925話
酔っ払った純也と梅野は結局雄太宅で泊まる事にした。
ふかふかの布団に体を横たえて目を閉じる。
(凱央はアルの夢を覚えてるんだなぁ……。悠助はどうなんだろ? さすがに忘れてるかもな)
純也は自分が悠助ぐらいの時はどうだったかと考えてみた。
(ヤベェ。ほぼほぼ覚えてねぇや)
気づけば眠りの底に落ちていた。
昼食を作っている春香のお手伝いをしている凱央と悠助。そして、春香に代わり美理愛の相手をしている俊洋というチームプレイがキッチンとリビングで繰り広げられている。
「もう直ぐパパたち帰ってくるからね〜」
「はぁ〜い」
「ハーイ」
真夜中まで飲んでいたはずなのに、雄太達は早朝から出勤していた。朝早く起きるのは習慣になってはいるが、さすがに眠そうだった。
(楽しかったんだろうなぁ〜)
春香は友達と飲みに行ったり、夜中まで一緒に過ごすといった経験がない。そもそも、友達は純也だけだ。
(梅野さんって、友達……? 親戚のお兄ちゃんって感じだしなぁ……。鈴掛さんもだけど)
そんな事を考えていると昼食の準備が終わり、雄太達がワイワイと帰ってきた。
凱央達が出迎え、一緒に昼食をとり、のんびりとした時間を過ごしていた。
「ゆっくりしててくださいね。私、クリスマスツリー片付けちゃうんで」
「俺も手伝うよ、春さん。美味い飯食わせてもらったお礼に」
「俺もぉ〜。三人でやれば早く終わるでしょ〜?」
春香はお客さんである純也と梅野に手伝わせるのもなぁ〜とは考えたが、お礼だと言われて今後気兼ねなく食事をしたり泊まってもらうならと手伝ってもらうほうが良いと思った。
「じゃあ、お願いしようかな」
「うっす」
「オッケー」
春香達はオーナメントや電球を外して、昨夜の雪で濡れているのもあるからと外したものはサンルームへ運んだ。
雄太は美理愛の相手をしながら、その様子を眺めていた。
(春香がソルや梅野さんへの変な遠慮がなくなって良かったな)
雄太を介しての付き合いという事もあって、もう一歩踏み込んだ付き合いが出来ていない気がしていたのだ。
片付けを終えた純也達にコーヒーを淹れようとキッチンに立った春香は嬉しそうに見える。
純也達がコーヒーを飲んでいると、悠助が昨日クリスマスプレゼントとしてもらった乗馬用のヘルメットを持ってリビングに入ってきた。
「あれ? 悠助。ここに置いておいたんじゃないのか?」
「キノウ、イッショニネテタノ」
「成る程な」
リビングボードの上にはヘルメットが二つあった。悠助は古いヘルメットを床に置いて、新しいのを置いた。
「マーマ。コレドウシタライイ?」
「そうね。とりあえず綺麗にしちゃうから、ママに持ってきて」
悠助がダイニングで美理愛にお茶を飲ませていた春香の所に持って行くのを見ていた俊洋がテッテッテと走って近づいた。
「マッマ、マッマ。コレ、ボクホシイ」
「え? 俊洋、ヘルメット欲しいの?」
「ウン。ボク、ヘウメッチョカブル」
悠助は驚いた顔をして俊洋を見た。
「トシヒロ、カブリタイノ?」
「ウン。カブル」
悠助は春香を見上げた。そして、リビングにいる雄太を見た。
「悠助。そのヘルメット俊洋にあげても良いか?」
「イイヨ。トシヒロニアゲル」
雄太に言われた悠助は俊洋にヘルメットを手渡した。
「アリガトウ、ユースケニイタン」
「ウン」
俊洋は悠助に手渡されたヘルメットをスポッと頭に乗せてみた。
「ンン……? マエミエナイ」
さすがに俊洋には大きくて、目が隠れてしまっていた。一生懸命に手で支えてはいるが、手を離した瞬間に目が見えなくなってしまった。
「ちょっと待ってな」
雄太がリビングから出て行き、戻ってくると手にはタオルが握られていた。
雄太は俊洋のヘルメットを脱がせ、頭にタオルを巻いてやった。そして、ヘルメットをかぶせると、多少グラつくがズレてこなくなった。
「パッパ、アリガトウ」
「ああ。良かったな、俊洋」
「ウン」
お古のヘルメットをもらって喜んでいる俊洋を見て、可愛いなと思った純也も梅野も心が温かくなった。




