↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました ~異世界召喚失敗!? 少女の中に宿った勇者の冒険譚~  作者: うにかいな
第陸章 ~「アジャンレ村」の危機~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
127/173

第127話 「ヘルアド」ノ過去

ヘルセラが襲撃された。


その直後――。

シャルレシカは、これまでになく自ら進んで死体へと手を伸ばしていた。


「ど、どうしたんだシャルっ。お前らしくねぇな……」


サーミャが目を丸くする。


シャルレシカは小さく頷いた。


「んんっ……ちょっとぉ怒ってますぅ~」


いつもの間延びした口調。


だが、その声には明らかな怒気が滲んでいた。


「やっと出会えたんですよぉ……」


その指先が震える。


「私の肉親がぁ……殺されかけたんですよぉ……!」

「……!」


ヘルセラは言葉を失う。


シャルレシカは死体へ手を当てた。


「早くしないとぉ……完全に読めなくなってしまいますぅ……」


淡い光が水晶へと吸い込まれていく。


やがて――。


シャルレシカの顔色が変わった。


「……あの時とぉ、同じですぅ……」


「何が見えたの?」


ルティーナが問いかける。


「水晶を見てくださいぃ~」


映し出されたのは、豪華な部屋。

その中で膝をつく男。

まるで誰かへ忠誠を誓っているかのような姿だった。


(これ……ドグルスの時と同じ風景)


馬琴(まこと)も眉をひそめる。


(誰かの命令で動いているのか?)


――そして次の光景。


「……ルナっ!」


サーミャが声を上げる。


「こめかみに入れ墨がある女じゃねぇか!」


「……!」


ルティーナの瞳が見開く。


「生国際の屋台のおじさんが言ってた女……」


(やっぱり繋がってる……?)


(敵組織は別々だと思ってたんだが……)


馬琴(まこと)も考え込む。


しかし、そこで映像は途切れた。


シャルレシカが小さく首を振る。


「もうぅ……ここ一週間くらいが限界ですぅ……」


――死後数分。

それ以上の記憶は、完全に失われていた。



ルティーナは静かにヘルセラを見る。


「……ヘルセラさん」


「なんだい? ワシが狙われたとでも言いたいのかい? 銀髪っ」


「だから、色で言わないでください……私はルナです」


「知らんっ! お前が連れてきたくせにっ!」


ヘルセラが鼻を鳴らす。

しかしその表情には、どこか諦めの色もあった。


見かねたサーミャが前へ出る。


「なぁ婆さん、この襲撃はただ事じゃねぇ」

「さっき……ルナが聞こうとしてた話に繋がってる可能性があるんだ」


ヘルセラはルティーナから視線を逸らす


「……」


しばしの沈黙。

やがてヘルセラは、小さく息を吐いた。


「……そうさの」


そして、ゆっくりと口を開く。


「八年前に姉上が王都へ向かった理由を聞きたかったんだったな」

「――それは『最悪の厄災』から世界を救うためさ」


「……最悪の厄災?」


空気が変わる。


「なんだよ、それ……」


サーミャが眉を寄せる。


「聞いたこともねぇ」


「無理もないさね」


ヘルセラは静かに頷く。


「だが……あと一年も残されておらぬ」


「「「……!」」」


場が凍り付く。


シャルレシカが震える声で尋ねた。


「どうやってぇ……止めるつもりだったんですかぁ……?」


ヘルセラは答える。


「勇者様じゃ」


「八年前のあの日……ノモナーガ王国は禁忌を犯し、『勇者召喚』を行うつもりだったのさ」


「……!」


馬琴(まこと)の鼓動が跳ねた。


「だが――」

「王都爆発事件で、その機会は失われたのさ」


(……俺や誉美(ともみ)が召喚された理由)

(厄災を倒すため……)

(そして、その爆発で召喚中俺達が各地に飛散したのなら……)


「(それじゃ、水晶の中にいたマコトやトモミさんって……)」


(たぶんな)

(禁忌を目撃されたと思った、ノキア王はバルストさんを暗殺しようとドグルスに指示した……)

(そしてヘルアドさん関係者も……この襲撃犯に)


その事実が胸に重くのしかかる。


さらにヘルセラは続けた。


「同行していた姉上の息子――サハリド」

「奴は全属性を扱う召喚師だった」


「!」


ルティーナが息を呑む。


「(マコトを召喚した人……?)」


(だが、もう……いない)


