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LEAF MEMORY 〜始まりの鐘〜  作者: えんJOYラピス


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逃走

「よし…出来た。」

 朝食を作り終えて目の前の料理を眺める。我ながら会心の出来だと心の中で自画自賛していると、まだ二人がリビングに来ていないことに気づく。レンクは先ほど『アマロに急ぎの仕事が届いたから』とアマロを起こしに二階へと上がっていったが、アマロはやはりまだ眠っているのだろうか。そういえばアマロは昔から寝起きが悪かった。もしかしたら中々起きないアマロに苦戦しているのかもしれない。

「(仕方ないな…呼びにいくか…)」

 早くレンクを呼ばないとせっかく作ったスープも冷めてしまう。それにアマロが起きていないとなると急ぎの書類も終わらないだろうし、洗濯当番のレンクも困ってしまうだろう。レンクに加勢してやろうとアマロの部屋の前まで来てふと気付く。珍しく扉が半開きになっているのだ。アマロはこういった細かい所にも気を配る性格だ。使った物は速やかに所定の位置に戻すし、食器や本などもきっちりと並べる癖がある。もちろん扉を開けっ放したりすることもなかった。それどころか彼の部屋には基本的に鍵がかかっている。それは部屋にある数々の占い道具を保護する為らしいが、その部屋が解放されているとは。アマロの寝坊といい先程のレンクの態度といい、今日は何やら二人の様子がおかしい。


 そっと扉に近づくと、中からレンクの声が聞こえてきた。

「(あれ…?これってレンクの声…?なんだ、もう起きてたのかな?)」

 しかし寝坊している友人を起こしに来たにしては、扉越しに聞こえるその声は妙に重々しい空気を持ってるような気がする。はしたないと思いつつ、そっと二人に気づかれないように聞き耳をたてて息を殺した。

「…ねえ、それってほんとの話なの?」

「間違いない。本人から聞いた話だ。あいつはこの国に戻って来た。」

「…そっか……じゃあそろそろ大詰めだね。」

「ああ。…リースのことだ。全てを思い出したら間違いなく自分も行くと言い出しかねないだろうな。」

「(私のこと…?思い出すって、記憶のこと?)」

「…そう、だよね……」

 こっそり扉の隙間から部屋を覗き見ると、レンクは椅子に座るアマロと俯くように向かい合っていた。扉に背を向ける形で椅子に腰掛けていたアマロも顔は見えないものの、やはり何か深刻そうにため息を吐いた。とっくに起きていたんじゃないかと声を掛けようとするが、今部屋に入ってもいいのだろうか。

「やはりこうなると俺たちに出来ることはこれしかないだろうな…」

「………」

 アマロが口を開く度にレンクの表情が、アマロの声色が、場の雰囲気が沈み、重苦しくなっていく。この異様な空気はなんなのだろうか。

「…そんな目をしたって仕方がないだろう。……リースを、監禁するぞ。」

「(___!?)」

 はっきりと聞こえたアマロの言葉に思わず音をたてそうになってしまった。監禁?二人が、自分を?一体何故、何の為に___


 全身の力が抜けて足下がふらつく。その場に座り込んでしまっても、二人の会話は容赦なく耳に飛び込んでくる。だと言うのに、内容は全く理解できなかった。

 今は二人の声を聞いていたくない。これ以上二人の話を聞いていたら、心が死んでしまいそうだ。

 力の入らない足で無理矢理立ち上がり自室に戻る。頭が真っ白なまま椅子に腰掛けて深呼吸をすると、やっと考える余裕が出てきた。

「(…二人の目的が何か分からないけど…監禁?同じ家に住んでいるのに…?何の為にそんなこと…?)」

 瞬間、目に涙が溜まっていくのを感じた。ぐるぐると脳が回転していく。二人の話を聞いた限りではすぐにでも行動を起こすようだった。だったら早く逃げてしまった方がいい。二人の考えていることはまるで分からないが、本能が早く逃げろと警鐘を鳴らしていた。

「(………でも、ずっと一緒にいた私には分かる。二人は理由もなしにそんな事をするような人間じゃない。それに、私たちはいつだってお互いを助けながら生きてきた。…どうして…?)」

 今までこの家で過ごしてきた出来事が浮かんでは消える。親友を信じているはずなのに、心のどこかで恐怖している自分が惨めで、余計に胸が痛んだ。けれど、ここでいつまでも打ちひしがれていても、問題は何も解決しない。ならば。

「(……逃げよう。ここじゃ無いどこかに………今はここにいたら確実に最悪の結果になる、気がする…)」


 ここから城下町まではかなりの距離がある。片道でも馬に乗って半日かかる程なのでそう簡単には追いつけないだろう。しかもここで飼っている馬は二頭だけ。その両方が有事に備え、合図を出せばこの家まで戻ってくる様に躾られている。城下町まで一頭の馬に乗り、もう一頭は後ろからついてくるように指示を出す。そして到着したら二頭の馬に合図を出して家に返す。二人から逃げるだけならこれで十分だろう。

 零れ落ちそうになる涙を必死で堪えて家を出る支度を整える。予備の服を持っていこうとタンスを漁ると一着の男物の服が出てきた。見覚えなど無いが関係ない。それに着たことのない服ならば二人の目を欺けるかもしれない。

 急いで服を着替え、髪を結い襟の中に隠して鏡を見てみる。それだけでも意外と別人に見えるものだ。

 魔法をかけて透明にした剣を手に、家を後にする。

「……いってきます。」

 そっと呟いたその言葉は、誰の耳に届くことはなく空に消えた。

閲覧ありがとうございました。

次回投稿を楽しみにお待ちください。

※この作品はpixivにて同時連載中となっております。

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