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見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました ~異世界召喚失敗!? 少女の中に宿った勇者の冒険譚~  作者: うにかいな
第伍章 ~砂漠ノ王国~

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第105話 魔物ノ正体

ルティーナとロザリナは写し取った見取り図を頼りに、エリアルとシャルレシカ達が立ち止まっていた部屋がある位置に近づくルートを選びながら進んでいた。


「シャルなら索敵で、私達の接近に気付いてくれるはずよ」


そう信じて。

しばらく通路を進んだところで、ロザリナが地図へ視線を落としたまま口を開く。


「ルナ、このまま進むと次の部屋で行き止まりですよ」


「そうなの? こっちの方が早いわ」


「だって……」


ロザリナが指差した先には、確かに袋小路となる部屋が描かれていた。


「見取り図どおりに道を進めば遠回りですが……」


「いっそ、シャル達へ近づけるなら、この壁を壊して一度外へ出てから、こっちの建物に入っちゃえばいいのよ」


ロザリナは、シャルレシカが言ってた『外に何か居る』という言葉に不安はあった。

しかしルティーナの作戦なら、隣の建物まで二十メートルほど。


「そうね、そうしましょう」


ロザリナも頷く。

万が一魔物がいても、自分達なら対応できる。


そう判断したルティーナは、通路の壁へ手を伸ばした。


そして、壁に漢字を描く。


(あな)


