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君と駆ける······  作者: 志賀 沙奈絵


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1054話


 北海道から戻った雄太達は、毎年恒例になっている凱央と尚道のお庭キャンプや庭でのバーベキューを楽しんだりと子供達との夏休みを満喫していた。


(凱央はアルに、悠助はゲイルに乗ったって言うし……。しかもトレセン走るのはまだしも、空を飛ぶとか……。う〜ん)


 ウッドデッキに設置してある四人乗りブランコに座り、雄太は庭を駆け回ったり、バッタを捕まえたりしている俊洋と美理愛を見ている。


 悠助は夕飯の材料であるピーマンやキュウリ、ミニトマトの収穫を手伝っている。


 凱央は尚道とリビングでお庭キャンプのまとめをやっている。


 『パパ。アルとトレセンの調教コース走ったんだよ。サラブレッドに乗るのって楽しいね』


 『パパ。ゲイルとそらをとんだんだよ。パパとおなじしょうぶふくもきたんだぁ〜』


 調教を終えて帰って来た雄太に話しかけた二人の話に雄太の目は点になった。


(初めてアルに乗ったって凱央が話した時もだけど、うちの子はなんでそんな夢を見るんだ?)


 幼児の頃ならまだしも、凱央も悠助も小学生だ。おとぎ話のような夢を見るのだろうかと悩む。


(まぁ、夢なんだし多少の不思議なのは当たり前か。凱央も悠助も『夢を見た』って言ってたし)


 夢なら多少の整合性が取れなくても仕方がないと雄太は小さく笑ってん〜っと伸びをした。


 大好きなゾルテアレックスに滅多に会えない凱央より、二度とメイゲイルに会えない悠助のほうがメンタルケアをしなければならないと雄太も春香も思っていた。


 だが、雄太達が気づいた時には悠助は乗り越えていた。


(騎手になるなら、悠助の心の強さは騎手としての強みになるよな。まだ、悠助は騎手になりたいとは言ってないけど)


 悠助はメイゲイルと騎手になると約束したが、まだ雄太には伝えていなかった。


 まだ小学校に入ったばかりだという気持ちもあるのか、しばらく内緒にしておこうと思っているのを雄太は知らない。


「パパァ〜。ピーマンいっぱいとれたよぉ〜」


 悠助が駆け寄って来て、籠《カゴ》いっぱいの大きなピーマンを見せる。


「きょうのオカズはピーマンのにくづめなんだよ」

「そっか。楽しみだな」


 雄太宅の子供達はピーマンが苦手な子はいない。むしろバクバクと食べているから不思議だ。


 悠助の後ろから歩いて来た春香の持っている籠《カゴ》には、茄子とミニトマトが入っている。


「茄子、美味そうだな」

「焼き茄子と麻婆茄子、どっちが良い?」

「そうだなぁ……。焼き茄子にしてもらおうかな?」

「うん」


 春香が話していると、頭にピョンとバッタが乗った。


「ママッ! バッタツカマエテ」

「え? バッタ?」


 俊洋は捕まえてと言うが、春香の両手はふさがっているので、雄太はブランコから降りてバッタを捕まえてやった。


「ほら、捕まえたぞ」

「パパ、アリガトー」


 雄太が捕まえたバッタを俊洋に渡そうとすると、今度は美理愛の頭にピョンと乗った。


「ミリア、ジットシテテ」

「ウン」


 俊洋が手を伸ばすと、バッタはピョンと飛び跳ねて芝生の中に紛れてしまった。


「ドッカイッチャッタ。サガスヨ、ミリア」

「サガス〜」


 俊洋と美理愛はしゃがみ込み芝生をかき分けている。


(あぁ……、なんだろ。平和だなぁ……。幸せだなぁ……)


 雄太は一生懸命バッタを探す俊洋と美理愛を見てから、ピーマンを抱えた悠助を見た。


 振り返ると宿題を終えた凱央と尚道がテーブルの上を片付けている。


「悠助。ピーマン、キッチンに置いてね」

「はぁ〜い」


 雄太がドアを開けてやると悠助はスタスタとキッチンへ向かった。


 その様子をニコニコと見ている雄太に春香がニッコリと笑う。


「ねぇ、雄太くん。こんなゆったりとした日って良いね」

「そうだな」


 勝負の世界で生きているからこそ、何もない日が良いなと思ってしまうのだ。


「パパァ〜ッ! ミリアガ、カマキリニハサマレタァ〜」

「えぇ〜っ⁉」


 ウッドデッキから飛び出して行く雄太を見て、春香も籠《カゴ》をウッドデッキの床に置いて美理愛の元に走った。


 カマキリに服を挟まれて泣きべそをかいている美理愛を救出し頭を撫でてやりながら、こんなアクシデントがあっても幸せだなと思った雄太だった。







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