1025話
4月7日(水曜日)
悠助は真新しい制服に身を包み、ドヤ顔をしながら立っている。
「パパ、ぼくかっこいい?」
「ああ、格好良いぞ」
雄太は目一杯早く仕事を終わらせて、猛ダッシュで帰ってきたのだ。そして、雄太同様朝の仕事を終わらせた慎一郎は凱央の時と同じように、可愛くて可愛くてたまらない孫の頭を撫でた。
「ジィジ。ぼく、せいふくにあう?」
「ああ。よく似合っとるぞ」
目を細めている慎一郎は調教師鷹羽慎一郎ではなく、ただの孫達が可愛くてたまらない祖父鷹羽慎一郎だ。
理保は誇らしげに立っている悠助の姿を見て目元をハンカチで押さえている。
「パパ。ボクハ、アシタダヨネ」
「そうだぞ。明日は俊洋の入園式だ」
「ウンっ!」
俊洋は嬉しそうにピョンピョンと跳ねた。美理愛は意味は分かっていないが楽しそうに笑っている。
「じゃあ、そろそろ行こうか」
その時、インターホンが鳴った。モニターを見ると純也と梅野と健人が手を振っていた。
揃って門扉を出ると笑顔で純也達が出迎えてくれた。
「悠助、おめでとう」
「お〜。悠助もすっかりお兄ちゃんだなぁ〜」
「悠助。良く似合ってるぞ」
「じゅんやにいちゃん。まさきにいちゃん。けんとにいちゃん」
悠助はパァーっと顔を輝かせた。直樹達から入学祝いにもらった新しい運動靴を見せて話すと三人に撫でられ、似合うと褒められ嬉しそうだ。
「よし〜。雄太宅のイベント専属カメラマンの俺がバッチリ撮ってやるからなぁ〜。ほら、並んで並んでぇ〜」
わざわざ草津の駅前マンションから車を走らせてきてくれた梅野に感謝だなと雄太と春香は顔を見合わせて笑う。
凱央は学校に行っていていないが、家族揃っての記念写真だ。
(本当、ありがたいよな。ソルも梅野さんも健人も祝ってくれて)
小学校へ向かう道すがら、純也と健人とはしゃいでいる悠助は希望に満ち溢れているようだ。
「鷹羽悠助くん」
「はいっ!」
入学式で大きな返事をする悠助の姿に、春香は目元をハンカチで押さえていた。
それに気づいた雄太は、そっと春香の手を握った。
「えへへ」
凱央の入園式や卒園式、悠助の入園式や卒園式。そして、凱央の入学式でも泣いていた春香は、またもや涙を堪えきれないようだ。
(きっと春香はいつも一人で……)
春香の実父母は祝う気持ちは欠片もなかっただろうし、浮気をして家を出ていってしまった夫に代わり家計を支えていた祖母は仕事が忙しかっただろう。
(だからこそ、子供達の晴れ姿を見たら感慨深いんだろうな)
忙しかった慎一郎はさておき、理保は入学式などはきちんと出席してくれていた雄太でも、我が子の成長した姿に胸がいっぱいだった。
「悠助は本当に楽しそうだな」
「だって、これから毎日ときおにいちゃんといっしょにがっこうにいけるんだよ」
「そうだな。でも、凱央は悠助より帰りが遅いんだからな?」
「うん。わかってるよ」
雄太は手にしているトートバッグの中の教科書を覗き込み懐かしいなと思っていた。
「悠助ぇ〜」
「あ、ジィジだぁ〜」
校門の所で手を振っている直樹を見つけ悠助は駆け出した。
悠助が駆け寄ると直樹はしゃがみ込む可愛い孫を抱き締めた。
「うんうん。凱央も制服が似合ってたが、悠助も似合ってるぞ。立派なお兄ちゃんだな」
「うん。ジィジ、きてくれてありがとう」
仕事の休憩中を利用して駆けつけた直樹は悠助の笑顔にメロメロだ。
「直樹先生〜。看板前で一枚いかがですぅ〜?」
「もちろんだ、梅野くん。いつも写真ありがとうな」
直樹は悠助と一緒に『祝入学式』と書かれている看板前で二人で写真を撮ってもらい、その後雄太と春香を加えての写真を撮ってもらった。
「この写真も店に飾らなきゃな」
「お父さん。店をギャラリーにしなくても良いんだよ?」
「まだまだ飾れる場所はあるしな。良い額縁を買ってこよう」
「お父さん。私の話聞いてる?」
悠助の写真を飾る事で頭がいっぱいの直樹は、チラリと腕時計で休憩時間の終わりを確認して店に戻って行った。
明日の俊洋の入園式には里美が来る事になっている。
孫LOVEな直樹と里美である。




