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君と駆ける······  作者: 志賀 沙奈絵


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895話


 宮参りが無事に済み、雄太達は自宅に戻った。


 しばらくして祝い膳が届き、悠助の入園祝い、美理愛の宮参り、そして雄太の誕生祝いが始まった。


「悠助、入園おめでとう」

「アリガトウ〜」


 改めて皆におめでとうと祝われて、悠助は満面の笑みを浮かべた。


 もう一人の主役の美理愛は疲れたのか、おっぱいを飲んでオムツを替えてもらってスヤスヤと眠っている。


「慌ただしい一日でしたが、おめでとうがいっぱいの良い一日でしたね」

「本当にめでたい一日でしたな」


 祖父二人は春香が取り寄せしていた日本酒を酌み交わしている。


「お義父さん、嬉しそうだね」

「悠助の入園祝いが出来て、美理愛を抱っこして、春香に美味い酒を準備してもらえて最高なんだろうな」

「うん。雄太くんのお誕生日もお祝い出来てるしね」

「俺の誕生日は頭にないと思うぞ?」


 春香はクスクスと笑った。


 慎一郎が取り寄せてくれた祝い膳と直樹が出前を頼んでくれた寿司と『入園おめでとう』とプレートが乗ったケーキに子供達は夢中だ。


「マーマ。コレ、カワイクテオイシイネ」

「良かったね、悠助」


 悠助が気に入って食べているのは手毬寿司だ。


 直樹が寿司屋の大将に『春香はまだ生モノが食べる事が出来ないから』と頼んでくれた物だ。


「子供には美味しそうに見えるんだな」

「だろうね。私もそうだったし」


 春香も久し振りに食べる手毬寿司に感動していた。


「美理愛も大人の食べ物が食べられるようになったら食べたがるんだろうな」

「うん」


 とても春香一人では食べきれない量の手毬寿司がびっしりと詰まった桶に大将の愛情が見えるようだ。


 理保も美味しいと言いながら食べている。


 ある程度食事が進んだ頃、凱央達が春香の部屋へと入って行った。


(ん? 凱央達、何をしに……)


 雄太が目で追っていると、春香の部屋から丸めた画用紙を持った子供達が雄太の前に立った。


「パパ。おたんじょうびおめでとう」

「パーパ。オメデトウ」

「オメデト、パッパ」


 三人が広げた画用紙には、雄太を中心にして家族全員の似顔絵が描かれていた。


「ちゃんとみりあもいるよ」

「そ……そうだな……」


 雄太の声が微かに震えている。春香は隣で微笑んで、雄太の手にそっと手を重ねた。


「まぁまぁ、皆上手に描けてるわね」

「上手いぞ」


 祖父母にも褒められ、凱央達は可愛いドヤ顔をしている。


 雄太は手渡された似顔絵をジッと見詰めていた。


「良かったね、雄太くん」

「ああ……。これも俺の宝物だ」


 雄太は目を赤くしながら笑った。


「よし、雄太ぁ〜。子供達と一緒に撮っとこうぜぇ〜」

「はい。お願いします」


 雄太の隣に春香が美理愛を抱いて座り、凱央と悠助と俊洋に囲まれて写真を撮ってもらった。


 そして、ふと思いたった。


(今日は本当に丸一日梅野さんに頑張ってもらったよな)


 隣にいる春香の耳元に口を寄せた。


「春香。美理愛を梅野さんに抱かせてやってくれる?」

「うん。もちろん良いよ」


 雄太は梅野のカメラを見た。


「梅野さん。まだフィルあります?」

「え? ああ、まだ残ってるぞぉ〜」

「美理愛を抱っこしてください。一緒に写真撮りましょう」


 春香がそっと美理愛を差し出す。梅野は目を丸くした後、そっと美理愛を受け取った。


「可愛いなぁ〜」

「アバァ……」


 美理愛がパヤッと笑う。その笑顔にこたえるように柔らかく優しい笑顔を浮かべた梅野をカメラに収める。


「本当に可愛いなぁ〜。まるで天使だぁ〜。マイスイートエンジェルだなぁ〜」


 この時の写真は梅野の宝物になった。





「なぁ、春香。将来、美理愛が梅野さんを好きになる事ってあると思うか?」

「え? 絶対にないとは言えないんじゃない?」


 皆が帰宅したリビングで寄り添いながら話す。


「美理愛が梅野さんと結婚するかも知れない……とか?」

「未来は誰にも分からないってば」


 春香の言う事も分かるが、バージンロードの先に梅野がいて、美理愛と寄り添うのを想像した雄太は頭を抱え悶絶し、それを見た春香はクスクスと笑っていた。







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