1035話
CMが明けて画面に映し出されたのは、たくさんの写真が次々と映るスライドショーのようなもの。
幼い凱央がゾルテアレックスを撫でている物、顔を寄せ合い笑っている物、初めてポニーに跨り余裕がなく緊張した顔をしている物などだ。
(懐かしい写真ばかりだな……。俺、凱央が馬を怖がらずに触りたがったりしていたのを当たり前かのように思ってたんだけど……。全然、当たり前じゃないんだよな)
乗馬教室に尚道を連れて行ってやった時、小学生なのに尚道はビクビクとしていた。乗馬教室に入ろうと思い見学に来た小学生の子供も緊張していた。
「鷹羽騎手から見た凱央くんはどんな子でしょう?」
「幼い頃は少し自分を出す事が下手な部分もありましたね。でも、自分からやりたい事を口に出し、行動するようになりましたね」
一人でポニーに跨り練習場で駆けている凱央の姿を見詰めながら答える雄太は父親の顔をしていた。
「はっきりと『騎手になりたい』と言う言葉を聞かれた時の率直な気持ちを教えてください」
「恥ずかしながら心臓がバクンっ! ってなりましたね。『いつか』とか『子供が望むなら』とかぐらいの認識しかなかったので」
雄太も凱央ぐらいの時には『騎手になりたい』と思っていたはずなのに、我が子に言われると心臓が跳ね上がるのには驚いたし、狼狽えて声が震えてしまったのだ。
『ぼくは大きくなったらパパみたいなすごいきしゅになります。そして、ジィジのちょうきょうした馬でG1をとりたいです』
初ダービーの祝勝会での凱央の手紙は雄太の宝物になっている。コレクションルームのダービーの口取り写真の横に置いてあるのだ。
画面は変わり、慎一郎の厩舎でのインタビューになった。
「お孫さんである凱央くんが騎手になりたいとおっしゃった時の率直なお気持ちを教えてください」
「飛び上がりぐらいに嬉しかったですな。正直、雄太が騎手になると言った時よりも嬉しくて堪らんかったな」
調教師と言うより完璧に祖父の顔をしている慎一郎に雄太も春香は笑顔になった。
「可愛い孫に『ジィジのちょうきょうした馬でG1をとりたいです』なんて言われたら、頑張らなきゃならんって思ったんだよ。儂の育てた馬で勝って欲しいと思っとるんだ」
慎一郎が馬を用意してやれるのは凱央だからと言う思いが画面からも伝わってくる。
そして、インタビュー映像は凱央の部屋に変わった。
「凱央くんは、将来どんな騎手になりたいって思っていますか?」
「ぼくは父のように『任せたからな』って言葉をかけてもらえるジョッキーになりたいです。せんせいからも、馬主さんからも、信らいされるジョッキーになりたいです」
真っ直ぐ夢へと向かう凱央のアップから、産まれたての写真が映り、お宮参り、お食い初めなど、凱央の成長が分かるスライドショーが始まる。
初節句、初めてのクリスマス、初めての北海道。
たくさんの思い出の写真で凱央の成長を見て、春香は目を潤ませている。
『競馬の騎手は簡単になれるものではないし、競馬学校を卒業してデビューをしても一つ勝つ事も大変な世界だ。その夢を追いかけて行く凱央くん。周りの人達の力も借りて頑張って欲しいと思う』
エンディングは、家族とのビデオ映像や純也達とはしゃいでいる姿が次々と映っていた。
『夢に向かって頑張れ! 凱央くん!』の文字で凱央の夢を応援する特番は終了した。
悠助達はハァーっと息を吐いて凱央のほうを向いてパチパチと拍手をした。
「ときおにいちゃん。かっこうよかったぁ〜」
「トキオニイチャン、カッコイイネ」
「トキオニイタン〜。トキオニイタン、ダイスキ〜」
美理愛は頬をピンクに染めて、凱央に抱きついた。
「あ……ありが……とう……」
凱央は美理愛の頭を撫でながら、照れくさそうに笑った。
(凱央が騎手かぁ……。何か実感してきたなぁ……)
(凱央には目一杯頑張って欲しいな。好きな道を真っ直ぐに……)
雄太と春香は、凱央一人でのインタビュー映像に感動をして胸がいっぱいになっていた。




