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見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました ~異世界召喚失敗!? 少女の中に宿った勇者の冒険譚~  作者: うにかいな
第陸章 ~「アジャンレ村」の危機~

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第112話 「誉美《ともみ》」ノ幻影

馬琴(まこと)はシャルレシカの水晶に映った映像に驚愕する。


見間違えるわけがない。

あの茶色の長髪と一緒に選んだウェディングドレス……自分がこの世界に召喚されたのなら――。


誉美(ともみ)……)


(本当に、お前なのか……)


会いたかった。

もう二度と会えないと思っていた。


それなのに――。



その言葉に、ルティーナは目を見開く。


――その推測が正しいなら。

剣の中には誉美(ともみ)が宿っている可能性がある。


だがエリアルは、ルティーナのように会話しているわけではない。


(何かが違う……)


馬琴(まこと)は水晶に映しだされる映像を見つめ続ける。


(ルナに俺の意識が取り込まれた時と同じはずなのに……)


そこでルティーナ達は、エリアルに魔剣を持たせたまま何度か呼びかけを試みた。


「トモミさん? あなたはトモミさんなんですか?」

「もし聞こえているなら、返事をしてもらえませんか?」


だが――。


魔剣に変化はない。

気配も感じられない。



馬琴(まこと)も必死に叫ぶ。


誉美(ともみ)っ!)

(聞こえてるんだろ? 返事をしてくれよ!)


「(マコト……)」


ルティーナの意識の中で、どんなに叫ぼうと届くことはなかった。


(いや……待てよ)


ふと、馬琴(まこと)はミレイユから聞いた話を思い出した。


スウエンが水晶の破片を見つけた時のこと。

剣で触れた瞬間、水晶と剣が光り出し、聞いたことのない言葉が響いたという。


(あれはたぶん、日本語だ)


「(あぁ、マコト達の世界の言葉だっけ?)」


(何かを伝えようとしていたんじゃないか……?)


(剣と一体になる直前だったから話せたのか……)

(剣は無機物……だから俺みたいに意識を介することができないのか?)


「(マコトは、私が居るからね)」


考えても答えは出ない。



「ところで……」


ロザリナが口を開く。


「トモミさんは、こちらの声を聞けているのでしょうか?」


「僕も、それは気になりますね」


エリアルが魔剣を見つめる。


「そもそも、僕の声に応えて魔剣になるのだから……」

「何かは聞こえていると思うんです……」


「うーん……」


ルティーナも腕を組む。


「シャルは、私の中に何かいるって気配を感じてたわけだから、トモミさんがいれば違和感を感じるわよね?」


「そうですね」


ロザリナが優しく頷く。


「でも、少しは前進しましたよ」


「だな」


サーミャも頷く。


「まぁ元気だせよ」

「マコマコ」


(お前も言うなっ)



エリアルは魔剣を軽く握り直す。


「ここにトモミさんがいるかもしれないなら……剣も今まで以上に大切にしないといけないですね」

「いつか、ここから出してあげる方法を見つけないと」


(ありがとう、エル)

誉美(ともみ)がいるなら……)

(俺も、もう少し頑張れそうだ)


