1032話
5月3日(月曜日)
悠助の入園祝いと誕生日、そして俊洋の入園祝い、雄太の天皇賞優勝祝いは雄太宅のウッドデッキで開催だ。
ウッドデッキの屋根から折り紙で作った輪っかやいくつもの風船が飾られて、柵に固定された鯉のぼり五月の爽やかな風に揺れている。
「おぉ〜。良い感じじゃないかぁ〜」
梅野は前にも持ってきてくれたイタリアンの店のオードブルを手に庭に周ってきてにこやかに準備をしていた純也と健人に声をかけた。
「あ、梅野さん。なかなか良いっしょ?」
「目一杯頑張りましたよ」
健人は最期の仕上げのくす玉を脚立に乗ってぶら下げていて、純也は脚立を支えている。
「あ、まさき兄ちゃん〜」
「まさきにいちゃん〜」
凱央と悠助がグラスや取り皿の乗った盆を持ってウッドデッキに出て来て梅野に声をかけた。
「マサキニイチャン〜」
「マサキニイタン」
俊洋と美理愛は自分の子供用の椅子を運びながらウッドデッキに上がって来た梅野に笑顔を向けた。
梅野はガーデンテーブルの上にオードブルを置いた。
「マサキニイタン、ダッコシテクレル?」
「おぉ〜。マイスイートエンジェルぅ〜。もちろんだぞぉ〜」
梅野が両手を広げていると、途中まで歩いて来た美理愛は急カーブを描いて健人に寄って行った。
「え? ちょっ! マイスイートエンジェルぅ〜」
「ケントニイタン、ダッコォ〜」
脚立を降りた健人はニッコリと笑って、美理愛の前に膝をついた。
「抱っこしてやるけど、手を洗ってくるから待ってろよな?」
「ウン、マッテル」
美理愛にあっさりとフラレた梅野がアウアウと口をパクつかせているのを、室内で料理をしていた春香と理保、盛り付けをしていた雄太は必死で笑いを堪えていた。
「じゃあ、悠助と俊洋。くす玉の紐を引っ張るんだぞ」
「は〜い」
「ウン」
純也が言うと二人は仲良く紐を両手で持ち、グイッと引っ張った。
パカっと割れたくす玉の中から『悠助、俊洋おめでとう』と書いた垂れ幕といくつものカラフルな小さな風船と紙テープが綺麗に飛び出した。
「入学おめでとう、悠助。入園おめでとう、俊洋」
雄太が代表して言うと春香達はパチパチと拍手をした。凱央が悠助に王冠をかぶせてやった。
「ゆーすけ。たんじょうびおめでとう」
「ありがとう」
悠助は大好きな凱央に祝ってもらえて嬉しそうに笑った。
乾杯が済むと理保がにこやかに声をかける。
「さあさあ。遠慮なく食べて頂戴。足りなかったら、いくらでも追加で作るわよ」
皆がそれぞれ好きな物を食べ始めた中、理保の作った八幡巻きを一口で食べた純也がとろけるような顔をする。
「俺、おばちゃんの八幡巻き、ガキの頃から好きなんだよな」
「そうだったわね。純也くんたらこんな大人な食べ物をパクパク食べてたわね」
「マジで美味いからっすよ」
ニコニコと純也が答えているのを聞いた俊洋が雄太を見上げた。
「パパ。ボクモ、タベラレル?」
「八幡巻きか? ママが作ったのと違うけど、俊洋も何度も食べてるぞ?」
俊洋がキョトンとした顔をしていると、春香が小さく笑った。
「ママのは鶏肉だもんね。バァバのは牛肉だから、いつもと違う気がするだけだよ」
「ギュウニク? ウシサン?」
「そうそう」
春香の説明に納得した俊洋が理保の八幡巻きをパクリと口にしてモグモグと食べた。
凱央も悠助も、もちろん美理愛も口に運んだ。
「真ん中のはゴボウだから、よく噛むのよ?」
理保は少し心配したような声で言うが、子供達はしっかりと噛み飲み込むとパァーと顔を輝かせた。
「バァバ。すごくおいしいね」
「おいしいよ、バァバ」
「バァバ、オイシイ〜」
「オイシ〜」
孫達の笑顔に理保は嬉しそうに笑った。
雄太達もパクパクと食事をして、悠助は学校の話をし、俊洋も幼稚園での出来事を楽しそうに話した。
(悠助も俊洋も新生活楽しんでるようで良かった。うちの子達は、新しい環境に泣かないし、早くに馴染んでくれてありがたいよな)
俊洋の入園式で泣いていた子を思い出し、我が子達を見回してニコニコとしてしまう雄太だった。




