923話
12月25日(木曜日)
凱央と純也の誕生日、忘年会、雄太の全国リーディング1位の合同パーティーの日だ。
「凱央。お誕生日おめでとう。ソル、誕生日おめでとう。乾杯っ!」
雄太達はシャンパンで、凱央達はオレンジジュースで乾杯をした。
美理愛もベビーマグを掲げている。
「ンタタ、バウィ〜」
「みりあ、かんぱい」
「ミリア、カンパ〜イ」
「カンパイラヨ」
凱央達は自分のカップを美理愛のベビーマグにコツンと当ててやっていた。
そしてお兄ちゃん大好きな悠助達は、凱央とカップを合わせている。
「トキオニイチャン、オメデトウ」
「トキオニイタン、オメデトウ」
「ありがとう。ゆーすけ、としひろ」
凱央は可愛い弟達と可愛い妹の笑顔に満面の笑みを浮かべている。
リビングテーブルに並んで座っている三兄弟を見て、雄太は大きくなったなとしみじみしてしまう。
真ん中に座った凱央が両隣にいる弟達の世話をやいているのも嬉しい。
(凱央は本当に優しい性格だよな)
兄弟喧嘩などの時に叱られて『一番始めに生まれただけなのに』『好きで一番上に生まれた訳じゃないのに』と言う長子の話はよく聞く。
だから雄太も春香も凱央に対し『お兄ちゃんだから』と我慢させる事はなかった。
それが良かったのかどうかは分からないが、凱央は弟達に優しく、悠助と俊洋は凱央の言う事をよく聞いている。
「ンマンマンマァ〜」
凱央の食べていたグラタンが欲しくなったのか美理愛はテーブルをペチペチと叩き凱央に催促をし始めた。
すると凱央はスプーンで少し掬いフーフーとしてから美理愛に差し出した。
「みりあ、あ~ん」
大きく口を開けた美理愛は美味しそうに食べた。
「みりあ、おいしい?」
「ンマンマ」
その様子を黙って見ている雄太に純也が小さな声で訊ねた。
「凱央が美理愛に食べさせるの大丈夫なのか?」
「大丈夫だぞ? さっきみたいにちゃんと冷まして食べさせてるし、麺類とかだと短く短くして食べさせてやるしな」
純也は目を真ん丸にしていた。
「小学二年生ってそんな事が出来るんだな。俺の中では、まだまだガキってイメージだったんだよな」
「ははは。俺も凱央を見てると、自分がガキだったなって思う時があるな」
「あ、雄太もそう思ってたんだ?」
「まぁな」
雄太達は大人になって振り返った時にそう思ったが、きっと凱央も大人になったら、そんな風に思うかも知れない。
「凱央も大人に近づいてんだな」
「ソル。お前も大人になれよ?」
「おまっ! なんて事言うんだよぉ〜」
「そう言うところだぞ?」
「ムキィー」
二人のやり取りを聞いていた春香が俯いて必死で笑いを堪えているが、肩がプルプルと震えている。
純也がそれに気づいた。
「春さん、笑ってんのバレバレっすよ?」
「だって……おかしくって」
「春さん……」
確かに春香のほうが年上ではあるが、あまり年の差が気にならなくなっている。
「ジュンニイチャン」
「何だ? 悠助」
「イチバンナッタネ。オメデトウ」
悠助はそう言ってカップを純也に差し出した。
「悠助ぇ……。覚えててくれたのか?」
「ウン。ユーショーオメデトウ」
純也はグラスを悠助に差し出して、コツンと合わせた。
純也が重賞を獲ったのを覚えていたようだ。
「ジュンニイチャン、カッコイイネ」
「悠助。お前は良い子だなぁ〜」
純也は悠助の頭を撫でた。悠助は満面の笑みを浮かべる。
雄太と比べると確かに勝ち鞍は少ない。だが、純也も全国でも関西でもリーディングは上位なのだ。
「雄太の所為で俺の影が薄くなるだけなんだよ。うん」
「ははは。じゃあ、来年は年間100超えないとな」
「100……。雄太はサラッと言うけど、100って大変なんだぞ?」
雄太と比べられて凹んだりした事もあったが、純也は着実に実績を積んできた。重賞もいくつも獲り、騎乗依頼もかなり多い。
「俺はソルが親友で良かったって思ってるぞ」
「ん? 雄太、何か言ったか?」
「何でもないぞ」
雄太はニッと笑って誤魔化したが、春香はちゃんと聞いていてニコニコと笑っていた。




