↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました ~異世界召喚失敗!? 少女の中に宿った勇者の冒険譚~  作者: うにかいな
第陸章 ~「アジャンレ村」の危機~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
115/171

第115話 「アンナ」ノ記憶 ~前編~

ルティーナたちは、ついにアジャンレ村へと辿り着いた。

だが、一番喜んでいたのはシャルレシカだった。


懐かしい森の匂い。

幼い頃から見慣れた景色。

胸の奥がじんわりと温かくなる。


「あぁ~これですよぉこれぇ」


シャルレシカが浮かれている、その一方でルティーナの口元には悪戯っぽい笑みが浮かんでいた。


「ふふふ……」


「どうしたんですかぁ~?」


隣を歩くシャルレシカが不思議そうに首を傾げる。


「いやね、お父さんとお母さんを驚かせようと思ってさ」


半年ぶりの再会だ。

突然目の前に現れたら、きっと驚くだろう。


そんな光景を想像しただけで、思わず頬が緩んでしまう。


だが――。

シャルレシカはなぜか苦笑していた。


「何よ、シャル?」


「あぁ、それは無理だと思いますぅ――」


ルティーナの野望は、虚しくもシャルレシカの自動索敵により打ち砕かれる。



「る、ルティーナじゃないかっ!」


「――っ!?」


聞き慣れた声が夜の森に響いた。


ルティーナが勢いよく振り向く。


そこに立っていたのは――。


「お、お父さん!?」


バルストだった。


「シャルっ! 知ってたのね!」


「さすがにぃ……気配はわかりますからぁ~」

「ごめんなさいぃ」


してやられた。

せっかく考えていたサプライズは、開始数秒で失敗である。


ルティーナが頬を膨らませた、その直後だった。


「ルティーナぁぁぁぁっ!」


「うわっ!?」


バルストが泣きながら飛びついてきた。

勢いのまま抱き締められる。

いつもの溺愛のシーンが再現される。


「半年も連絡がないから心配したんだぞぉぉぉ!」


(げっ、始まった……)


ルティーナは顔を引きつらせた。


一方。

その様子を見ていたサーミャは完全に固まっていた。


「(え、えぇ~)」

「(近衛師団長とも肩をならべたっていう……剣豪バルストなんだよな……この人?)」


サーミャは口があいたまま閉まらない。


「(ここまで親バカなのかよ……)」

「(――あいつとは大違いだな)」


すると――。


バシンッ!


乾いた音が響く。


「痛たっ!」


「あなたっ!」


アンナが容赦なくバルストの頭を引っ叩いていた。


「シャルちゃんと、そこのお嬢さんがドン引きしてるじゃないの!」


「ううっ……だってぇ」


「だってもクソもありませんっ!」

「半年ぶりだからって情けない姿を、子供に見せないでください」


しゅんと肩を落とすバルスト。


その姿にルティーナは思わず吹き出しそうになる。


相変わらずだ。

本当に何も変わっていない。

そのやり取りが妙に嬉しかった。



「ごめんなさいねぇ」


アンナはサーミャへ向かって頭を下げた。


「主人が騒がしくて」


「あ、いえいえ……」


サーミャも慌てて手を振る。


「大丈夫ですよ」



アンナは優しく微笑んでいた。


「あ、お母さん」


ルティーナがサーミャの事を紹介する。


「この美人さんは、サーミャ=キャスティル。通称ミヤ」

「私の仲間の冒険者、大魔法使いよ!」


「よ、よろしくお願いします」


美人と紹介されてしまった以上、珍しくサーミャが猫を被っていた。


「(あはは……いつもの仕返しよ)」


(完全に別人だね)


