1055話
暑い暑い夏の名残が少しずつ薄れつつある9月15日敬老の日。
雄太宅のウッドデッキは華やかに飾り付けられ、支柱に括りつけられたカラフルなリボンがヒラヒラと風になびき、色とりどりの風船が揺れている。
「お誕生日おめでとう、ママ」
「ママ。だいすきだよ」
「ママ。オメデトウ〜」
「マー。オメデト〜」
凱央が花紙で作った冠を春香の頭に乗せた。
子供達が皆で一緒に描いた春香の似顔絵を美理愛が両手で差し出す。
「ありがとう、皆。ママとっても嬉しいよ」
続いて純也と健人がピンクのガーベラとカスミ草の花束を手渡す。
梅野が花を形どったケーキをテーブルに置くと、子供達がわぁ〜っと歓声を上げて拍手をした。
「春さん。誕生日おめでとうっす」
「春姉ちゃん。おめでとう」
「春香さん〜。誕生日おめでとう〜。こっちはチビーズも食べられる花だよぉ〜」
たびたび食事を食べさせてもらったり、トレーニング機器を使わせてもらっている上に、時折宅呑みをさせてもらっているお礼がしたいと三人で考えたのだ。
ウッドデッキの飾り付けも張り切ってやってくれていた。
「ありがとうございます」
「じゃあ、乾杯しようか」
最近、雄太はお気に入りでよく呑んでいるスパークリングワインをグラスに注いでいく。
純也は子供達にブドウジュースを注いでやっている。
「春香、誕生日おめでとう。いつも、ありがとう。これからもよろしくな。乾杯」
「うん。私のほうこそ、よろしくね」
雄太を見上げて笑う春香の笑顔に初めて会った頃を思い出す。
(初めて会った時、俺は十七歳だったんだよな……。それからずっと、この笑顔に癒やされて支えられてきたんだよな。今でも変わらず可愛い……)
四人の子供を産み育ててきたというのに、まだまだ若く見えている。とても三十代には見えないのだ。
「春姉ちゃん。これマジ美味い」
「そう? 健人くんが美味しいって言ってくれて嬉しいよ」
健人は春香の唐揚げをパクパクと食べている。同じく春香の唐揚げが好物の純也が唖然とする勢いだ。
「健人って、ソルと似てるよな」
「えっ⁉ どこがだよっ⁉」
「雄太兄ちゃん。それは嫌だよ」
雄太の言葉を一斉に拒否する息が合った二人の反応に春香が吹き出す。
純也と健人が何とも言えない顔で春香を見る。
「春さん……」
「春姉ちゃん……」
「ご……ごめんなさい。けど……ふふふ。塩崎さんと健人くんって兄弟みたいで」
今度は春香の言葉にショックを受けている二人を見て、笑上戸の梅野は腹を抱えて笑っている。
「た……確かにぃ〜。兄弟っぽいもんな、お前らぁ〜」
「梅野さんまでっ! やめてくださいっ!
「梅野さんっ! やめてくださいっす!」
口にした言葉もそっくりで、雄太も堪らずにゲラゲラと笑う。
雄太にまで爆笑されて、純也と健人は苦虫を噛み潰したような顔をして落ち込む。
「純也兄ちゃんと健人兄ちゃんは仲良しなんだね」
「うん。なかよしだね」
凱央と悠助の無邪気な一言で撃沈した二人を見て、雄太も春香も梅野も涙を浮かべて爆笑していた。
(お父さんとお母さんに養女にしてもらって、私は誕生日が嬉しいものになった……。雄太くんと出会ってから、誕生日はもっともっと楽しくなった……。私って、本当に幸せだなぁ……)
リビングボードの上に飾ったピンクのガーベラとカスミ草の花を見て、春香はニコニコと笑っていた。
リビングのドアが静かに開いた。
「あれ? まだ起きてたのか?」
「あ、雄太くん」
雄太は冷蔵庫に向かい烏龍茶をグラスに注いでから、ソファーに座っている春香の隣に座った。
春香の足元にはアイロンとアイロン台が置いてあるのに気がついた。
その視線に春香気がついた。
「アイロンが冷めるまで、今日もらった花を見てたの」
「そっか」
春香は雄太の手にある烏龍茶のグラスを揺らしてしまわないように、そっと雄太の肩に頭を預けた。
「ん?」
「雄太くんと出会えて良かったなって」
「俺も思ってるぞ」
「えへへ」
照れくさそうに笑う春香の肩を抱いて、雄太は春香にキスをした。




