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LEAF MEMORY 〜始まりの鐘〜  作者: えんJOYラピス


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激戦

 血の匂いが漂う中、乱れた息が口から漏れ出す。ミルノとの戦闘は想像以上に長引き、アマロは少々手こずっていた。

「(流石に苦戦するか………!)」

 戦闘中にアマロは何度もミルノの攻撃を喰らっていた。幸いどの傷も致命傷には至らないが、じわじわと体力を削っていくには十分だ。事実、足や腕からは血が溢れ出て四肢を濡らしている。それに対してミルノは未だ無傷でアマロを相手にしている。体格が大きい分、攻撃力こそアマロの方が上だが、その分ミルノ程の小回りは利かない。


 フェイントも彼女の柔軟性の前には無意味…そもそもフェイントをかけられるだけの隙すら与えてくれないのがミルノだ。動きを先読みしようとしたところで、ミルノは読んだ動きの二手、三手先を突いてくる。やっと攻撃を仕掛けても、彼女は液体のように躱し嘲笑うかのように、またアマロを翻弄していく。

 血を流しすぎたせいか、足元が若干ふらつく。傷口の痛みを振り払い、戦いに全神経を集中させても、ミルノに傷一つ付けることすら出来ない。

 完全に相性が悪すぎる、防戦一方の戦い。『戦場に舞うカフェオレ』の異名は伊達ではなかった。


 目の前の攻撃を剣で右に、左にと弾いていると、背中に何か硬い物が触れる。それが建物の壁である事くらい、振り返らなくても分かる。

「(しまった………!)」

 その隙をミルノが逃すはずもなく、アマロの喉元に槍が突きつけられる。


「無様だなスカイウォーク。」

「ぐ………」

 こちらは寸分の狂いも無く降りかかる槍を捌くので精一杯だったと言うのに、ミルノはあれだけ動いていながら息の一つも乱れていない。日頃から鍛錬を怠ったつもりはないが、こればかりは自身の実力不足を恨むしかない。

「………やはりお前は強いな、ミルノ。以前より素早くなったんじゃないか?」

「貴様に褒められても嬉しくは無い。せめてもの情けだ、王に対して贖罪の言葉があるなら、お伝えしてやろう。」

 突きつけられた槍先が皮膚に刺さり、僅かに喉元から血が流れる。こちらを見つめるミルノの眼差しは、断頭台の刃のように鋭く冷たかった。


「………いや、その必要は無い。俺はまだ死ぬわけにはいかないからな。『コメイム・ニケ』!」

「!」

 再び鉄の髪が穿たれた。当然ミルノも躱そうとするが、髪が彼女を捕えるのが早かった。

「すまないな、ミルノ。だがお前をこのまま先に行かせる訳にもいかないんだ。」

 ギッとこちらを睨む瞳がアマロを捉えた。いままで無傷でアマロを追い詰めていたのが一気に逆転されて余程悔しいのだろう。

「っこの…反逆者が…!」

 彼女の口から覗く真白い歯が、ギリギリと音を立てている。怒りに満ちたその声は震えていた。

「反逆者、か………確かに俺は騎士団を裏切った。だが俺は、国を裏切ったとは思っていない。」

「ふざけるな!私は知っているぞ。貴様はスカイウォーク家の跡取りという責務を全て妹に押しつけ、少年騎士団へと入団した。それだけでも許し難い裏切りだと言うのに、お前はあろうことか今、主君にその剣を向けんとする連中を率いてこんな暴動を起こしている!家族も裏切り、主君すら裏切ったこの期に及んで、まだそんな言い訳を宣うか!」

「…そうだな。確かに俺は、家を飛び出していった。お前の言う通り、跡継ぎという立場を妹に全て任せておいて行ってしまった。そして今、こうして革命軍の一人として動いている。……だがな、ミルノ。」


 頭に血が上っているミルノには届かない。それでもアマロは口を閉ざさなかった。ここで口を閉ざしてしまえばミルノの言う言葉全てを肯定することになる。

「俺は自ら選択しただけだ。俺自身が考えて、決めた結果だ。」

「選択だと?こんな愚かな行為をか?妹に全ての責務を押しつけて自分は身勝手に生きることをか?」

「俺の事はどう思っても構わん。全ての人間がわかり合えるとは限らないからな。……だがミルノ、本当に正気を失っているのは俺でもお前でも、ましてや国民でも無い。……お前ならそれも分かっているだろうが。」


 そろそろのんびりもしていられない。ミルノの動きを封じたのならレンクやリース達の支援に向かわなくては。

「ミルノ、お前なら分かるだろう?誰かに何もかもを委ねるだけでは駄目なんだ。このまま王に全てを任せては、破滅していくだけなんだ。俺もお前も、お前の大切な人たちも。それでいいと、本当に思っているのか?」

 重苦しさに一つ、息を吐く。事実、この国は限界まで傾いている。それはミルノも理解している事だ。だが国の現状を認めることは、王を裏切ることになる。頭脳戦において、レンクと互角に渡り合える彼女だからこそ、その二つの現実に板挟みになっているのだろう。

 ならば、どうするか。それは彼女自身が決めることだ。


「騎士だって人間だ。魂の宿っていない、人形じゃ無い。自分の生き方を決める頭も、何かを想う心もある。お前も自分の考えに従って生きれば良い。」

 拘束されたミルノをそのままに、アマロはその場を去っていった。

 魔法の発動には、魔力を消耗する。そして、魔力の消耗は身体にも負担が掛かる。早くリースやレンクと合流し、他の部隊を補佐するのが最善だろう。ミルノを拘束している鉄壁の髪だって、この戦いが終わるまで彼女を捕らえ続けることは出来ないのだから。

閲覧ありがとうございました。

次回投稿を楽しみにお待ちください。

※この作品はpixivにて同時連載中となっております。

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