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LEAF MEMORY 〜始まりの鐘〜  作者: えんJOYラピス


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32/41

覚悟

城内にある隠された通路や部屋。革命軍には、それら全てが記載された城内地図があった。

隠し通路や隠し部屋は特定の、それこそ騎士団幹部や大臣などの王族に近しい者にのみ伝えられ、一般の兵や従者などには知る機会すらないものだ。だが、革命軍の場内地図は騎士団のトップであるレンクやアマロも知らない通路や部屋が細かに記載されていた。


一体どうやってこんな情報まで手に入れたのか。リーフ…当時はエルだったが、一度尋ねてみたことがある。

「…それは革命軍にとっての遺産だ。」

「どういうこと?」

エルは何かに思いを馳せるように目を閉じ、暫し沈黙する。森の木々が風に揺れ、辺りは小鳥の囀りさえ聞こえない沈黙に包まれていた。一秒が途方もなく長い。どこまでも沈んでしまいそうな静寂の中、エルは一呼吸置いて話し始めた。


「元々、革命軍の先導者はこの国の王女であるという話は知っているな?……四人の王女は姉妹で結託して、自分たちが革命軍を率いてこの国を変えていくとご決断なさった。親の因果が子にめぐり、とは少し違うが…彼女達は父の暴政を止めようと、姉妹で立ち向かう事にしたんだ。…それが御自身の命と引き換えになったとしても、な。」

要は家族での殺し合いだ。そう言うエルはとても悲しそうな目をしていた。今思えば当然だろう。彼にとってみれば、自身の姉が家族同士の殺し合いを決断した、その瞬間なのだから。


「だが、第一王女…フレース王女は考えた。もしも革命が失敗したらどうする?…王女は勿論、革命軍の面々もタダでは済まない。全員処刑されるだろう。そうなってしまっては、もう国王の暴走を止められる者は居なくなってしまう。そこでフレース王女はこう提案した。革命軍を四代に組分けして、革命軍は一代ずつ戦いを仕掛けよう、とな。そうしておけば、仮にフレース王女の代で失敗したとしても、革命軍の全滅は免れる。勿論フレース王女の代で勝つのが理想だったが、それが出来なかったときの保険になる。なにより、後の代になればなるほど、より長く準備に時間をかけられる。その準備の一つが、完璧な城内地図の作成だ。物資や資金、構成員のスキルも勿論大事だが、城の内部を探るのは難しい。何の地位もない一般人が簡単に潜入できるような場所ではないから、調べる人間も方法も限られている。だが王族ならどうだ?一般人が立ち入れない部屋も、王女なら適当に理由を付けてしまえば警戒されることなく見て回れる。だから、四姉妹は城の内部を徹底的に探って、外に繋がる通路や隠れられそうな空間を見つけ出していったんだ。それはフレース王女が城を出て、本格的に革命軍に加わってからも、最後に城に残った第四王女のリリス王女が城をお出になられるまで、ずっと続いた。」


平然と、しかしあくまで水面下で。終わりの見えない極秘任務を毎日のように。姉を喪った悲しみに暮れる間も無く、王に悟られないように。何年も。

そして、フレース王女の危惧した通り、革命は失敗に終わった。フレース王女を始めとした一代目革命軍は処刑されて、第二王女のリクエル王女が革命軍を受け継いだ。

「……そうして出来上がったのがあの城内地図だ。あれは言わば、王女の命と引換に与えられた、革命軍の最重要機密だ。」


そう言うエルの瞳は暗く、やるせなさを隠しきれていない。

国を変える聖戦。聞こえはいいが、その実態は王女から見ればこれ以上にないほど残酷だ。戦いが始まり、弱者が死ぬ。王を打ち損なえば、姉が死ぬ。それに巻き込まれて、大勢が死ぬ。城下町の広場に、見せしめとして死が積み重なっていく。王を討ち取ったとしても、父が死ぬ。どう足掻いても、誰かが死ぬ。そして彼女らはそれを自身の責務だ、宿命だと受け入れ、心を殺す。どこまでもシンプルで、残酷な死の連鎖。

地獄の方がまだ幾分か救いがあっただろうな。エルの震えたその声は鮮明に覚えている。


「俺達は、何としても成功させなければならない。革命も、その後の政治もだ。…でなければ、先人達に顔向けが出来ん。これ以上は国民も限界だ。俺達の代で、何としても…」

第一王子としてではなく、エルとして革命軍を導いてきた彼に、城の内部を調べる直接的な手段は無い。今は亡き王女達の遺したその地図が、どれだけ完成されているのかを知る事は、エルには出来ない。革命軍が大きく成長したとしても、王を取り逃してしまっては意味が無い。故に革命軍としては、逃げ道となり得る場所は全て把握しておきたかった。多くの命を礎に、革命軍の勝率を大きく底上げしているのがあの地図だ。革命軍は犠牲の上に成り立っている。それをエルは理解していた。


「…大丈夫。絶対上手くいく。今度こそは…今回は、絶対に成功する。」

決意に震えるエルの手をそっと包み込み、真っ直ぐ瞳を見つめる。彼の決意と覚悟、そして志半ばで散っていった先人達のその遺志を、共に背負って戦いたい。

「絶対に…!」

閲覧ありがとうございました。

次回投稿を楽しみにお待ちください。

※この作品はpixivにて同時連載中となっております。

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