馬琴(まこと)も苦笑する。



だがその時。

バルストの表情がわずかに変わった。


「魔法使い? キャスティル?」


しかしサーミャはそっと口元に指を当てる。


それだけでバルストは察した。


「……あ」

「こんな所でもなんだ、孤児院に行くぞ」

「あれから、だいぶ作り直しちまったけどな」


バルストは、それ以上は何も聞こうとしなかった。

サーミャはわずかに表情を緩め頭を下げた。



そして、一行は孤児院の客間へ案内された。

久しぶりの再会を祝うように夕食を食べることにした。



「ねぇねぇ聞いて、お父さん、お母さん」


ルティーナはこの半年の出来事を語った。


冒険者になったこと。

仲間と出会ったこと。

『零の運命』を結成したこと。


そして――。

武闘会で優勝したこと。


「ゆ、優勝だって……」


バルストは何度も頷いた後に慌てふためいた。


「まさか半年でそんな事になっていたなんてな」


ルティーナは話を聞いてくれることより、会話ができることが何より嬉しかった。


「……驚いた?」


「驚くどころじゃないわよ」


アンナも苦笑する。


「他にも凄い人仲間がいるのよ」


ルティーナは嬉しそうに頷いた。


「エリアルはお父さんと同じ剣士で」

「ロザリナはお母さんと同じ回復師なんだよ」


二人はパーティーとして必要な人材が全て揃っていることに唖然とする。


「それだけじゃないわ! 私はまだ『銀』だけど、他の四人は金級冒険者なんだから」


「ルティーナが銀でもたいしたものだが」

「皆、金だと!?」


バルストの目が輝く。


「エリアルか、ぜひ会ってみたいな」


「憧れてるって言ってたから、きっと喜ぶと思うよ」




しばらく談笑した後。

ルティーナは本題を切り出すことにした。


「実はね、お母さんにお願いがあるの」


「お願い?」


「うん」


ルティーナは真剣な表情になる。


「八年前の私の事故のこと」

「シャルに記憶を見せてほしいの」


空気が静かになった。


アンナは、娘がわざわざここへ訪ねてきた理由をあえて聞かなかった。


「わかったわ」


シャルレシカが水晶を取り出す。

ゆっくりと記憶を辿り始めた。


しばらくすると、水晶の中に映像が浮かび上がる。


森。

崖。


そして――。

血まみれの少女。


「……っ」


ルティーナは息を呑んだ。

全身を赤く染めた少女。


それが自分だと理解した瞬間、胸の奥が重くなった。


「(あれ……私なの)」


(よく生きてたな)


馬琴(まこと)も言葉を失う。



アンナが慌てて駆け寄る姿。

治療を施す姿。

力不足に絶望する姿。



次々と映し出されていく。


そして――。


「待った!」


突然サーミャが声を上げた。


「今、何か光らなかったか?」


「え?」


「もう一回見せてくれ!」


映像を何度も確認する。



すると――。


崖の上。

木々の隙間。

そこに確かに小さな光が見えた。


「……あれが水晶?」


ルティーナが呟く。


「やっぱり」

「お花畑の近くね」


アンナも頷いた。


「あの日、あなたを探して崖の方へ行ったの」

「靴だけ落ちていたから慌てて下を覗いたら……」

「血だらけのあなたが倒れていたの」


その先は言葉にならなかった。


ルティーナも理解している。

おそらく間違いない。

自分は水晶の破片に触れて転落した。



そして――。

馬琴(まこと)はその時から……。



そこでバルストがふと思い出したように口を開いた。


「そういえば、お前が大怪我をした前日……王都で大事件があったんだ」


「王都?」


ルティーナが首を傾げる。


「もしかして、王城爆発事件?」


ヘギンズから聞いた八年前の事件の話がよみがえる。


部屋の空気が変わった。

バルストは記憶を辿るように続ける。


「よく知ってたな」

「その時、王様が大怪我を負ったらしい」


そこまではヘギンズから聞いていた通りの話。

だが――。


「その時、夜空にたくさんの光が、城から飛んで行ったのを見たんだよ」


「光?」


「あぁ」

「もともと大きな流れ星が夜空を飛んる不気味な日だったんだがな……」



その言葉に馬琴(まこと)の意識が強く反応した。


(飛び散る光……?)

(まさか――)


脳裏に浮かぶのは水晶の破片。

世界中へ散った可能性。


「気付いた奴は少ないんじゃないかな?」

「あの時、城内は大混乱だったし」


そして何気なく続けた。


「そういや、その時一緒に警護していたベルハットの奴も――」

「二年後に故郷へ帰ったらしいんだが」

「それ以来、音沙汰がなくなっちまったな」



マコトの胸に強い違和感が走る。


点だった情報が。

少しずつ線になり始めていた。


(王様が大怪我……?)

(そして水晶の破片……)


(どういうことだ――)


静かに、しかし確実に。

新たな謎が輪郭を現し始めていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。