番外編 カームの誕生日
本日は作中で春香LOVEなカームマリンの誕生日です。相変わらず春香LOVEで、『春香』という単語を完璧に理解しているようです(≧▽≦)
5月27日
北海道も温かくなってきて、カームマリンのいる牧場も緑が少しずつ増えてきた。
牧場長は配送会社から電話がきてうんうんと頷いている。
(あの人は本当にカームが可愛くて堪らないんだな)
カームもそれなりに年齢を重ねた。大きな体には変わりはないが、牧場に来た頃に比べて顔つきは柔らかくなったかなと牧場長もスタッフも思ってはいる。
(種牡馬になって我が強くなる奴もいるのにな)
電話を切った牧場長が大きく伸びをして外に目をやる。澄み切った空と伸びてきた草が心を穏やかにする気がした。
夏競馬が始まると訪ねてきてくれる穏やかな優しい顔をしたカームマリンの鞍上をつとめた鷹羽雄太。そして、その妻と子供達。四人目は女の子だと新聞で読んだ。
その後、四人目が生まれた報告の葉書が届きスタッフ共々驚いた。
『自分が乗ってた馬がいる牧場にこうやって葉書を送ってくれるなんて』
『青草や果物を送ってくれてるだけでもありがたいのに』
時折、牧場長やスタッフ達にと菓子や飲み物を送ってくれる事もある。
(千枚漬け……。美味かったよな)
大きな樽の中に入っていた聖護院かぶらの漬物を思い出すたけで、ヨダレが出そうになる。
ゆっくり放牧地に向かうと、馬達は思い思いに過ごしていた。走り回っている馬、草を食む馬、ゴロゴロと地面に転がり砂浴びをする馬など様々だ。
「おーい。カーム」
呼びかけた牧場長の姿をチラリと見たカームだが、用はないと言わんばかりにまた草を食み出した。
(あいつは……。マイペースと言うか何ていうか……)
ポリポリと頬を指で掻いていると、若いスタッフが走ってきて、荷物を受け取ったと告げた。
「そうか。分かった。おーい、カーム。春香さんから誕生日のプレゼントが届いたぞぉ〜」
大声で叫ぶと、カームマリンは一目散に駆け寄ってくる。その牧柵を壊さんばかりの迫力に牧場長もスタッフも仰け反りそうになった。
「お前……。分かりやす過ぎだろ……」
「本当に」
牧柵の際で、カームマリンは耳をピョコピョコ動かしながら、キョロキョロと見回している。
「お前、『春香さん』って日本語だけは確実に理解してるよな?」
「場長、一応自分の名前はってのもつけ足しておいてやらないと」
「ああ、そうか」
目の前で会話をしている二人をそっちのけで、カームマリンは忙しくアチコチを眺めていた。
「あのな、春香さんは来てない。ただ、お前に誕生日プレゼントを送ってきてくれたんだ」
「青草と人参とリンゴだぞ。良かったなカーム」
話しかけられてもキョロキョロと見回して春香の姿を探しているが、いないと分るとフイッと離れて行った。
「分かりやすい奴だな、全く」
「本当に」
苦笑いを浮かべながら、他の馬の様子を見て回った。
「場長ぉ〜。春香さんから電話ですよ〜」
「おう」
放牧の時間が終わり、馬達を馬房に戻していると、事務所から顔を出したスタッフに子機を手渡れた。
「春香さん。カームの誕生日プレゼント……、うわっ!」
『もしもし? 場長さん? どうかしましたか? 場長さん?』
春香の耳に届いたのはガコンッという音だった。
「す……すみません。今、スタッフがカームを馬房に戻そうとしてたら、後ろから体当たりされまして……」
『え? 体当たり……?』
「恐らく『春香さん』って言ったのが聞こえたのかと……。子機を落としてしまいました。すみません」
場長の耳に届いたのは春香の小さな笑い声だ。口元を押さえているのだろう。
『す……すみません。我慢出来なくて。あの……カームは傍に?』
「ええ。あ、耳元に子機を持っていってやります」
場長はカームマリンの『春香はどこだ?』と言わんばかりの顔を見ながら耳元に子機を持っていってやる。
『カーム。元気にしてる? お誕生日おめでとう。たくさんプレゼント送ったからね。また会いに行くから待っててね』
子機から聞こえる声をジッと聞いているカームマリンは、会えない恋人からのラブコールを聞いているようだと場長は思っていた。
カーム、お誕生日おめでとう\(๑╹◡╹๑)ノ♬




