姉弟
「全く、あの四人は…仲が良いんだか悪いんだか判らんな。」
四人の戯れを遠目にリーフが笑う。リースもそれを見て笑っていた。会話までは聞こえないが、あんな風に和やかにじゃれ合えるのならば良いことだ。
革命が終わってから、リースもリーフも忙しくなった。基礎的な計画はできあがっていたし、実務を行う人材もいる。それでも国の体制を転換し、運営していくというのは、簡単な話ではない。環境を整え、民の国として機能するように政策を練り、適材適所の人材を置く。最後の王族としての仕事が山積みだった。
「………そういえばずっと気になっていたんだけど…」
「どうしました?姉上」
「レンクとアマロはどうして私を監禁しようとしていたんだろう…?」
「ああ、それですか………」
「リーフ、何か知ってるの?」
リーフは手にしたカップをソーサーに置き、ひと息吐く。この弟は、本当にどこまで知っているのだろう。
「二人は最初から、姉上をこの革命に参加させないつもりだったんですよ。」
「え?!」
「万が一姉上が危険に晒されたらと思って、安全地帯に隔離しておきたかったようですね。…まあ俺としては、父は姉上にとって仇でもありましたから、姉上が望む限りは革命軍に参加して頂こうと思っていました。だから城下町でお会いできた時は、奇跡だと思いましたよ。」
あの二人から連れ出す手間が省けて良かった。カラカラと笑う弟は本当に幸せそうだ。
「あ、あともう一つ不思議なことがあるんだった。」
「不思議なこと…ですか?」
「うん。時々ね………知らない誰かに見守られている気がするんだ。城を探し回っている時、私の部屋に入った時にも似たようなことを感じたし………」
「姉上もですか?」
「え?リーフも?」
意外な言葉につい声が上ずってしまった。姉弟揃って感じた不思議な視線、一体何なのだろう。
「俺も時々、妙な視線を感じることがあるのですが………周囲を探ってみても、周りには何もいないのです。少々妙だと考えていました。」
「そっか………まあでも、実害が無いなら放置していてもいいかもね。」
ずっと見られている訳じゃないんだし、と微笑めば弟も微笑み返す。
「あとね、リーフ………お姉ちゃんとして、ずっと言いたかったことがあるんだけど…いいかな?」
「何でしょうか、姉上」
優しく微笑む弟に渡したのは小さな小包だ。
革命が終わってから、レンクに『随分昔にリースから預かってたんだ』と渡された物だ。中身が何なのか、その記憶だけは、すぐに取り戻すことが出来た。
「これは……?」
「開けてみて。」
言われるままにリーフは、くたびれた包みを開ける。中から現れたのは包みのくたびれ具合からは想像もできない、美しい髪飾りだった。二つの白い三角形の石に漆黒の剣が彫られ、気高い輝きを放っている。
10年前、お付きを連れてこっそり街に出た時、弟に似合いそうだと買ったものだ。リーフにプレゼントするつもりだったが、どうせならちょっとしたサプライズでもしてやろうと、用意が整うまでレンクに預けておいた。ところがあの日、革命に巻き込まれ、リースは弟のことを忘れてしまった。勿論、髪飾りの贈り物のことも。
見かねたレンクが今まで空き部屋にしまっておいてくれたお陰で、10年の時を経てリーフに手渡すことが出来た。
記憶を取り戻してから姉として、初めての言葉と贈り物を贈る。
「姉弟なんだから、敬語なんか使わなくていいんだよ。」
嬉しそうに目を輝かせる弟に微笑みかけると、彼もまた微笑み返して髪飾りを手に取った______
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