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君と駆ける······  作者: 志賀 沙奈絵


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909話


 凱央と尚道が『お庭キャンプ計画表』を雄太と春香に提出した。


 前回同様、キャンプ前日までにやる事や当日のスケジュールなどがびっしりと書かれていて、雄太はじっくりと読みオーケーを出した。


 去年より細かく計画されていて、凱央達の成長を感じた。


「じゃあ……」


 雄太は立ち上がり、電話の横に置いてあるメモ用のボールペンで表表紙の隅にサラサラとサインを入れた。


「俺は了承したから、後は尚道くんのご両親に了承をもらうんだぞ?」

「うん。わかった」

「ありがとうございます」


 二人は今日は宿題がないので、近くの公園に遊びに出かけた。


「はい。アイスコーヒー」

「ありがとう」


 雄太はアイスコーヒーを受け取るとソファーに深く腰掛けた。


(本当、あの二人はしっかりしてるよな。俺、どれだけガキっぽかったんだろ)


 苦笑いを浮かべてアイスコーヒーを一口飲んだ。


 雄太が凱央と同じ小学二年生だった頃、漠然と騎手になるという思いはあった。


 だが、凱央のように乗馬教室に通ってもおらず、毎日純也と遊んでいただけだった。


(走り回って遊んでて、基礎体力はあったよな。あの走り回ってた事でソルは陸上選手として県大会とか出たんだよな。そう思うと、子供の頃の経験って役に立つんだなぁ〜)


 雄太がつらつらと考えていると、俊洋が美理愛の乗ったベビーウォーカーをソロリソロリと押してやっているのに気がついた。


「ミリア。ホラ、パパダヨ〜」

「ンヤァ、オゥア」


 美理愛は雄太を見てパヤッと笑った。


「俊洋。ベビーウォーカーを押してやるなら、ちょっと待ってろ」

「ン?」


 今の美理愛は爪先が床に触れている。俊洋はゆっくりと押しているが、危ないと言えば危ないのだ。


 雄太は春香の部屋に置いてあるベビーウォーカーの下に付けるマットを持ってリビングに戻った。


 そしてマットを付けた後、座面を少し上げて、美理愛の足が床につかないようにした。


「ほら、これで良いぞ。けど、走ったら駄目だからな? ゆっくりゆっくりだぞ?」

「ハ〜イ。ミリア、イクヨ〜」


 俊洋はまたユルユルと歩き出した。美理愛は嬉しそうに手を叩いている。


 そこに美理愛の洗濯を終えた春香がリビングに戻ってきた。


「あれ? あ、マットつけてくれたの? ありがとう」

「ああ。美理愛の爪先が危ないと思ってな」

「俊洋、たまにああやってお散歩みたいな感じでベビーウォーカーを押してやってるんだよね。うちは段差がないようにしてるから、引っかかる事がないのもあるのかな」


 美理愛に手押し車はまだ早い。座席に座っていられはするのだが、少しでも方向が変わったりすると転げ落ちるのだ。


「マーマ。タダイマ〜」

「悠助。お使い出来て偉いね。良い子、良い子」


 慎一郎宅に尚道の家からもらった野菜をお裾分けに行ってもらったのだ。


「バァバガ、アリガトウイッテタ」

「うん。で、悠助。お野菜の入ってたカゴは?」


 悠助がキョトンとした顔をした。そして、少し考え込む。


「ントネ……。アッチ」


 指さしたのはウッドデッキのほうだ。雄太が立ち上がり見に行くと、カゴの中にタッパーが入っていた。


 悠助にはまだタッパーの入ったカゴを持って階段を登るのが難しかったのだろう。たった二段だがバランスが取りにくかったのかも知れない。


 雄太がカゴを持ち上げると、悠助もウッドデッキに出てきた。


「パーパ。ボクガ、マーマニオトドケスル」

「そうだな。ママにお届けするまでがお使いだな」

「ウン」


 悠助がカゴを抱きかかえると、窓のところから俊洋と美理愛が見ていた。


「ウースケニイタン、ガンバレ」

「ウヤゥ、ダァ〜」


 二人の応援に悠助はキリッとした顔になって、外履きを脱いで春香に向かって歩き出した。


 雄太も後をついて歩く。上からタッパーを覗き込む。


(里芋……、蓮根……。筑前煮かな?)


 子供達は理保の筑前煮が好物だ。きっと、多めに煮てくれていたところに、悠助が野菜を届けに行ったから持たせたのだろう。


(ありがとう、母さん)


 雄太達は今日も穏やかな日々を過ごしている。







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