「新しい目的ができちゃったね」


ルティーナが微笑んだ。




「――さてさて」


サーミャが手を叩く。


「ルナの悩みも片付いたことだし、トリはあたいの番だな」


そう言いながら、鞄から何かを出そうとする。


取り出したのは、血で汚れ、しわくちゃになった数枚の紙だった。


「うわっ」


ルティーナが思わず顔をしかめる。


「何それ……」


「そんなゴミを見る目で見るなよ」


「これと、ミヤが生還できたって……関係あるの?」


「大事な戦利品なんだぜ」


サーミャは得意げだった。


「イスガで一人になった時に、偶然、書庫にたどり着いたんだ」

「本ごと持ち帰れなかったから、必要そうなところだけ破ってきた」


そして、その中から一枚を机に広げる。

そこには魔法陣と呪文が記されていた。


「『ディメンジョン・テレポート――転移――』?」


全員が紙を覗き込む。


「自分の思った相手の元へ転移する魔法らしい」


「それじゃあ……」


ルティーナが目を見開く。


「ミヤは瀕死の状態で、それを使ったの?」

「いや、こいつは『光』魔法と攻撃五属性が使えねぇと駄目なんだ」


「ならどうして?」


サーミャは肩を竦めた。


「あたいはあの時、本当に死にかけてたんだ」

「そして、最後にヴァイスに会いたいって願いながら、詠唱してたんだ」


そして、サーミャは自分なりの推測を語り始める。


『鍵』は転移魔法を満たす魔道具。

そして、銅像に『鍵』を差すことで出入りが出来たこと。


それが、自分が助かった理由だと説明する。


「だけどよぉ、この鍵……もう、反応しねぇんだよな」


聞き終えた後、皆は納得したように頷いた。



だが――馬琴(まこと)は。


(いや……)

(それだと少しおかしい)


しばらく考えた後、答えに辿り着く。


「マコト、何か分かったの?」


(あぁ)


ルティーナが代わりに説明を始める。


鍵そのものに全属性があったわけではないこと。

光属性だけが補助として使われていた可能性。


「ミレイユさんも『1つ欠けた魔法を補うもの』って言ってたしね」


銅像の仕組み。

イスガへの出入りの法則。


『鍵』をもっているだけ転移できたら話が破綻する。



一つ一つ整理していく。


話が終わる頃には、サーミャも腕を組みながら唸っていた。


「なるほどな」

「……確かにその方がしっくり来る」

「でもよぉ、なんで光魔法が発動したんだ?」



その時だった。


「あっ……」


ルティーナが思い出したように声を上げる。


「そういえば……」

「私たちが脱出しようとした時、不自然な爆発音が聞こえたのは――」


「もうルナが泣きじゃくって、『私につかまって』って叫んでた時ですか?」


「それは余計だけど……あの時、だったのね」


それは、サーミャが最後に放った最上級攻撃魔法による爆発音。


しかし、ルティーナ達が脱出したことで、サーミャの持っていた『鍵』も反応した。


サーミャは元々、攻撃五属性を扱える。

足りなかったのは『光』だけ。


そして、その瞬間だけは違った。


『鍵』に込められていた光属性の魔力によって、不足していた条件が補われ――。

魔法の条件が揃った。


その効果で、サーミャはヴァイスが眠る墓へ転移していたのだ。



不思議なほど辻褄が合った。


「すごい偶然ですね」



サーミャが呟く。


「あたいがあの時、ヴァイスの事を思ってなかったら助からなかったのかもな」


「そうですね」


エリアルも頷いた。


「ルナの判断が遅れていたら、ミヤの治療も間に合わなかったかもしれませんね」


「(……あの時は、怒鳴ってごめんねマコト)」


(気にすんな)


馬琴(まこと)も少しだけ安堵した。



ずっと引っ掛かっていた疑問が、ようやく形になった気がした。


「そこで、ミヤ」


ルティーナが言う。


「マコトが実験したいことがあるんだって」


「「「「?」」」」


全員の視線が集まる。


考えは単純だった。

イスガの鍵が果たしていた役割を、別の魔道具で再現できないか。


そのために取り出したのは、ルティーナの『ヒーリング・ストーン』の首飾りだった。


「あっ」


ロザリナが納得したように声を上げる。


「そういうことですか」


「なるほど、鍵の代用品か?」


サーミャもすぐ理解した。


エリアルは椅子から立ち上がる。


「僕を目印に試してみますか?」


そう言いながら、宿の外へ向かった。


窓からのぞくと、エリアルが外から手を振っている。

それを見たサーミャは首飾りを身に着ける。


ルティーナはシャルレシカに、サーミャへ抱きつくよう頼んだ。


「へ?」


サーミャが目を瞬かせた。


「なんでだ?」


「一人だけ転移するのか、接触している人も一緒に転移するのか調べるんだって」


「なるほどな……」


サーミャは納得した。

そして深く息を吸った。


「『キュア・ヒール』」


柔らかな光が身体を包む。


――次の瞬間。


頭に思い浮かべるのは、エリアル。

静かに呟く。


そして――


「『ディメンジョン・テレポート』っ」


サーミャとシャルレシカの姿が眩い光に包まれ――。


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