――つまり、もう元の世界には戻れないということか。


沈黙が落ちた。


やがてヘルセラは視線をシャルレシカへ向ける。


「そして……そのサハリドの姉――サハリン」

「その娘が……お前じゃ」


「……え?」

「サハリン……それがお母さんの名前ぇ?」


シャルレシカは涙目になる。


ヘルセラは少しだけ困ったように笑う。


「先ほどは……すまなかった」

「災いなどと言って……ワシの為に過去視をしてくれたんだろ?」


「お前は……一族とは真反対の力を持っておるが、立派な姉上の血筋じゃよ」


シャルレシカは涙を拭う。


「……はいぃ」


少し間を置いて。


「……おばあ様」


「……!」


今度はヘルセラが目を見開いた。


「ふふ……」


その顔に、初めて柔らかな笑みが浮かぶ。


「だが、話はまだ終わっておらぬ」


ヘルセラの表情が再び真剣なものへ変わった。


サーミャが首を傾げる。


「召喚が失敗し今、ワシが姉に託されたのは厄災に立ち向かう者を探す事」


「つまり……あたいがその勇者の代わりってことか?」


「左様――」

「姉上は自分が数年以内に死ぬという予言は、王都爆発事件に巻き込まれることを予見していたかもしれん」

「ワシに『エクソシズム・ケーン』を託したのは保険――そしてあの予言」



黄金の光、それを撃つ――



馬琴(まこと)は気づく。


(そうか……)


「だから、ヘルセラさんはミヤに杖を?」


「ふんっ、銀髪の分際で……頭は切れるようじゃの」


ルティーナは小さく笑みを浮かべた。


「(まだ距離はあるけど……少しだけ、話せるかもしれない)」

「それで――」


「……勘違いするでない! 貴様とは話すつもりはない」


「(きぃーっ!)」


「そもそも姉上が計画していた勇者召喚が失敗した以上、私が動くしかなかったのさ」



サーミャは、自分が『救世主』と呼ばれる理由にようやく納得する。


「――だがな婆さん、一つだけ言わしてもらうぜ」


「?」


「残念だが、その黄金の光ってのは、あたいじゃねぇよ」

「イスガにあった究極魔法すらまともに使えねぇんだから……」


ヘルセラの表情が変わる。


「い、イスガですと!」

「救世主様……その国の事を誰から?」


「信じてもらえねぇかもしんねぇが……行ってきたんだよ」


「……馬鹿を言うでない。あの国は八十年前に砂漠にされたはずじゃ」


ヘルセラは驚きを隠せなかった。


サーミャは真剣な目になる。


「……信じてくれよ、婆さん」


ヘルセラはしばし目を閉じた。


「わかりました」

「そこまでご存じなら、ワシの知っている全てをお話させてもらいます」


その一言に、全員が息を呑むのだった――。


ヘルセラは昔話を始める。


「今から九十年ほど前……」


その声は、どこか遠い昔を見つめているようだった。


「当時、ノモナーガ王国には双子の姉妹が生まれた」

「姉上とワシじゃ」

「父上はヘルザード……全属性を扱う王宮の召喚師」

「母上はサハラ……大占い師だった」


サーミャが小さく口を開く。


「すげぇ家系だな……」


「そうでもないさね」


ヘルセラは苦笑する。


「じゃが、その平穏は長く続かなかった」

「ワシらが生まれて間もなく……母上が予言した」



『十年後、世界を滅ぼす厄災が現れる』



場の空気が重くなる。


「世界を……滅ぼす……だと」


サーミャが呟く。



「あぁ、そして父上はすぐに王へ進言したのさ」

「――勇者召喚の準備を進めるべきだと」

「そして半月後、召喚するための条件が揃ったのさ」



馬琴(まこと)が反応する。


(勇者召喚には……条件があるのか?)



「王は決断したんだ」

「禁忌を犯し、異世界から勇者を呼ぶことを」


静かな声が続く。


「召喚されたのは三人」

「男が二人」

「女が一人」

「いずれも、常人離れした力を持っていたらしい」


「「「……」」」


馬琴(まこと)は言葉を失う。


(過去に……俺と誉美(ともみ)のように?)


「数年後……厄災が現れた」

「そして、最初に襲われたのが――」


ヘルセラはゆっくりと言った。


「イスガ王国だったと伝え聞いておる」


「「「!!」」」


全員の顔色が変わる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。