二人が通れるぐらいの大きさの穴が開く。







その頃――。

サーミャは来た道を引き返していた。

とはいえ、ただ戻っている訳ではない。

書庫で過ごした時間で頭が少し冷静になっていた。


鎧の人形との戦闘に夢中になっていたせいで、何か見落としている可能性がある。


――そう考えたのだ。


「くそっ……」


通路を歩きながら舌打ちする。


「焦って突っ込んだのは失敗だったな」


ルティーナが居ない今、自分が考えなければならない。

いままで頼りにしすぎた……その現実が、少しだけ頭を冷やしていた。


周囲へ視線を巡らせる。


壁。

床。

天井。


些細な違和感すら見逃さないよう注意深く観察していく。


そして。


「――ん?」


サーミャの足が止まった。


壁の一部。

――いや。

壁に見える部分。


手で触れる。


「あるじゃねぇか……扉」


思わず笑った。


普通に歩いていたらまず気付かない。


「このまま戻っても結果は見えてる――行くっきゃねぇだろ」


サーミャは扉へ手を掛けた。


扉を開くとその先には階段が見えた。


「今度こそ、当たりか?」


小さく呟く。

そのまま駆け上がる。


深呼吸を一つ。


勢いよく扉を蹴り開ける。





さらに、時同じくして――。

シャルレシカとエリアルは爆弾のことを知り、おののいていたが冷静になりつつあった。

自分達ではどうしようもない事だと割り切ろうと必死だった。


気分を変えるために、シャルレシカはみんなの状況を確認する。


「エルぅ~、ルナ達がぁ、どんどんこっちへ近付いてきてますぅ」


「本当かい?」


「はぁい」


シャルレシカは嬉しそうに頷く。


「ミヤもぉ、こちらへ向かってる訳じゃないですけどぉ、みんなが分かれた場所へ戻ってるみたいですぅ」


「なら、無事なのは間違いないね」


エリアルは小さく息を吐いた。

最悪の事態だけは避けられている。

それだけで気持ちは随分軽くなる。


改めて部屋を見渡した。


「この部屋には階段が一つ……その先に扉か」


「位置的にはぁ、この階段を上がるとルナ達に近付けそうですぅ」


「地上か……」


エリアルは階段の先を見上げた。


「外には何か居るんだろう?」


「う~ん……」


シャルレシカは首を傾げる。


「何かいっぱいいるんですよぉ……悪意は感じないんですけどねぇ」


それが逆に不気味だった。


「いずれにせよ、この部屋を出るしか合流は出来ない」


エリアルはそう結論づけた。


「行こう」


「はぁ~い」


二人は階段を上がり始める。


足音だけが静かに響く。


やがて。

最上部の扉へ辿り着いた。


「シャル、僕から離れないでね」


エリアルは万が一に備えて剣を構え、左手で扉を押し開く。







ルティーナ達五人は、場所こそ違えど偶然にも同じタイミングで地上へ出ることになる。


出た瞬間――。

乾いた風が吹き込んできた。


視界の先には荒廃した大地が広がっている。

空は砂塵に覆われ、絶えず渦を巻くように大量の砂が舞っていた。


皆、その状況に言葉を失った。


――これがイスガの街なのか。





三組の中で、エリアルとシャルレシカが出た場所では大きな異変が起こる。


「「「「「グルルルルッ――」」」」」


唸り声。

砂の向こうから現れた影。


エリアルは反射的に剣を抜いた。


人型。

だが明らかに人ではない。

皮膚は変色し、身体は歪み、目には理性の光がない。


それでも。

どこか人間の面影だけは残していた。


「……魔物?」


エリアルは眉をひそめる。


「いや……人?」


自分でも分からない。

そんな曖昧な存在だった。

だが相手は迷う時間を与えてくれない。

こちらへゆっくりと近寄ってくる。


「ひぃぃ~っ」


シャルレシカの声が震えた。


「悪意なんてぇ……感じないのにぃ……」


その言葉が、余計に不気味だった。


悪意は無い。

なのに襲ってくる。

理解できない。


だからこそ恐ろしい。


エリアルは剣を構えた。


「来るぞ、シャル!」


戦闘は避けられなかった。


エリアルとシャルレシカは、異形の魔物と戦っていた。


エリアルの剣は何度も魔物を斬り裂く。


だが。


決定打にならない。


「くっ……!」


『ソード・オブ・スラッシュ』で切れ味を最大まで高めている。


それでも傷を付けるだけ。


腕を切断しても。

砕いても。

すぐに再生してしまう。


「どうすれば倒せるんだ……!」


シャルレシカも『エクソシズム・ケーン』で魔法を使い応戦する。


だが――。

魔物は倒れない。


「雷は効きませぇ~ん」


「斬るのも駄目か」


エリアルは舌打ちした。


「だったら――焼くしかない」


剣へ炎を纏わせる。


「『ソード・オブ・ヴォルケーノ』!」

(【(ほのお)】)


赤熱した魔剣が唸りを上げた。


エリアルは一気に踏み込む。

魔物は本能のまま腕を差し出した。


次の瞬間。


左腕が切断される。

地面へ転がった腕は、そのまま炎に包まれた。


そして。


切断面も燃え続ける。

今度は、再生しない。


「――効いた!」


エリアルの目が見開かれる。


シャルレシカも即座に追撃した。


「ふっ『フレイム・インボルブ――火炎包囲――』ぅ!」


炎で魔物を飲み込む。


悲鳴にも似た咆哮。

苦しそうに暴れる魔物たち。


そこへ。

エリアルの一撃が叩き込まれた。


「終わりだ!」


魔物は真っ二つに裂かれる。


そして。

燃え尽きた。


灰だけを残して。


「……倒せた」


エリアルは肩で息をする。


だが疑問は残る。


「結局、何だったんだろうな」


「本当に悪意は無かったんだよね?」


「う~ん……」


シャルレシカは曖昧に頷いた。


確かに敵意は感じなかった。

だが襲ってきた。

矛盾している。


「足も遅そうだし」


エリアルは周囲を見る。


「走れば逃げ切れそうだな」


「先にルナ達と合流して――」


「ちょっと待ってくださいぃ」


シャルレシカが地面を指差した。


「さっき切り落とした腕からぁ、記憶を読んでみてもいいですかぁ?」


「……え、そんなことができるの?」


エリアルは頷く。


まずは火を消す。


『ソード・オブ・スプラッシュ』

(【(みず)】)


水流で燃えている腕の炎を鎮めた。


シャルレシカはそっと手を伸ばす。


そして。

腕へ触れた。


瞬間。

大量の記憶が流れ込む。


「っ――!」


シャルレシカが腰を抜かす。


「大丈夫?」


エリアルが慌てる。


シャルレシカは震える声で呟いた。


「これぇ……」


視線が腕へ落ちる。


「に、人間の腕ですぅ……」


「――!」


エリアルの息が止まる。


「どうやらぁ……」


シャルレシカは記憶を辿る。


「この国を襲った魔物の息吹を浴びてぇ……」

「こんな姿になってしまったみたいですぅ」


沈黙。

重い沈黙だった。


「じゃあ……」


エリアルは掠れた声で言う。


「この魔物達は……」

「イスガの民?」


シャルレシカは静かに頷いた。


エリアルは目を伏せる。

頭の中で繋がってしまった。


八十年前。

滅びの日。

逃げられなかった人々。

子供達。

家族達。

彼らは死ねなかった。


魔物へ変えられ。

今なお彷徨っている。


「もしかして……」


エリアルは苦しそうに呟く。


「襲ってきたんじゃなくて……」


ただ近寄って来ただけ。

助けを求めて来ただけ。

それが理由だったのではないか。


全て説明が付いてしまう。


二人の胸に、重い罪悪感が広がった。


だが。

感傷に浸る時間は与えられない。


「グルルルルッ――」


新たな唸り声。


十匹。

二十匹。

三十匹。


さらに魔物達が集まり始め、気づけば囲まれてしまっていた。



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