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見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました ~異世界召喚失敗!? 少女の中に宿った勇者の冒険譚~  作者: うにかいな
第伍章 ~砂漠ノ王国~

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第103話 爆弾ノ部屋

ルティーナたちがシャルレシカ達との合流に動き出す、十分ほど前――。


シャルレシカとエリアルもまた、突然の転移に巻き込まれて違う場所に飛ばされていた。


石造りの壁。

そして狭い通路。

静まり返った空気。


数秒前までいた通路とはまるで違う場所だった。


挿絵(By みてみん)


「シャル、大丈夫かい?」


「はぁ~い……」


シャルレシカは目をぱちぱちさせながら周囲を見回した。


「一体、何が起きたんですかねぇ~」


「ミヤとは完全にはぐれてしまったみたいだね……」


エリアルは小さく息を吐く。


今の状況は最悪ではない。

シャルレシカが居る。

索敵が使えるだけでも恵まれていると安堵する。


だが――。

自分達は『鍵』を持っていない。

もし目的地へ辿り着いても意味がない。


それが問題だった。


「シャル」

「今、皆の位置は分かるかい?」


シャルレシカは目を閉じる。

しばらくして、ゆっくりと口を開いた。


「ミヤはぁ~反対方向にぃ進んでますぅ」


「……そうか」


エリアルは眉をひそめた。


(変な無茶をしていなければいいけど……)


サーミャとは付き合いが浅い。

性格までは理解していない。

だけど一つだけわかる。

仲間の為ならきっと体を張る女性だと。


「ルナはぁ、リーナと一緒に居ますねぇ」


「無事なんだね?」


「あの後から動いてませぇ~ん」


「戦闘中じゃないなら安心かな」

「ルナなら、何か作戦を考えて行動に移すだろう」


エリアルは少しだけ肩の力が抜ける。


「とりあえず、僕達はルナに合流しよう」


「はぁ~い」


二人は通路の先へ進み始めた。


しばらく歩くと。

重厚な鉄扉が目の前に立ちふさがる。


「行き止まり……」


それまでの扉とは明らかに違う。

まるで重要施設への入口のように見えた。


「シャル、はぐれないようにつかまってて……また転移させられたらたまったもんじゃない」


そして、エリアルは両手で扉を押し開こうとした。


だが――。

びくともしない。


「重いっ……」

「もしかして、ここの鍵がないと開かないのか?」


エリアルは歩いてきた道を振り返る。


「後戻りしたらぁ、ルナ達から遠くなっちゃいますよぉ~」


その通りだった。

進路はここしかない。


「いっそ、斬っちゃえばいいんじゃないですかぁ?」


「……確かに」


エリアルは苦笑した。


「シャル、離れていて」


「はぁ~い」


エリアルは魔剣を抜く。


「――ソード・オブ・スラッシュ」

(【(ざん)】)


