しゃべりそうだったなぁ?」


スレイナの顔が一瞬歪む。


「なっ――動物の反応が消えているだと!?」

「まさか!」



「『ソード・オブ・プラズマ』っ!」

(【(かみなり)】)


エリアルが剣を振り上げると同時に、雷が空間を裂いて放たれる。


稲妻は油断していたスレイナを正確に捉えた。


しかし、羽がそれを受け止める。

――いや、正確には受け流していた。


雷は翼を伝い全身へと分散し、そして消えるように散っていった。


「貴様っ!」


エリアルの判断は一瞬だった。


「ならっ……!」


通用しないと判断し、炎の剣に切り替える。

火炎の刃が空を裂き飛んでい行く。


だが、火は雷ほどの速度が出ない。

スレイナは軽く身をひねるだけで、それを避けた。


まるで遊びのように。


次の瞬間――。


スレイナは翼を一度だけ払う。

そして羽が数本抜け落ちながら、矢のように空気を裂きエリアルを襲う。


「なっ……!」


エリアルは火炎で弾く。


しかし一撃では終わらない。


二撃、三撃、四撃――。


羽は増えるように射出され、角度も速度も狂っていく。


『遊んでいる』のではない。

『楽しんでいる』のだ。

――獲物が必死に抗う姿を。


「まさか、脱出してくるとはねぇ」


「くそっ……これじゃ反撃できないっ……!」


エリアルは奥歯を噛む。


(斧では、その場しのぎしか出来ない)

(大剣があれば……防御しながら……)


だが現実はそれを許さない。


さらに一本の羽が、かすめるように肌を裂いた。

鎧のない身体では、その一撃すら致命傷になり得る。


「おやおや……」


スレイナの声が上空から降ってくる。


「だんだん撃ち漏らし始めたかい? なら……もっといくよっ」


その言葉と共に、エリアルの視界が揺らぐ。

一瞬、世界が歪む。


「……っ」


(毒……?)


気づいた時には遅い。

羽の一部に仕込まれた毒が、切り傷から侵食していた。


「どうだい? 毒羽根の味は?」


スレイナの声は楽しげですらある。


「切り傷でも十分だろ?」


エリアルは膝を落としかけるが、炎の剣を地面へ力いっぱい叩きつける。


爆炎――。

地面は土砂を巻き上げ、煙と共に視界を遮断した。


エリアルは必死に物陰へと滑り込む。


「ふんっ……隠れたか」


スレイナは空中で止まり、静かに見下ろす。


「(何故だ……ルナリカは来ねぇじゃねぇか)」

「(あんな裸同然の奴だけで十分だとでも?)」


その声には、明確な苛立ちが混じっていた。


「いや、違う……踊らされたってわけか」

「つまり、あんたはたまたま居合わせただけ……」



(まずい……)


エリアルは呼吸を整えようとするが、毒がそれを許さない。


(僕が一人ってこともバレてる……)


その思考に影が差した瞬間――。


「エリアルっ!」


アンナが大剣を抱えて戻って来た。


「なぜ、師匠の援護に……!」


「預かってきたのよ! エリアルには必要だって」


その声は揺れていない。

だが、その瞳には必死さが滲んでいた。


そして、エリアルの青ざめた顔を見て察した。


「まさか、毒!?」

「まかせて! 『キュア・ポイズン』っ!」


体内を侵していた毒が薄れる。


エリアルは息を吸い直す。


「……助かりました」


だが、その安堵も束の間だった。


「なるほど……伏兵がいたのか」


二人が空を見上げる。

そこには、スレイナが静かに浮かんでいた。




一方、バルストは躯になった村人を必死に止めていた。

大剣をアンナに託し、集まってきた村人が落としていった鎌を片手に――。


「こいつら自体は強くねぇ」

「足を切り落とすしかねぇ……許してくれよっ」


躯達はなおも暴れていたが、

両足を断たれ、その場を這うことしかできなかった。


「これで……少しは被害を抑えられたか」

「あとは、エリアル――」


一瞬の安堵だった。


「まさか、この気配!」


村の外の森から、赤い目が複数見える。


スレイナは用心深かった。


すべてが終わる頃を見計らって――。

デフルウ――狼の魔物――を第二陣として、村へ向かわせていたのだ。


「くそっ! デフルウの群れだと……」


バルストは剣をエリアルに託したことを少し後悔した。

――だが未来に託したのだ。

自分の命など安い買い物だと。


「(ルティーナ……今度は本当に駄目かもな)」




スレイナは気付く――森の入口の異変に。


「あぁ、もうそんな時間かい」

「ちょっと遊びすぎたねぇ」


エリアルはスレイナが何を言っているのか理解する余裕はなかった。

アンナを避難させ、大剣を持ち二刀流で構える。


「『ソード・オブ』…………」


エリアルは自分の剣に風を、大剣には雷を纏わせた。

そして二本の剣を十字に交差し、スレイナめがけて放つ!


「風雷斬っ!」


風と雷を纏った高速の十字架がスレイナに襲いかかる。


その一撃は速すぎた。回避は間に合わない。

スレイナの左足首が宙を舞った。


「ぎゃぁーーーーーーーっ」

「て、てめぇ何しやがるっ!」


スレイナの形相が変わる。


「予定が変わった――」

「エリアル、貴様だけは私の手で惨殺してやる」


次の瞬間、スレイナは急降下した。


鋭い爪がエリアルへ襲いかかる。

エリアルは咄嗟に剣で迎え撃ち――両者が激突する。


空気が破裂したような衝撃が走った。


――すかさずエリアルは大剣で斬りかかる。

身を翻し、スレイナは再び空を舞う。

そして、毒の羽を撃ち込む。


「ならば!」


エリアルは大剣を盾として持ち替え、羽の弾丸を跳ね返す。

それを見たスレイナは、数本の羽の軌道を変え、傍で隠れていたアンナへ向けた。


「し、しまった!」


「エリアルっ!」


「『ソード・オブ・ボルケーノ』」

(【(ほのお)】)


エリアルは大剣に炎を纏わせ、アンナを襲う羽に向かって投げ込んだ。


「かかったな! エリアルっ」


「――!」


アンナ救出に気が削がれていたエリアルは、自分の後ろにスレイナが降下してきたことに気付くのが一歩遅れた。


「死ね――っ」


振り返り様に、剣で防ごうとした瞬間――。


ブオーーーーンッ!


黒い空間がエリアルの目の前に発生し、スレイナは突然の出現に対応しきれず衝突し地面に叩きつけられる。


「ミヤッ!」


今まで何度も、間の悪い登場ばかりだった。


だが今だけは違う。

この瞬間だけは――救世主そのものに見えた。


「おうぅ! 待たせたな!」


そこへ現れたのはジェイスト村にいたサーミャとルティーナであった。


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