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LEAF MEMORY 〜始まりの鐘〜  作者: えんJOYラピス


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始動

 革命軍は着々と力を付けていった。人数も爆発的に…とは行かないが、やはりこの国の現状に不満を抱いているものは多いようで、どんどん増えていた。

「新入り達の訓練も順調そうだな。この分なら近いうちに勝負を仕掛けられるだろう。」

 その言葉通り、革命を起こすためエルはここ数週間にわたり、ずっと作戦を練っていたようだ。見取り図を広げて何かを考え込んだり、誰かと相談しつつ人員の配置を探ったり。相談相手の中にはアマロもいたようだった。リースとしては、アマロと接点のあるエルとは離れていたほうが安全だが、気持ちの上では革命軍から抜けることもはばかられ、結局はここに居ることにしようと決意してしまっていた。

 それに、リースには一つの推測が生まれていた。


 アマロと革命軍とのパイプは、最近になってできたものではない。実際、スカイウォーク家からの出資の話は、エルによれば『かなり前からあった』というし、アマロと革命軍との個人的な繋がりはそれ以前からあったはずだ。とはいえ当時は革命軍にしても『準備期間』であったはずだから、表だった行動を取る必要もない。そのため騎士団の動きにも通常の警戒レベルを保っていれば良かったはずだ。

 だが出資の話が現実となり、いよいよ行動を起こすとなると、レンクとアマロのいちばん身近にいる自分に危険が及ぶことは間違いない。長年にわたって二人と共同生活をしてきた自分が王室側に拉致でもされれば、強力な人質になってしまう。


 そうした事態を避けるため、二人は『リースを監禁する』という結論に至ったのではないか。二人の弱点を解消することで革命軍の動きを守り、それ以上にリース自身を守るためには、それが最も確実な方法だ。

 アマロもレンクも昔から優しく、リースに対して少しばかり過保護な面があった。勿論リースは剣士として戦うことくらいは出来るし、誰かに守られなければ生きていけない子供では無い。


 しかし二人にとってはリースは『守るべき存在』だったのは事実だ。故に革命軍との接点を持っているアマロは、有事の際にリースが巻き込まれないようにしたのでは無いだろうか。万が一革命が失敗に終われば、関与していた者達は反逆罪で死刑。勿論それはアマロ達も例外では無い。むしろ国の第一騎士団のトップが国家への反逆を企てたとなれば、極刑に処されることは目に見えている。たとえ民間人といえども、その企みに加わった者には厳しい刑が科されることは間違いないだろう。

 だから監禁することによって、リースをこの件とは無関係でいさせようとした。二人と共に過ごしていた人間ならば関与していることも疑われるが、革命軍が動いたときに監禁されていたとしたら、その人物の革命軍への加担容疑は薄くなる。それを見越した上での計画だったのだろう。であれば、今更ここを離れる理由は無い。この状況なら、もしかしたらアマロやレンクと会っても良いのかも知れない。

 そんな思いがずっと胸の内に渦巻いていた。


 とは言え、それはあくまで推測にすぎない。彼らに何か別の意図があったならまた違う話になるし、彼らの真意が今のリースに分かるはずもなかった。

 そうして悶々としてるうちにも計画はどんどん組み立てられ、実行を待つばかりにまで作り上げられていった。

「リーフ、少し良いか?」

 いつものように革命軍のメンバーの訓練を指揮していた昼下がり、エルはどこか機嫌良く声をかけてきた。

「エル?どうしたの?」

「実はな、計画実行の日取りが決まったんだ。」

「え?!聞いてないよ?!随分と…何というか、急だけど…」

「本当はもう少し早く共有したかったんだが…スカイウォーク家との擦り合わせが予想外に長引いてな。だがお陰で準備は整った。」


 まるで子供が新しい玩具にワクワクしているかのように瞳を輝かせているエルは小さな小石を取り出した。

「これと同じものをアマロ団長も持っている。ただの石ころにしか見えないだろうが、コイツを使えば、離れたところでも顔を合わせて話が出来るんだ。見てろ。」

 そう言いながら実際に使って見せようとすると、背後から嫌とい

 うほど聞き慣れた声が聞こえた。

「その必要は無いぞ、エル。」

「お邪魔しま~す。」

「おお、アマロ団長にレンク指揮官。随分と急なご訪問だな。」

「すまないな、急に訪ねてきて。だが来れる時に来てくれと言ったのはそちらだろう?」


 恐る恐る振り返ってみると、そこにはやはりアマロがいた。

 いつもの紺の神父服、青くうっすら光る髪。間違えようも無く彼だった。

 しかしレンクまでいるのは一体どういうことだろうか。

 アマロはこちらに気がつくなり目を見開いてエルに詰め寄った。


「………おいエル。これはどういうことだ?なぜ彼女がここに居る。」

「後で説明する。今は情報共有が先だろう。」

「………手短に頼むぞ。」

 今はそれ以上聞けないと思ったのかアマロは大人しく引き下がった。一方のレンクはと言うと驚いてはいるものの、初対面を装うことにしたらしい。…こちらとしても、こうなってしまった以上は顔を合わせるしかないだろう。

