892話
4月7日(月曜日)
悠助の入園式の日を迎えた。そして、美理愛のお宮参りと雄太の誕生祝いをする事になっている。
その為、雄太宅には朝から直樹と里美もやって来ていた。
「悠助。立派なお兄ちゃんになったわね」
「悠助。ジィジは嬉しいぞ」
「ウン。ボク、オニイチャンダモン」
制服を着て真新しい通園帽をかぶり、凱央のお古の通園バッグを肩にかけてドヤ顔をしている。
そして、慎一郎達のところへ走って行った。
「ジィジ、バァバ。ボク、キョウハアノクツハイテヨウチエンイクンダヨ」
「そうか、そうか。ボロボロになったら言うんだぞ? 新しいの買ってやるからな?」
「ウ〜ン。イイノ?」
「ちゃんとパパとママが良いって言ってからね?」
「ウン」
その様子がなんとも微笑ましくて雄太達はニコニコと見ていた。
今回もカメラマン役をしてくれる梅野はカメラのレンズを拭きながら雄太に話しかける。
「本当、今日は大忙しだなぁ〜」
「入園式もお宮参りもずらせないですから。本当は一週ぐらいずらせたら良かったんですけど」
「仕方がないさぁ〜。俺達の仕事柄月曜日に宮参りをするしかないんだしなぁ〜」
「はい。丸一日カメラマンよろしくお願いします」
真面目な顔をして言う雄太に梅野は優しげな笑顔を向けた。
部屋から美理愛を抱っこして出てきた春香に、雄太は近寄り美理愛の小さくプニプニとした手を握る。
「春香、準備出来たか?」
「うん。美理愛の授乳もオムツ替えも終わったよ」
ふんわりとした濃紺のワンピースを着て、里美と理保に髪をセットしてもらった春香はニッコリと笑った。
「俺のマイスイートハニー。今日も可愛いねぇ〜」
スススっと近寄って来た梅野は美理愛の顔を覗き込んだ。すると美理愛はホヤァ〜っと笑う。
梅野は更に優しい笑顔を浮かべ、美理愛の小さな手にそっと触れていた。
全員揃って門扉前に並んだ。梅野は三脚を立てて構図のチェックをしている。
「はい〜。撮りますよぉ〜」
真ん丸に立った悠助の手を握っている俊洋と周りに立つ両親、祖父母。
(良いなぁ……。うん。これを撮れる俺って幸せだぞぉ〜)
何枚か撮った後、俊洋と慎一郎達は留守番をし、雄太達と直樹達と幼稚園に向かった。
悠助は大きく手を振り、ズンズンと歩いて行く。ただ、時折振り返って後ろを歩いている雄太達や直樹達を見る。
「ジィジ、バァバ。テ、ツナグ?」
「お? 手を繋いでくれるのか?」
「じゃあ、悠助は真ん中ね」
「ウン」
雄太とベビーカーを押している春香は、悠助達の姿を見て嬉しくなる。梅野は良い写真を撮れると思ったのか、猛ダッシュで悠助達の前に回り込んだ。
直樹も里美も年齢より若く見られるから、悠助が孫というより末の息子と言われれば納得出来る感じだ。
何枚か撮り終わった後、雄太達のところに戻った梅野はホクホク顔をしていた。
「スッゲェー良い写真撮れたぁ〜」
「嬉しそうですね、梅野さん」
「良い写真撮れた時って、嬉しいんだよぉ〜。今の写真は重賞級だったなぁ〜」
雄太だけでなく春香も頷いた。梅野は本当に写真撮影が好きなのだなと思う。
入園式と書いてある看板の前でも何枚か撮り、悠助の入園式にのぞんだ。
「鷹羽悠助くん」
「ハイッ!」
悠助はキリッとした顔で大きな声で返事をしていた。
(凱央の時から年単位で経ってるのに、ついこの間のようにも感じるなぁ……。てか、悠助大きくなったなぁ……)
雄太はしみじみと悠助の背中を見ていた。
きっと春香も同じ気持ちだろうかと思って隣を見ると、美理愛を抱っこしながら春香はハンカチで目元を押さえていた。
(やっぱり嬉しいんだろうな。二回目だけど、凱央は凱央で悠助は悠助だしな)
美理愛はスピーカーから聞こえる先生の声などを聞いても泣きもしないで、手をフリフリとしていた。
(凱央から悠助の入園式までがあっという間だったって事は、俊洋から美理愛までもあっという間なんだろうなぁ〜)
色んな事が頭の中を駆け巡りながらも、悠助の姿を胸に焼き付けていた雄太だった。




