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見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました ~異世界召喚失敗!? 少女の中に宿った勇者の冒険譚~  作者: うにかいな
第陸章 ~「アジャンレ村」の危機~

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第110話 「ルティーナ」ノ秘密

挿絵(By みてみん)


バルステンで死に別れたと思っていたサーミャが生きていた――。


その事実は、ルティーナにとって何よりも嬉しい出来事だった。


『碧き閃光』の拠点では再会を祝う宴が開かれ、夜通し続いた大騒ぎも明け方にはようやく終わりを迎える。


長い間まともに眠れていなかったルティーナ達は、その反動もあって深い眠りへと落ちていった。



しかし――。

皆が寝静まった後、ルティーナだけ不意に目が覚め誰も起こさないように外へ出ていた。



「(結局、お昼前になっちゃったね)」


(ははは。いつものことだな)

(ところで急にどうしたの? ルナ……疲れてるだろ?)


「(それはそうなんだけどさ……たまには一人で、ぷらっと歩きたくなっただけよ)」


(嘘つけ)


「(うっ……)」


即座に見抜かれ、ルティーナは苦笑した。


(皆に話すのが怖いんだろ?)


「(う……うん)」


否定はできなかった。


――これまで隠してきた秘密。


馬琴(まこと)の存在。

失われた記憶。


すべてを話した時、皆はどう思うのだろう。


受け入れてくれるのだろうか。

そんな不安が胸の奥に渦巻いていた。


「(私達の秘密を知っても……)」

「(みんな、これからも一緒にいてくれるかな?)」


(大丈夫さ)


馬琴(まこと)は迷いなく答える。


(むしろ危ないのは俺の方だ)


「(ぷっ)」


思わず笑みが零れた。


「(確かに……私も最初はマコトを追い出そうと必死だったもんね)」


(そうそう)

(『とにかく出ていってよ!』って言われた時は超困ったよ)


「(だって普通そうなるよ)」


笑った後、不意にルティーナの表情が曇る。



「(でも……もし、一人になっちゃっても、マコトは一緒にいてくれる?)」


(当たり前だろ!)


即答だった。


(ルナのお目付け役は俺しかいないからな!)


「(うん……ありがとう)」


胸の奥に溜まっていた不安が、ほんの少しだけ軽くなる。


そんな話をしているうちに、気付けば建設中の拠点の前まで来ていた。



『零の運命』の新たな拠点。

まだ工事中ではあるものの、建物の形はほぼ完成している。



石造りの立派な建物を見上げていると、現場で作業していた棟梁が気付き、大きく手を振った。


「早ぇじゃねぇか? もう帰ってきたのか」


「はい」


ルティーナは棟梁に、少し無理をしながら元気な返事をする。


「あと内装だけだ。順調なら一週間ちょいで完成するぞ」


「ありがとうございます」


ルティーナは頭を下げ、大工の皆を鼓舞する。


「皆さんも無理しないでくださいね」


「「「「「おおっ!」」」」」


職人達の元気な返事が返ってくる。



「(私達の拠点か……)」


思わず見上げる。

仲間達と過ごす場所。

帰って来られる場所。


そんな居場所がもうすぐ完成する。


(ルナ……)


