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見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました ~異世界召喚失敗!? 少女の中に宿った勇者の冒険譚~  作者: うにかいな
第陸章 ~「アジャンレ村」の危機~

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第118話 「エリアル」ノ苦悩

魔物たちを退けた――。

本来なら安堵してもいいはずだった。


しかし、その直後に響いた落雷が、すべてを覆した。


ロザリナは必死にガイゼルを再生魔法で包み込む。


だがロザリナの顔色はみるみる青ざめていく。


普通の戦闘ならたいしたことはなかった。

不用意に人間の魔物を浄化するために、無駄に大量の魔力を消費していたのだ。


限界は近い。

それでも彼女は止めなかった。


「お願いだから……!」

「息をして……!」


 雨音に負けないほどの悲痛な叫び。


「ガイゼルさんっ!」


光が弱まる。

さらに弱まる。


それでも――彼女はあきらめない。

最後の一滴まで魔力を振り絞る。


そして光は完全に消え、ロザリナはガイゼルに覆い被さるように倒れ込んだ。


「リーナっ!」


ガイゼルの身体は元の状態へ戻っていたが、服だけは焼け焦げていた。

エリアルはすぐさま、ガイゼルの胸に手を当てた。


次の瞬間――。


ドックン――。


鼓動。

微かだが確かにあった。


「息もしてる……!」

「助かったぞーーーーーーーーーーーーっ!」


エリアルは豪雨の中、顔を空に向けながら叫ぶ。


「リーナは、君は凄いよ……」


言葉が詰まる。

だが胸の奥では別の感情が渦巻いていた。


「僕が……もっと早く、魔物を退治していれば……」

「ガイゼルはこんな目に遭わなかったかもしれない」


その思いがエリアルの胸を締め付けた。


しかし。

後悔する時間すら与えられない。


豪雨の中で、また何かが動いた。


「……くそっ! まだ居るのか?」


地面へ叩き落としたはずの人間の魔物。


そのうち二体が半ば再生し不完全ながらも立ち上がり襲ってくる。


「まだ動くのかっ!」


エリアルは歯を食いしばる。


「『ソード・オブ・スラッシュ』!」

(【(ざん)】)


頭部を潰しても駄目。

全身を細切れにしようと剣を振りかざそうとするが豪雨で思うようにできない。


そのうちに他の魔物も再生が始まっていた。


「くそっ!」


剣を構える。


「もう一度、『ソード・オブ・メイルシュトローム』!」

(【(うず)】)


巨大な水流が巻き起こすが、同じ手は通じなかった。

魔物たちは散開する。


巻き込めたのは二体だけ。

復活した別の二体は真っ直ぐこちらへ向かってくる。


「駄目か……!」


振りかざす余裕がない。

ならば――。


「来いっ!」


エリアルは自ら魔物へ突っ込んだ。


「『ソード・オブ・ブリザード』!」

(【(こおる)】)


