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君と駆ける······  作者: 志賀 沙奈絵


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921/929

907話


 7月6日(日曜日)


  阪神競馬場 10R 第38回宝塚記念G1 15:40発走 芝2200m


雄太は単勝2.3の一番人気だ。純也は三番人気で梅野は五番人気となっている。


 晴れ渡る阪神競馬場に特有のファンファーレが鳴り響いた。


 盛り上がる観客の声援は自分の好きな馬へのものなのだろう。雄太はフゥと息を吐きゲートへと馬を進めた。




(雄太くん、頑張ってね。怪我しないで帰って来てね)


 春香は美理愛を抱っこしていたが、ファンファーレを聞いた美理愛はジタバタし始めた。


「ん? テレビ見たいの?」


 春香は美理愛をテレビのほうに向けて太ももの上に座らせてやった。


「パパ、がんばれぇ〜っ!」

「パーパ、パーパ」

「ガンバレェ〜、ガンバレェ〜」


 兄達にも負けずに美理愛は手足をバタつかせて、雄太パパの応援を始めた。





 ゲートが開き、雄太は後方に位置をとった。純也は少し前、梅野は更に少し前にいる。


 2コーナーを過ぎても、スタートとほぼ位置は変わらずにいた。


 ドドド……


 芝と土を蹴り上げ駆ける馬達は一塊ともいえる状態で駆けている。




(逃げ馬がいないから……? 凄い固まってる……。遅れてる馬もいない……)


 馬の実力が僅差なのだろう。残り半分になってもスタミナ切れを起こす馬もおらず一団となって走っている。


(固まって走っていたら、前の馬との距離に気をつけなきゃ危ないんだっけ……? 雄太くん、気をつけて……。頑張って)


 美理愛を支えている腕に力が入り過ぎないように気をつけながら、画面の中の雄太に声援を送る。




 4コーナーの手前で純也が少しずつ順位を上げ始め、梅野の馬をかわし

先頭の馬に並びかけた。


 雄太は純也の馬の後を追い、その空いた空間を利用して少しずつ順位を上げる。


 4コーナーから直線コースに入り馬群がバラけた。


 その瞬間を待っていたかのように、雄太の馬はグングンとスピードを上げ始める。


 まずは梅野の馬をかわした。




「パパっ! じゅんにいちゃんがまえにいるよぉ〜っ!」

「パーパッ! モウスコシ〜っ!」

「パッパァ〜! パッパァ〜ッ!」


 凱央達が全身を使って応援をしているのが伝わったのか、春香がしっかりと転げ落ちてしまいかねないぐらいに美理愛も体を揺らしている。


「アゥア〜。キャウ〜」

「み……美理愛……」


 中々に力強い美理愛も落とさないようにしながら、春香は画面の中の雄太を見詰めていた。


 純也の馬に並びかけた雄太はゴール手前でかわし、一着でゴール板を駆け抜けた。


「パパがかったぁ〜。ママ、ママ。パパがかったよぉ〜」

「パーパ、イチバン〜。カッコイイ〜」

「パッパ、パッパ、パッパァ〜」


 画面の中、雄太は馬の首筋をポンポンと叩いて労をねぎらっていた。


(おめでとう、雄太くん。格好良かったよ)


 雄太が勝つ姿は何度見ても胸が熱くなる。春香は跳ね回る凱央を見てからソファーから立ち上がり、三脚にセットしていたビデオカメラの録画をとめた。




 子供達が寝静まった後、春香は雄太にビデオカメラの映像を見せた。


「うわぁ……。凱央達、こんなに激しいんだな」

「うん。雄太くんが帰って来たのに、子供達が早く寝ちゃう理由がこれなの」


 目を真ん丸にして驚く雄太に、春香は笑いながら答えた。


「しかも、美理愛まで……」

「まだ雄太くんが勝ったとかは分かってないから、凱央達につられてるんじゃないかと思うんだよね」

「だろうな。それにしても激しいな。春香抱きかかえてるの大変だな」


 子供を抱っこする時に油断をしている訳ではないが、更に気をつけなきゃ大変な事になりそうだなと雄太は思った。


「もうしっかりと力が強くなってきてるからね。ほら、凱央達もベビーウォーカーに乗っててひっくり返りそうになったじゃない? 美理愛も同じような事になるかもって思っちゃった。

「女の子だからって思ってちゃ駄目かもな」

「うん」


 拳を握り締めて足を踏み鳴らしながら自分を応援してくれている子供達の姿に、これからも頑張らなきゃなと思った雄太だった。







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