1033話
食事が進み、悠助の誕生日のケーキが雄太の手によってガーデンテーブルに運ばれてくる。
「イチゴいっぱい〜」
「イチゴノケーキ〜」
「イチゴ、イチゴォ〜」
悠助も俊洋や美理愛も目をキラキラと輝かせた。
真ん中に『ハッピーバースデー悠助』と書かれたホワイトチョコのプレートとロウソクとケーキ用の花火が刺してある。
雄太はロウソクにと花火に火を点けてやった。
「ハッピーバースデートゥーユー、ハッピーバースデートゥーユー」
春香と純也と梅野が歌って、皆がクラッカーを構える。
歌い終わり、悠助がロウソクを吹き消すと一斉にクラッカーの破裂音が響いた。
「おめでとう、悠助」
「悠助、おめでとう」
口々に二度目の『おめでとう』を言ってもらうと、悠助は満面の笑みを浮かべた。
「じゃあ、ケーキと一緒に記念撮影だぞぉ〜」
梅野は、まずは悠助を真ん中にして子供達だけの写真を撮り、その次は悠助の左右に雄太と春香の写真を撮った。
「じゃあ、次は悠助の隣に理保さんですねぇ〜」
理保はニッコリと笑って頷き、悠助の隣に座ってカメラに収まった。
「おっちゃんが見たら拗ねそうなくらいの良い写真になりそうっすね」
「あ〜。何か分かる気がする」
純也と健人が吹き出す。本当なら慎一郎がいるはずだったのだが、どうしても行かなくてはならない仕事が入り、時間ギリギリまでゴネていたのだ。
「仕方ないよな。俺達は生き物相手の仕事なんだから」
「だよな。調教師って忙しいからな。おっちゃんの選んだ道だしさ」
雄太と純也がうんうんと頷きながらケラケラと笑う。
「じゃあ、最後は全員揃ってだぞぉ〜。ほら、並んで並んでぇ〜」
梅野が三脚にカメラをセットして、細かな指示を出す。こだわりの一枚を撮りたい気持ちが伝わってきて、雄太は嬉しく思っていた。
「じゃあ、タイマーで撮るからぁ〜」
梅野がタイマーのスイッチを押してウッドデッキに駆け上がった。
主役の悠助と俊洋を中心に凱央と美理愛。その左右に雄太と春香。後ろには純也、健人、理保が並び、その隣に梅野が入った写真は、後日大きく引き伸ばされて雄太宅と慎一郎宅と直樹宅に届けられる事になる。
写真撮影が終わり、春香がケーキをカットして、チョコプレートを乗せて悠助の前に置いた。
「悠助。パパとママのところに生まれてきてくれてありがとう」
「うん。ぼく、パパとママがだいすきだよ」
悠助の言葉に春香は薄っすらと涙を浮かべていた。
「悠助。パパとママからの誕生日のプレゼントだ」
雄太は大きな紙袋を悠助に差し出した。
「ありがとう。パパ、ママ。みてもいい?」
「ああ、良いぞ」
雄太が頷くと悠助は紙袋の中を見た。
「わぁ……」
中に入っていたのは、真新しい乗馬用のヘルメットと乗馬ブーツとウェアだ。
「ほんとうにうれしいっ! ぼく、これからもがんばるからねっ!」
「良かったな、悠助」
「頑張れよ、悠助」
「応援してるからなぁ〜」
「うんっ!」
純也と健人と梅野に笑顔を向けた悠助を見ていた俊洋が、ツンツンと雄太の服の裾を引っ張った。
「ん? どうした? 俊洋」
「アノネ、パパ。ボクモ、ジョーバキョウシツニイッテモイイ?」
春香達はその言葉を聞いて俊洋を見詰めた。
「俊洋も行きたいのか?」
「ウン。ボクモ、トキオニイチャントユースケニイチャンミタイニ、ポニーニニノリタイ」
雄太も春香も俊洋が幼稚園に入ってから、何度も乗馬教室で凱央と悠助がポニーに乗っているのを見ていた。
それでも俊洋は『乗馬教室に行きたい』とは言わなかったので、雄太達は馬は好きだけれど、乗馬をしたいとは思っていないだと考えていたのだ。
「そうか、分かった。じゃあ、凱央達と同じように通っても良いぞ」
「アリガトウ、パパ」
雄太から許可をもらった俊洋は凱央と悠助のほうに向き直った。
「トキオニイチャン、ユースケニイチャン。ボク、ガンバルネ」
ニッコリと笑った俊洋の頭を凱央と悠助は優しく撫でてやっていた。
仕事から大急ぎで帰って来た慎一郎が俊洋の乗馬教室に行きたい宣言を喜んだのは言うまでもない。