瞬間――。

剣を中心に触れた豪雨が凍り付き始め、周囲が氷に包まれる。


魔物も。

エリアル自身も。


「ぐっ……!」


体が動かない。

予想していた。


この結果は。


「やっぱり……こうなるか……」


苦笑が漏れる。

すぐに炎の剣を発動し、自分だけは氷を溶かして脱出した。


だが。

閉じ込めたはずの魔物の氷に亀裂が走る。


ミシッ――。

ミシミシッ――。


「う、嘘だろ……」


再び、氷の隙間から目が光る。


――自分ではどうしようもないと思った瞬間だった。


「そこから離れろっ! エルっ!」


聞き慣れた声。

豪雨を切り裂くような叫び。


「どでかいのかますぜっ!」


「――ミヤっ!?」


黒い球体が飛来する。


「『フィフス・エクスプロージョン』!」


轟音と共に世界がはじける。

岩。

炎。

雷。

風。

水そして氷。


幾つもの属性を混ぜ合わせた球体は、豪雨ごと魔物を飲み込んだ。


凄まじい破壊力だった。

跡形もなく消滅した魔物を見て、エリアルは呆然とする。


「……今のは……サーミャの魔法?」


「自分を死に追いやった魔法だけどな、外で使うと完璧だな」


サーミャは肩を竦めた。


「それより無事か?」


その言葉にエリアルはようやく息を吐く。


助かった。

本当に。


あと少し遅ければ危なかった。


そう思うほどに。

胸の奥は重かった。


――結局。

また助けられた。


自分は誰も守れなかった。


ガイゼルも。

ロザリナも。

自分自身ですら。


その現実だけが心に残った。





サーミャの出現で形勢は完全に覆った。

スレイナは舌打ちしながら身を隠す。


「くそ、やはり伏兵を……」

「二人だと見せかけて、私に罠を張るなんてね」


スレイナの口角が上がる。


「ルナリカ……面白いガキだ」


不気味な笑顔で次の一手を目論むスレイナであった。





その後。

三人は馬車の中で状況を整理していた。


「組織が直接動いてきたってことか……」


サーミャが眉をひそめる。


「おそらく」


ロザリナも頷いた。


「今回は偶然ですが、ミヤが来てくれて助かりました……」


「いやいや」


サーミャは首を振る。


「アジャンレ村でルナの両親とあってさ……」

「家族だけにしてやろうと、シャルと風呂に入ってたんだ」

「あいつ、風呂でうたたねしてたんだけどさ」

「急に目を覚まして――」


『リーナ達が危ない』


「今すぐ行けって大騒ぎでさ、慌てて風呂から上がって飛んできたってわけさ」

「どっちの顔を浮かべて飛ぶか悩んだんだけどな……」

「リーナで正解だったわ……事情も分かったしな」


シャルの予知夢……。

彼女は毎回ではないが、突然、未来が見える理由がわからない力をもっていた。

ルティーナ達と初めて出会ったのもこの予知夢の能力がきっかけであった。


だが、エリアルだけが俯いていた。


「……」


「エル?」

「元気ねぇな」


サーミャが声を掛ける。


少しの間を置いて。

エリアルは絞り出すように言った。


「僕は……」

「役に立てなかった」


ロザリナが顔を上げる。


「そんなこと――」


「あるよ」


エリアルは首を振った。


「豪雨になっただけで剣がまともに使えなくなった」

「敵の再生にも対応できなかった」

「ガイゼルさんも守れなかった」


剣を持つ手が震える。


「僕はまだ弱い」


その言葉にサーミャは少しだけ笑った。


「だからだろ」


「?」


「ルナがエルを連れて来いって言ってたぜ」


エリアルが顔を上げる。


「……え?」


「お前の憧れのバルストさんが、指南してくれるってさ」


その一言で。

エリアルの瞳に光が戻った。


もっと強くなれる。

もっと守れるようになる。


その可能性だけが今の彼を支えていた。



そして深夜、サーミャたちは、馬車の中で雨が弱まるのを待っていた。


ロザリナは魔力回復に専念し、エリアルとサーミャは前後から追撃がないか周囲を警戒していた。

やがて陽が明けようとした頃――。

ようやくガイゼルが目を覚ます。


「ここは……?」


「気が付きましたか?」


「お、おぉ……ロザリナか」


「一体何が起こった? 俺は……確か……って――」


ガイゼルは自分の服装を見て驚く。


「なんじゃこりゃーっ!」


ガイゼルは驚きながらも、襲撃中の出来事を聞き、自分が落雷で死にかけたことを知った。


「ロザリナ、エリアルありがとな……」


その言葉に、エリアルは頭があがらなかった。



「って、もう一人――誰だ?」


「あ? あたいだよ。旦那」


ガイゼルは目を疑った。


「え、お前……サーミャか!? どうしてここに」

「それに、なんだその髪!?」


「あはは、気にすんな」

「長い話になるから、また今度な」




そして昼すぐに、無事にノスガルドへ帰還することができた。


カルラの宿で部屋を確保した後――


ロザリナを残し、サーミャとエリアルだけが転移でアジャンレ村へ向かった。





その頃。

アジャンレ村では、ルティーナたちはサーミャの帰りを待っていた。


不安そうなルティーナ。

そんな中、黒い空間がルティーナの目の前に開く。


姿を現したのはサーミャとエリアルだった。


「よかったですぅ~間に合ったんですねぇ」


「遅いから心配しちゃったよぉ」


ルティーナは安堵の息を吐く。


「リーナがガス欠でさ、充電に時間かかっちまった」


しかし。

エリアルの表情は暗いままだった。


ルティーナの表情が変わる。


「何があったの?」


サーミャは頷く。


「あぁ、奴らが動き出した」


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