1068話
11月30日(火曜日)
凱央が学校から帰ってくるのを待って、家族揃ってクリスマスツリーの飾り付けをする。
「新しい電球買ったんだよ。LED電球っていって、電球が熱くならなくて長持ちするんだって」
「へぇ〜」
春香は新しく買った電球を雄太に手渡した。雄太は受け取るとバランス良くモミの木に這わせていく。
子供達は今か今かと目をキラキラと輝かせている。
「よし、電球つけられたぞ。飾り付けスタートだ」
雄太がニッと笑うと、子供達はそれぞれ好きなオーナメントを手に飾り付けを始めた。
「マー。トマトアル?」
「トマトはないなぁ〜。リンゴじゃ駄目?」
「ン〜。トマトホシイ」
相変わらず美理愛はトマトが好きなようで、オーナメントの入った箱を覗き込んでトマトのオーナメントがないか探している。
「トキオニイチャン、コレツケタイ」
「上のほう? じゃあ、イスに乗って。ぼくが押さえててあげる」
「ウン」
俊洋はトナカイのオーナメントを手にして凱央に見せた。凱央は踏み台代わりにしていたベビーチェアから降りた。
俊洋がベビーチェアに乗ると背もたれをしっかりと押さえてやっている。
「ときおにいちゃん、つぎはぼくね」
「うん。ちょっと待ってなよ?」
去年まで『パパ、パパ』と言っていた悠助と俊洋が凱央を頼りにしてる。
雄太はその様子を微笑ましく思いながら、美理愛を抱き上げてツリーの上部にオーナメントをつけさせていく。
「あ、忘れてた」
「え?」
驚く雄太に微笑んだ春香はウッドデッキから室内に向かった。
(んん……? 何を忘れてたんだ?)
春香は自分の部屋へ入り、茶色の紙袋を抱えて出て来た。
「それ何?」
「この前お父さんとお母さんがくれたクリスマスオーナメントなの。可愛いんだよ」
「お義父さんとお義母さんが?」
春香がオーナメントの箱の蓋に紙袋の中身をバラバラと出した。中にあったのはプラスチックに見える素材で、細いカラフルな紐がついている。
凱央達は箱の傍にしゃがみ込んで手に取って嬉しそうに笑っている。
「うわぁ〜。これアルにそっくりだぁ〜」
「これ、ゲイル? ゲイルだよね?」
「ウマガイッパイ〜」
「オウマタン、オウマタン〜。パパ、オリル〜」
雄太は美理愛を下ろしてからスッと手を伸ばし、芦毛の馬を描かれている物を手に取った。
「これって……?」
「うん。プラバンっていうオーブントースターで作るオモチャみたいな物なんだって。お母さんが絵を描いて、お父さんが焼いてくれたんだよ」
プラスチックをオーブントースターに入れて焼き焦げてしまわないのかと思いながら見ていると、子供達が春香を見た。
「ママ。これかざっても良いよね?」
「うん、良いよ。ジィジもバァバも、そのつもりで作ったって言ってたしね」
春香の言葉に悠助達の顔がパァーっと輝く。
凱央達は好きな馬の絵を描かれたプラバンを手に持ち、ツリーに飾り付けしていった。
「お義父さんとお義母さんにお礼しなきゃな。こんなオーナメント、最高過ぎる」
「雄太くんもそう思う? 私もこんな素敵なオーナメントないなって思ってたの」
雄太は手にした馬のオーナメントをツリーに飾り付け、ユラリと揺れる芦毛の馬のオーナメントに雄太はニッコリと笑った。
「パパ。この子、アルににてるね」
「こっちにもゲイルいる〜」
「パパ。コノコモツケル〜」
上の三人がキャッキャと喜んでいると美理愛の大きな声がした。
「トマトォ〜。パー、マー。トマトイタ」
「え? トマト?」
「トマトってあったっけ?」
美理愛の手元を見るとトマトのイラストが描いてあるプラバンがあった。
紙袋の中にたくさん入っていたから気がつかなかったのだろう。
美理愛の小さな手が黄色いプラバンを摘む。
「トーモロコシダァ〜」
「本当だ……」
「お母さん、トマトとトウモロコシも作ってくれてたんだ……」
直樹と里美が楽しそうにプラバンに馬やトマトとトウモロコシを描いてトースターで焼いてるのを想像すると、雄太と春香は顔を見合わせて笑った。




