道
「いだだだだだだだ!!ちょ、痛い!痛いってミルノ!」
至って無表情のミルノがレンクの包帯を巻き直す。その手付きは怪我人相手には少々…否、だいぶ乱暴だった。
「耐えてください。」
「なんか今日凄いドライじゃないだだだだだだ?!」
革命が成功してから数週間が経った。思いの外大怪我を負っていたレンクとアマロは、騎士団本部で集中治療を受けていた。
あれから色々とあったが、王国はいつも通りの日常を取り戻すことが出来た。と言っても、当分双子は国を整える為に多忙になるだろう。それでも混乱を最小限に抑えることが出来たのは、革命軍が結成当初から革命成功後の計画をしっかりと立てていたことが大きいだろう。幸いなことに、計画実行にあたって必要となる人材は想定していたよりも多く集まっていた。
会議に招集した役人の部下たちへの処遇についても、彼らの多くは恐怖心から国王側についてきた者ばかりで、大きな問題はなかった。
騎士団は、第三・第四騎士団は、国境の警備に当てた。漸く革命が成功し、国を作り替えるというのに、攻め込まれでもしたら目も当てられない。
一番の問題は、第一・第二騎士団だった。第一騎士団ではトップ二人が革命軍に加担していたことに対する反発は強かったが、それ以上に『なぜ、自分たち部下も連れていってくれなかったのか』という声が多かった。二人は治療中のベッドに一人ひとり部下を呼び寄せ、全員を説き伏せて信頼の回復にあたった。時折ぐさりと刺さるような嫌味を言われることもあったが、兵達は皆、心の底から二人を信頼しているのか、二人を見限るような者は誰一人として居なかった。
第二騎士団は、意外とあっさり話が済んだ。率いている者が優秀であるだけに、トップ二人が納得すれば、部下はしっかりついてくる。そしてクロノもミルノも合理的判断で動く。革命が成功した今、国と民のために何をするのがベストか。彼らは瞬時に解をはじき出す。結果、城下の治安維持を強化しつつ、少しでも時間ができると、こうしてレンクとアマロの世話を焼きながら、今後の騎士団の方針を論じたりしていた。
「やあ、お待たせ」
クロノがアマロのベッド脇に、湯気の立つ皿を持ってきた。
「待ってくれクロノ。その器に入っている得体の知れない物体Xは一体何だ?」
「失礼だね。僕が君の為に手ずから作った栄養満点の粥じゃないか。」
「いや、俺にはやたらカラフルに輝くヘドロにしか見えないんだが………一体何を入れたらこうなるんだ???」
「レシピは秘密だよ。大丈夫、ちゃんとレンクの分も作ってあるさ。」
不吉なクロノの一言にチラリとレンクに目をやると、レンクはミルノの手当てでそれどころではないらしい。
いつもならクロノとアマロは今後についての話を交わすのだが、今日のクロノは思いもしない話題を口にした。
「それより二人共、彼女への想いは伝えたのかい?」
「ばっ………クロノ!そういう事は人前で話す様なことじゃ無いだろう?!」
「?ラフィル、何の話だ?」
「なんだ、ミルノは知らなかったのかい?この二人はリース王女の事をずっと慕っていたんだよ」
「あああああああああああ!!!!」
積年の恋心をアッサリと暴露された二人は、整った顔を夕日のように紅潮させた。
何でそんな事を今ここで言うのだ、というか、一体いつ勘付いたのだと二人してクロノを睨みつける。
「おや、そう睨まないでくれるかい?それはそれで美しい顔立ちだけれど…折角の美男子が台無しだよ?それにしてもミルノが気付いていないとは意外だったね。」
「………成程。二人が王女王子と幼馴染みだと聞かされたときも驚いたが……そうか、成程。」
「その生暖かい目を!今すぐヤメテ!」
耐えきれなくなったレンクは真っ赤な顔を両手で隠した。アマロはアマロで真っ赤な仏頂面のままクロノワールをじっと睨みつけていた。
こうしていれば年相応の少年だな、とクロノワールは息を吐く。
「それで?僕の質問には答えてくれないのかい?」
ずずい、とからかうように身を乗り出してやると、二人の口から『まだ言っていない………』と、何とも情けない返事が返ってきた。
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