そして一閃。

鉄扉が音もなく斬り裂かれた。

数回斬りつけた後、斬り離れた部分を蹴り飛ばす。


――その瞬間だった。


鼻を突く異臭。


思わず顔をしかめるほどの強烈な臭気が流れ出した。


「うっ……こ、これは腐敗臭!」


「こ、これは酷いですぅ……」


シャルレシカは即座に風魔法を展開した。


「すっ『ストーム・サイクロン――旋風――』っ」


風が室内を巡り、臭気を多少押し流す。

完全には消えないが、耐えられない程ではなくなる。


そして、二人は慎重に中の様子を探ろうと暗闇に足を踏み入れる。

すると、突然――部屋の灯りが一斉に点灯した。


そこは百畳近くはあるだろう広い部屋だった。

そして――。

整然と並ぶ白骨死体。


まるで祈りを捧げるような姿勢で。

誰一人乱れず。

静かに。

眠るように。


「……」


エリアルは言葉を失った。


何故だろう。

初めて見るはずなのに。

胸の奥がざわつく。

説明のつかない感覚だった。


悲しみとも違う。

懐かしさとも違う。

ただ――。

見てはいけないものを見てしまったような気がした。


「エルぅ……大丈夫ですかぁ?」


「あ、ごめん」


エリアルは首を振る。


気のせいだ。

そう言い聞かせる。


「たぶん、ミレイユが言っていた避難していた人達なんだろうね」


「イスガ王に眠らされたって人達ですかぁ?」


「そうだと思う」

「(眠らされたまま死んだのか……)」


視線の先。

中央付近の骸骨の頭には王冠がかぶせてあった。


自然とエリアルの足がそこへ向かう。


何故だろう。

自分でも理由は分からない。

ただ、その骸骨から目が離せなかった。


「これはもしかして……イスガ王様?」


呟いた瞬間。

胸の奥が、ほんの少しだけ痛んだ。

理由は分からない。

だが、不思議と無視できない感覚だった。


「せめて……」


エリアルは王冠に残る宝石へ手を伸ばす。


「ミレイユにお父さんの形見ぐらい――」


王冠ごと持ち帰るわけにはいかない。

エリアルは王冠にはめ込まれた宝石へ手を伸ばした。



「――シャル」

「辛いお願いをしてもいいかな」


エリアルは静かに言った。

視線の先には、眠るように並ぶ白骨死体たち。


誰一人として抵抗した形跡はない。

混乱も。

争いも。

絶望の痕跡すら残っていなかった。


だからこそ余計に胸が苦しくなる。


「このままにしておくのは……嫌なんだ」


シャルレシカは頷いた。

言われなくても分かっていた。


「私も同じこと考えてましたぁ」


彼女は杖を握る。

そして床へ向けた。


「あっ『アース・エンベッド――融解――』ぉ」


魔法陣が広がる。

床が水面のように揺れた。

白骨化した民は王と一緒に、ゆっくりと床へ沈んでいく。


誰も取り残さないように。

誰も孤独にならないように。

まるで最後の眠りへ導くように。


――そして全てが消えた。

静寂だけが残る。


「安らかにお眠りください……」


エリアルは小さく呟いた。


返事はない。

だが、どこか空気が柔らかくなった気がした。



「そういえばルナ達はどうしているかな?」


シャルレシカが再び索敵を行う。


「ルナ達がこっちに近付いてきてますぅ」


「本当かい?」


「はぁ~い」


エリアルは少しだけ安堵した。


「でも不思議だね」

「どうして僕達の場所が分かるんだろう」

「ただの偶然かな?」


シャルレシカは首を傾げた。


「多分、わかってやってると思いますよぉ」

「ルナは昔からぁ不思議なんですよぉ」

「出会った頃からぁ何か隠してる感じがありましたしぃ」


エリアルも不思議には感じていた。


「でも悪い感じじゃないんですぅ」


エリアルは苦笑する。

その感覚には同意だった。


ルティーナは確かに普通ではない。

だが――だからといって疑うことはない。


「僕もそう思う」


シャルレシカも嬉しそうに頷いた。



そして二人は部屋の奥にある扉の前へ立った。


今度は一つだけ。


「ここしか先はないね」

「行こう!」


二人は肩を寄せるように並び。

慎重に扉を開いた。


何もなく普通に開く扉――その先には。


「……なんだ、ここは」


エリアルは言葉を失った。


広大な空間。

見たこともない機械。

巨大な装置。


透明な筒の中には、先ほど戦闘したはずの無数の人形や鎧が並べられている。


そして中央には――。

異様な存在感を放つ巨大な楕円形の黒い球体。


部屋そのものが異質だった。


ここだけ世界が違う。

そう錯覚するほどに。


「これ……本当に同じ世界の施設なのか?」


エリアルは息を呑む。

するとシャルレシカが奥を指差した。


「エルぅ~あれぇ」


エリアルは視線を向ける。


そこには銅像。

そして――胸元に鍵穴があった。


エリアルの目が見開かれる。


「封印装置――だよね」

「ミレイユが言っていた、封印すべきものって……これだったのか?」



ここで大きな問題があった。

見つけたのが自分達だった。


『鍵』を持っていない。


目的地に辿り着いた。


なのに何もできない。

そんな皮肉な状況だった。


ルティーナかサーミャがここにいないと何もできない。

シャルレシカがここにいる以上、彼女達に居場所を伝える手段がない。



エリアルが頭を抱える中、シャルレシカが巨大な球体を眺めていた。


「シャル?」


「ちょっと触ってぇ、何なのかぁ探ってみますねぇ」


「待っ――」


止める前に、すでに触れていた。


瞬間――。

シャルレシカの身体が大きく震えた。


「っ――!」


膝から崩れ落ちる。

顔色が真っ青になる。


「シャル!」


エリアルが慌てて駆け寄る。

だがシャルレシカは首を振った。


「だ、大丈夫ですぅ……」


震える声。

しかし明らかに様子がおかしい。


「何が見えたんだ?」


シャルレシカは巨大な球体を見上げる。


その瞳には恐怖が浮かんでいた。

今まで見たことがないほどに。


「これぇ……」


シャルレシカの声は震えていた。


「地上が全部……一瞬で消えちゃったんですぅ……」


「な、何を言ってるんだ?」


「街もぉ……人もぉ……山もぉ……大地もぉ――」

「全部ぅ……全部ぅ……」


シャルレシカは自分を抱き締めるように震えを抑えた。


「見たことない爆発でぇ……」

「全部ぅ……」

「なくなっちゃうんですぅ……」


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