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見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました  作者: うにかいな
序章 ~召喚~

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第11話 陰謀

夜の帳が落ちようとしている――

ルティーナは空を駆けていた。


冷たい風が頬を打つ。

だが、その速度は落ちない。


「街ってあっちだよね……」


(……なんだあれは?)


馬琴(まこと)の声が、鋭く割り込む。


(さっき左側を見た時に、何か見えたぞ?)


「……え?」


視線を向ける。

山の麓――森の外れ。

そこから、細く立ち上る煙。


「……火事? でも燃えてないわよね?」


ルティーナは一瞬迷った。


だが――


(何か気になる……)


進路を変える。

煙の元へ。


高度を落とし、気配を殺しながら接近する。


やがて見えてきたのは――

崩れた石造りの遺構。


そして、その中心に――


「あれは……」


砕かれた巨大な水晶柱。

淡い光を失い、黒く焦げたそれは――


「ば、バリア・ストーン……」


守護結界の核。

本来、この森を魔物から守っていたはずの存在。


それが、完全に破壊されていた。


(……間違いないな)


「うん……だから、魔物が……」





「おい、まだ終わってねぇのか?」


――男の声が響き渡る。

胸がざわつく。


ルティーナは咄嗟に身を伏せ、草むらに潜む。

視線の先。

そこには、二人の男がいた。


「ごめんよ兄貴……今から着けるところっす」


一人が首輪を取り出す。

黒い、不気味な装飾。


「さっさとしろ。バルストの死体、確認しに行くぞ」



――その言葉で。

ルティーナの思考が止まった。


「(……今……お父さんの死体――)」


(落ち着け、ルナ!)


「(くっ――!)」


心臓が跳ねる。

呼吸が乱れる。

だが、耳は確かに捉えていた。


『バルストの死体』と。



(……こいつら)


怒りが、静かに燃え上がる。


(とにかく捕まえて、吐かせるぞ)


「(う……うん)」


ルティーナは、自分の胸に手をあてる。


(すける)


自分を包み込む大きさの漢字を描く。

そして姿が見えなくなる。


続けて、地面に手をついた。

描くのは――【凍】。


狙いは、男達の足元。


「起動」


パキィィィン!!


――瞬間。

二人の男の足元が凍りついた。


「なっ!?」


「なんだ! これはぁ!?」


氷が一気に広がり、膝下まで拘束する。


動けない。

逃げられない。


理解できな状況に、慌て狂う男達。

だが、姿は見えない。


ルティーナはさらに距離を詰めた。


(あいつの、武器を――)


「(うん)」


静かに短剣を抜く。

そして――弾く。


カンッ!!


「ぐっ!?」


男の手からナイフが飛ぶ。


一瞬の隙。

背後へ回る。


(今だ)


後頭部へ手を当てる。


【痛】を転写。


「起動」


「あがあああああああっ!?」


男は絶叫し、身動きが取れないまま、身体をうならせながら苦しむ。


「あ、兄貴! 何が怒ってるんだ……!」


もう一人が怯える。

声が震えている。


「さぁ……質問に答えて」


ルティーナの声が、静かに響いた。

怒りを抑えながらも、冷たい口調で――。


「『バリア・ストーン』を壊したのは、あなたたちね?」


「なんだよ! てめぇ! どこに居やがる!」


「質問に答えないと、ああなるわよ!」


煽るように脅す。


「し、知らねぇよ!」


即答。

だが、目が泳いでいる。


(嘘だな)


「(うん)」

「それじゃあ――」


さらに、一歩近づく。


「おと、いえ、バルストさんを殺そうとしたわよね?」


沈黙。

数秒。

そして――


「ははっ、殺そうとしたんじゃなくて、殺したんだよ!」


男が叫んだ。

開き直ったように。


「賞金だよ! これは依頼だ!」


吐き捨てる。


「名前も知らねぇ奴だったが、金貨100枚だぜ!」


(……やっぱりか)


マコトが低く呟く。


「デフルウに『仕込んだ』んだよ……!」


「仕込んだ……?」


「『カオス・ストーン』だ!」


聞き慣れない言葉。


「殺されたら仲間に、殺意を伝播させる魔石だよ……!」


ルティーナの瞳が見開かれる。


「最初の一匹に埋め込んで……あとは連鎖だ!」


「……」


「結界を壊せば、あとは勝手に群れが集まる……!」


つまり――


「(……全部、仕組まれてた……?)」


声が震える。


(完全に計画殺人だな)


「なんで……」


「さぁな、なんか見ちまったんじゃねぇの? やばい現場でも」


男が吐き捨てる。


その瞬間――


カチリ、と。


嫌な音がした。


「……え?」


のたうち回る男の首元に異変。


「ぐ、あ……?」


締まる。

急激に。


「ぐ、苦し……やめ――」


ミシッ――。


鈍い音。


ゴトリ。


首が、落ちた。


「……っ!」


息が止まる。

視界に焼き付く。悲惨な現実――。


(まさか、主犯は別に……こいつらはただの実行犯……)

(最初から消すつもりだったのか?)


「ひ、ひぃぃぃ!!」


残った男は、絶叫する。


「俺は、正直に答えたじゃねぇか! 殺すなんて聞いてねぇ!!」


震えている。

完全に崩れている。


「や、やめてくれ! 助けてくれ!」


だが――

ルティーナは、冷たく言った。


「あなた達、用済みってことよ」


「やめろ! やめてくれ!!」


「その依頼した男の名前は? 早く言いなさいよ!」


「わ、わからねぇ! 本当に知らねぇんだ!!」


その瞬間。


カチリ。


「いやだぁぁぁぁ!!」


首輪が締まる。

抵抗も虚しく――

同じ結末。


静寂が戻る。

風の音だけが響く。


「……」


(……何がどうなってる?)



ルティーナは、しばらく動けなかった。


(とにかく、皆のところに戻ろう!)


(う……うん)


ようやく、顔を上げる。

再び空へ。



「お……お父さん、狙われてる……なんで!」


呟く。

そして――馬琴(まこと)は冷静につぶやく。


(このまま街に帰ったら、また……狙われる)


「そ、そんな……」


少しの沈黙。


(……『死んだことにする』しかない)


「……え?」


(あくまでも偽装だ! それしかない)


ルティーナは、理解が追い付いていない。


(ルナの心に寄り添ってやりたいが、今は時間がない)


「うん……」


だが迷いは、なかった。

家族を守るために。


全てを捨てる。

その覚悟を胸に――


ルティーナは羽ばたく。


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