「リーフ。知っているとは思うが紹介しよう。彼はアマロ・スカイウォーク。こちらはレンク・ポシーダントだ。以前話しただろう?」

「リーフ………?」

 長年一緒だったからか、偽名にしっくりきていない様子のアマロを横目にエルは会議室として使っている空き部屋へと先導していった。


「それで?計画は?」

 開口一番要点のみを聞き出そうとするのは変わらないようで、アマロはエルに計画について話すよう促す。

「先ず国王周辺の警備だが、手薄にするのはほぼ不可能だろう。」

「そうだな。国王の周りは第二騎士団が最優先で固めている。これをどうこうするのは難しいだろうな。」

「だからこそ、そのほかの警備を崩す。」

 まずはアマロが率いる陽動班で城の周囲を一気に爆破する。目的は、ひとつには陽動。騎士団をはじめとする城内の戦闘要員をそちらに向けさせ、戦闘力を削いでおくこと。もうひとつは、鉄壁の城壁の弱点を衝いて、城内への入口を確保すること。


 城の周囲で一気に大規模な爆発が起これば、少なくとも消火活動や調査で、ある程度の人員が必要になる。反乱分子のゲリラ攻撃を警戒して、戦闘部隊の配置もしなくてはならない。そこでレンクが警備隊を指揮して、城下へ向かわせる。騎士団も一部派遣できるだろう。城内から人が出てくれば、そこも突破口になる。そこから爆破を済ませた陽動班は城内へ侵入し、城内の兵士たちを引きつける。その隙にリースとエルが率いる二つの特攻部隊が城の奥に潜入し、国王を守る第二騎士団を攻撃。さらに少人数で城の最深部に逃れるであろう国王に迫り、これを討つ。それがエルの練った作戦だった。城内には秘密の通路や隠し部屋も多数あるが、その多くは長い時間をかけ、正確な情報を入手した。その上で立案した作戦だった。

 敵の戦力を分散させるというとてもシンプルな作戦だ。レンクやアマロが参加していなければ、戦力の増強や作戦にもっと苦労しただろう。改めて二人の力を痛感すると共に、何故革命軍に、という疑問は膨らむばかりだった。


「作戦はこんな具合だ。」

 何か質問はあるか、とエルは周囲を見渡すと感嘆の吐息が聞こえた。ここに居る全員、『これならやれるかもしれない』と思っていた。

「作戦は大体わかったよ。次に物資についてだけど、入手経路や購入元、或いは支援者は信頼できるの?」

 レンクがいつになく真剣な眼差しでエルに問う。こういった問題点を見逃さないのは、流石指揮官と言うべきか。

「ああ、そこも問題ない。手は打っている。」

 ばさり、とエルは資料をテーブルに広げた。そこには多くの人や店の名前、入手可能な物資や受けられる支援の内容が書き連ねてあった。レンクとアマロはそれを手に取り、素早くしっかりと目を通す。

「……ああ、問題はないだろう。」

 先に口を開いたのはアマロだった。王国の神職、スカイウォーク家の者として、幼い頃からあらゆる人脈を持つ彼の『問題ない』という言葉には、強い説得力があった。

「アマロがそう言うなら心配ないね。ただ懸念すべきは………」

「クロノとミルノか………」


 第二騎士団のトップ二人、彼らの存在には第一騎士団のツートップであるアマロとレンクも、流石に難しい顔を見せた。

「私は顔を知っている位で詳しくはないけど…確か第二騎士団の団長と指揮官、だっけ?」

「ああ、あの二人の厳格さと強さは俺も聞いている。だからこそ部隊の編成に力を注いだ。どうだリーフ、バランスはそこそこに取れていると思うが。」

 言われて手渡された部隊編成表を見ると、確かに絶妙にバランスが取れていた。戦力だけでなく、索敵に強い者、工作活動が得意な者、医学や治療に精通している者などのスキルを踏まえ、素晴らしいバランスを保っている。

「うん………これなら問題ないと思う。」

 顔を上げるとエルの自慢げな顔がそこにあった。

「よし。ならリーフは部隊の連中を集めて、この部隊編成と今の作戦手順を皆に伝えておいてくれないか。俺はもう少し、レンクとアマロと一緒に作戦に漏れがないかチェックしておきたい。」

「わかった。皆に伝えておくね。」

 リーフは編成表をポケットに収めて出ていった。その後ろ姿を見送ると、エルはレンクとアマロに向き直った。


「これで危惧すべきは、第二騎士団の頭をどう無力化するか、ということだけだな。ここからが本番だ。」

 海のように青く美しいエルの瞳に一瞬、ギラリと昂ぶる荒々しい輝きが宿った。

「そこは心配するな。俺とレンクの、活躍どころだ」

 アマロはエルに挑戦的な瞳を向けた。

 陽動班は革命軍の中でも精鋭が揃っているし、人数も十分だ。またレンクはその頭脳を買われて、有事の際の作戦立案と現場指揮を任されている。

「なるほどな。頼りにしているぞ、アマロ」

「ああ、まかせておけ。……ところで行動を起こす前に、ひとつ確かめておきたいことがある」

「何だ?」

 エルが返事をするが早いか、アマロはとてつもない勢いでエルの胸ぐらを鷲づかみにし、そのままテーブルに押し倒した。


「何故彼女がここに居る?」

閲覧ありがとうございました。

次回投稿を楽しみにお待ちください。

※この作品はpixivにて同時連載中となっております。

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