「(うん……)」



この場所に、自分はこれからも居られるのだろうか。

皆が秘密を知った後も――。



ルティーナはしばらく建物を眺めた後、その場を後にした。


皆が起きた時に宿が取れなくなっては困る。

そう考えたルティーナは先にカルラの宿へ向かい、人数分の部屋を確保した。



昼過ぎになり、皆を迎えに『碧き閃光』の拠点へ戻った。

――だが、そこで待っていたのは予想外の光景だった。


「どこ行ってたんだよ!」


「ふぇぇ~ん……ルナぁ~!」


「本当に心配したんですよ!」


「今度はルナが……消えちゃったって」


どうやら大騒ぎになっていたらしい。


ルティーナは慌てて謝罪する。

眠れなかったので散歩していたことを説明すると、ようやく皆も落ち着いた。



その後、一行はカルラの宿へ向かう。


だが歩くルティーナの表情は、どこか硬かった。

仲間達も気付いている。

彼女がこれから話そうとしていること。


――それを恐れていることを。


「ルナ?」


サーミャが肩を竦めた。


「今さら何を聞いても驚かねぇよ」


「え?」


「お前の不思議な力を見てりゃ普通じゃないのは分かる」


横からロザリナも頷く。


「イスガで、あり得ない体験をしましたしね」


「……」


ルティーナは少しだけ目を伏せた。


「秘密は話すけど」

「実はね……私自身、分かっていないことがあるの」


「分かってない?」


「うん、八年前に失った記憶……」


仲間達が息を呑む。


「だから、宿に着いたら……シャルに過去を見てもらいたいの」


「それが分かれば、全て話せると思う」


「僕の魔剣と同じで、わからないことは語れないものね」


エリアルが頷いた。


「私はぁ~、出会った頃から何となく分かってましたよぉ~」


「えっ?」


意外な言葉にルティーナが目を丸くする。


「私、気にし過ぎてたのかな……」


「少しは私達を信用したら?」


ロザリナが優しく笑った。



「みんな……ありがとう」


張り詰めていた胸の奥が少しだけ軽くなる。


まだ全てを話したわけではない。


それでも――。


一人で抱え込む必要はないのかもしれない。

ルティーナの表情が、ほんの少しだけ明るくなった。



宿へ到着すると、ルティーナは皆に見守られながらシャルレシカの過去視が始まる。


「八年前ぇ、『ウェンの森』でお花を摘みに行った時の記憶を探せばいいんですよねぇ?」


「うん、お願い」


シャルレシカは静かに目を閉じる。

やがて水晶が淡く光り始めた。


しばらくの沈黙――。

皆、息を呑む。


「……見つけましたぁ」

「これですねぇ」


水晶の中に風景が映し出される。

広がっていたのは、花々が咲き乱れる美しい花畑だった。


そこに幼いルティーナと思われる少女が歩いている。


そして――。

花畑の奥で、不思議な光を見つけた。


吸い寄せられるように近付いていく。


地面に落ちていたのは、美しく輝く水晶の欠片だった。


少女は魅入られたように手を伸ばす。


その瞬間――。

凄まじい光が溢れ出した。


画面全体が白く染まる。



「うわっ!?」


サーミャが思わず目を細めた。


「何も見えねぇ!」


「――これが……記憶を失う前の私」

「(やっぱり水晶に触れていたんだね)」


(俺の予想通りか……)


馬琴(まこと)の声が響く。


(――光に驚いて、すぐそこの崖から足を踏み外したんだろうな)



「う~ん、この後は完全に意識が消えてますぅ~」


「水晶に触っただけで七年間も?」


エリアルが驚きを隠せない。


「僕の魔剣も水晶が関係している」

「それじゃルナも……」


「時期は同じですものね」



――その時だった。


(ルナ)

(俺がお前に取り憑いたのは、やっぱり半年前じゃない……・)


「(……)」


(八年前だ)


――。


ルティーナは静かに目を閉じる。


(みんなへの説明、任せてもいいかい?)


「(うん)」


意を決したようにルティーナは顔を上げた。



「待たせてごめんね」

「これで、やっとみんなに話せる」


まずはエリアルに前提を理解してもらうために、シャルレシカと出会った頃まで遡り、自分の父親が暗殺されそうになった話から始める。


そして――。


「私の本当の名前は、ルティーナ=リバイバ」


その瞬間。

エリアルの目が大きく見開かれた。


「リバイバ……って!?」

「まさか……剣豪バルストさんの!?」


「そう」


ルティーナは静かに頷く。


「私は、バルスト=リバイバの娘よ」


部屋の空気が張り詰める。


「でも、お父さんは生きてるの」

「死んだことにしてるだけ」


「っ!」


サーミャが捕捉する。


「そんで、あたいとリーナは、こいつの父親を暗殺しようとした主犯を探すの手伝ってるんだ」

「そこまではルナから聞いてる」



そしてルティーナは語り始めた。


誰も知らない七年間。

意識を取り戻したあの日のことを――。


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